HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第8回です。
HSPの基本的な内容は下記でまとめていますのでご覧ください。
HSPはそれぞれ個性的で、敏感さは共通であっても、個性は一人一人違います。
中には、新しい刺激を愛し好奇心豊かなHSP、あるいは外向的なHSPもいます。
HSPの個性がバリエーション豊かな理由は大きく分けて2つあります。
(1)敏感さ以外に、個性を形作る遺伝子がいくつかある
(2)生まれながらの敏感さに人生経験が加わっている
例をそれぞれ1つずつ紹介します。
(1)好奇心の強いHSS型HSP(遺伝的要因)の特徴
アーロン氏は、脳には衝動をコントロールする2つのシステムがあると言います。
1つは、行動抑制システム(Behavioral Inhibition System)です。
用心システム(Pause-to-Check System)ともアーロン氏は言っています。
それによって、行動する前に一時立ち止まり確認します。
全てのHSPは、このシステムが強いと考えられます。
もう1つは、行動活性システム(Behavior Activation System)です。
アーロン氏は、これを冒険システム(Go-for-it System)とも言っています。
これがあることで私たちは、報酬(刺激)を求め、好奇心が強く活発で、退屈しやすくなります。
行動活性システムの強い人たちを、マービン・ズッカーマンは、「刺激探求型(High-Sensation Seeking)」と呼びました。
これもHSPと同じく、生まれつきの性格です。
全ての人が、この行動抑制システムと行動活性システムを持っていて、どちらが強くてどちらが弱いか、両方強いか両方弱いかは人それぞれです。
それがまたHSPの様々な個性を生み出しています。
下記の特徴が当てはまる数が多いほど、刺激探求型(HSS)といえるでしょう。
刺激探求型(HSS)の特徴
・新しいものが好き
・変わったものに惹かれる
・事態が紛糾すると生き生きする
・出会いを楽しみたい
・生活にはバリエーションが要る
・引っ越しを楽しめる
・同じ話はつまらない
・珍しいところを旅したい
・運動や遊びではスリルも味わいたい
・家にいるより外に出掛けたい
・退屈は苦痛だ
刺激探求の気質は、非HSPもHSPも、多くは中間層(快適なゾーン)です。
あなたがもしもHSS傾向の強いHSPならば、このようなことはありませんか?
刺激を欲するHSSと、刺激を抑制したいHSPが同居
- ちょっとしたこと(飲み会の誘いに応じるかなど)を決めるのにも内面がせめぎ合う
- 流行を追いかけようとは少しも思っていないが、気がつくと最先端にいる
- 不謹慎と分かっていてもどうしても笑ったり言ったりしてしまう(一応慎重に場面を選んでいるが)
- 真実を挑発的な言葉で発してしまい周囲をひやひやさせる(自分も葛藤している)
- 事態が紛糾すると生き生きするくせに、誰よりも疲れる(でも刺激を手放したくない)
- 常にアクセルとブレーキを踏み続ける感覚だ
- 多面的な物事の見方ができて楽しめるが、アウトプットに至る前に圧倒される
- 様々な理由で特定の異性との関係は長く続かない
- なかなか他人に理解されない(似た人との出会いは奇跡)
- 集中力を発揮する時と発揮しない時が極端だ(発揮していない時もストレスを感じ続けている)
- ちょっとトラブルメーカーかもしれないが必要な問題提起をしている自負もある
- 煩悶が絶えない。「煩悩」の数が多い気がする(※「煩悩」は仏教で私たちを煩わせ悩ませるもので誰でも例外なく108持つとされています)
※いつものアンケートフォームは最下部にありますのでよろしければあなたのHSPらしさを聞かせてください
人は、刺激が多すぎても少なすぎても苦痛になります。
刺激が多すぎると疲れますし、少なすぎると退屈します。
しかし両方のシステムが活発なHSPは、刺激の最適なレベルを維持するのがとても難しいのです。
最適な刺激のストライクゾーンがとても狭いからです。
退屈する一方で、刺激過多にも陥りやすいのです。
刺激探求タイプのHSPは、静かな引きこもり生活を愛して少しも退屈しないHSPを見ると、果たして自分がHSPなのかと疑います。
しかしそういうHSPもいるのです。
(2)30%が外向的なHSP(経験的要因)
カール・ユングは、人間の基本的態度を二通りに分け、それを外向性、内向性と呼びました。
外向性とは、興味や関心が、外界の事物や人に向きがちな性質を言い、内向性とは、心の内面に関心が向きがちな性質を言います。
HSPにも、内向的なHSPと外向的なHSPがいます。
HSPの約70%は内向的です(アーロン氏)。
大勢でわいわい過ごすより、友人が数人いてそのうちの1人か2人と一緒にいることを好みます。
人見知りと勘違いされがちですが、本来のHSPは、他人を必要とし必要とされ、人間が好きです。
多くの人は、敏感な人、というと、内向的なイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし実際は、HSPの30%は、外向的と言われます。
それはなぜでしょう。
多くの場合、幼少期、家族が外向的で、たくさんの人が賑やかに交流する様子に安心を感じていた、ということがあります。
しかし中には、外向的な家族を喜ばせるため、または自分の敏感さを補うため、または隠すために外向的に育ったHSPもいます。
社会に出てからは、家族や誰かのため、仕事のため、夢や情熱のためということもあります。
外向性は、もともとの性格に、環境が加わって、後天的に作り上げられたものです。内向性もそうです。
社交的なHSPは次々とイベントに顔を出し人脈を作り、ビジネスに活かします。
人を紹介され、人と人を繋ぎ、場の空気や相手の気持ちに応じ気の利いた発言をします。
自信にあふれた笑顔を作り、キャラクターが興味深いと言われ、信用もされます。
そういうHSP男性は、なぜか結婚指輪をしていないこともあります。
刺激を求めるHSPのように、多くの外向的なHSPは、内向的なHSPとは非常に異なるため、自分がHSPであることを疑います。
男性は特に、刺激に強いフリをしたり、外向的であろうとしたりします。
女性もそういうところがあります。そのほうが魅力的と思い込んでしまっているのでしょう。
さまざまな個性を持つHSP、敏感さに対応が必要なのは同じ
そのような理由から、同じHSPといっても、さまざまな個性の人がいます。
ただ、どんなに好奇心が旺盛(HSS)でも、HSPである限り、慎重に立ち止まって確認したい気持ちを消すことはできません。
いくら社交的で他人の期待に応えるのが得意でも、一人の時間が欠かせないのなら、やはりHSPです。
HSPは、刺激過多の影響を強く長く受け止めます。
刺激を過小評価し続けると、心身の不調に現れます。
心身の不調は、「私は本当はそれをしたくない」「彼らの求めにこれ以上応じる必要がない」というあなたの中のHSPが伝えてくれる確かなメッセージです。
これを無視した時に、病気になったり、あなたの身近な人間関係に犠牲が及んでしまったりするのです。
特に、HSPでありながら、刺激を求める人は、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので、混乱しやすく、疲れたり、イライラしたりしがちです。
あなたの中のHSPが違和感を察知しているのなら、少し立ち止まって、本当に大切なもの、必要なものは何か考え直すといいかもしれません。
もしかしたら、外で多くの人と忙しくしているよりも、パートナーと話をする時間や、一人になる時間が、今は何より必要なのかもしれません。
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