HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第7回です。
HSPの基本的な内容は下記でまとめていますのでご覧ください。
この連載では、これまでHSPの特徴(DOES)を簡単に紹介してきました。
今回は、DOESに加え、近年注目されはじめた、HSPのもう一つの大切な特徴についてお話ししたいと思います。
これまでの連載はこちらHSPのさまざまな具体例は、敏感さの現れの一例であって、それらの特徴自体が「生まれつき」なのではありません。
非HSPも悩むし、嫌な刺激は避けたいです。当然、誰かを思いやり気配りもします。
決して、非HSPがDOESの真逆(鈍感)なのではありません。
差次感受性の意味
近年、エレイン・アーロン氏は、HSPかどうかを判別する指標として、DOESに加えてもう一つ、差次感受性(differential susceptibility)を加えるようになりました。
差次感受性とは、一言で言うと、環境や経験からの影響の受けやすさのことです。
たとえば精神医学の世界では、今まで、精神疾患の発症について、「ストレス脆弱性モデル」が用いられてきました。
もともとの素因として、ストレスに対する脆弱性があり、そこに環境ストレスが加わって発症する、というものです。言い替えれば、もともと環境や経験に対する高い感受性を持つ個体がいるということです。
しかし、ベルスキーとプルースらは、素因としてマイナス面ばかりに注目するのは間違いであり、マイナス面だけでなく、プラス面にも高い感受性を持つ個体が存在することを主張して、それを「差次感受性」と名づけました。
要するに、良い環境、悪い環境、両方に敏感で、良い環境だと、良い影響をひといちばい受けるし、悪い環境だと、悪い影響をまた、ひといちばい受けるということです。
幼少期、過酷な環境で育った場合は、問題の影響を受けやすいですし、逆に恵まれた豊かな環境で育った場合は、その恩恵を、非HSPよりも大きく受け取ります。
またHSPは、環境と過去から受ける影響が大きいので、さまざまな場面で、影響を受けすぎるのを恐れたり、自分を信じられなくなったり、悲しい出来事を引きずったりします。
一方、友達の結婚式で誰よりも感動の涙を流したり、進展中の恋愛にかなり舞い上がったりもします。
私は、「影響の受けやすさ」は、HSPらしさそのものと思います。
ポジティブな影響とネガティブな影響
人は生まれた時から、生きてゆくために、自分を環境に適応させるようになります。
世話をしてくれる親、物事を教えてくれる学校や、社会生活を送る場所がそうです。
人は、あらゆる人生のステージで周囲からの影響を受け続けますが、HSPは特に、人生観、人間観、幸福感をまわりに左右されます。
あなたがHSPなら、いつも他人の視線や言葉に敏感で、変化を素早く察し、対応してきたのではないでしょうか。
HSPは特に過去の経験を振り返り、慎重に行動します。過去から受ける影響が大きいのです。
生まれつきだけでない、トラウマ的な出来事も重なって強い影響を受けることがあります。
過去の傷を抱えやすい、と言ってもいいでしょう。
もちろん、ネガティブな経験だけではありません。ポジティブな経験からも影響を受けます。
具体的には、下記のようなことはないでしょうか。
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“差次感受性”の具体例
HSPのあなたは、生物学的に柔軟性と適応性が高く、複雑で理不尽な世の中を生き抜くための敏感力があります。
つらい経験やどんなに小さな気づきをも、危険を回避し安心して生きるための術に変え、応用も効くのです。
差次感受性は環境選びが大切
「朱に交われば赤くなる」「孟母三遷の教え」といった諺まであるように、どんな人にとっても環境を選び、気質に合う生き方をすることは大切です。
しかし、HSPには特に、敏感さを大切にできる環境を選んでほしいと思います。
そのためには、過去を振り返る必要もあるかもしれません。
そして今、何か心身に不調なことを抱えているとしたら、それは自分の弱さや忍耐力のなさではなく、高い感受性を持ったあなたが、差次感受性によって、環境や過去の経験から、より強いダメージを受けているからではないでしょうか。
とすれば、なすべきことは、これ以上我慢し続けることではなく、環境を変えることなのかもしれません。
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