心がきらめく仏教のことば #10

  1. 仏教

仏教から学ぶ「恩」とは?母の日・父の日に考えたい本当の恩返し

「恩」という漢字の意味は?

今回のテーマは「恩」です。

鶴の恩返しとか、命の恩人、あの人は恩師など、恩という言葉は普段の生活の中でも、しばしば耳にします。
そして恩を受けた相手に「感謝」の気持ちを大事にしましょう、ということもよく言われるでしょう。

仏教では「恩」ということをとても大事にされ、「恩を知らないのは、とても情けないことだ」とも教えられます。
恩という漢字は、原因を知る心と書いてあります。
仏教では、どんな結果にも必ず原因があると教えるのです。

知人に難病で長年困ってきた方がいました。
いろんな病院や先生に診てもらっても治らず、「どうして 自分だけこんな目に」と人生に絶望していた時にある先生と巡り合ったそうです。

病気の本当の原因が明らかになり、治療法を変えたところ、みるみる症状が改善されて普通の生活を送れるようになったのだとか。
その方は、「あの先生に巡り合えなかったら、これからもずっと苦しみ続け、自分の人生を呪っていたと思います」と言われ、あの先生のおかげですと喜ばれていました。

この場合、健康を取り戻せたという結果がおきたのは、いい先生に巡り合い、治療法を変えたことが原因でした。
そして、つらい状況が変わったときに「あの先生のおかげで今の自分がある」「あの先生には大変な恩がある」という気持ちが起きるでしょう。
これが原因を知る心・恩なのです。

恩を返したいという思いが行動になる

恩を深く知れば知るほど、感謝の気持ちがおきてきて、少しでもこのご恩をお返ししたいという気持ちになるでしょう。
たとえば、スポーツ選手達が無償で、地域の子供達や恵まれない国の子達に野球やサッカーの指導をすることがあります。

今まで自分がスポーツの世界でここまでやってこれたのは、地域で支えてくれた人や自分を支え、応援してくれた人たちがあればこそ。
恩を知らされて感謝し、今度は自分が少しでもスポーツの世界に恩返ししたいということで、されているのでしょう。

シドニーオリンピックの女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子さんは、現役引退した後もマラソンを続け、スポーツを通していろいろな活動もされています。
その中に、アフリカの子供達にシューズを届ける「スマイル アフリカ プロジェクト」というものがありました。

アフリカの子供の中には、靴がはけず足にケガをして、そこから病気になり命を落とす子があることを知ったのがきっかけだったそうです。
高橋さんは、日本で使われていない靴を届ける活動を始め、11年間で10万足以上を届けたそうです。

また、令和2年の24時間テレビでは募金ランに挑戦。
「これまで走ってきてたくさんの方に応援いただいた。私が走ることで何か恩返しできれば」と語っていました。

高橋さんは、スポーツを通じて自分にも何かできることはないか、少しでも恩返ししたいという思いから様々な活動をされているのでしょう。

仏教で教えられる親から受けた恩

ところが一方で、受けている恩を当たり前だと思ったり、気づかないでいたらどうでしょうか。
全部自分が頑張ったからだ、俺に才能や力があったからだと思っていたら、周りの人の支えや応援に気づかず、横柄な態度になってしまうかもしれません。
そんな人はやがて、多くの人から失望され、見限られてしまうでしょう。

「この世で最も不幸な人は感謝の心のない人である」とも言われます。
周りの人たちに支えられて助けてもらっていることを忘れたり、当たり前だと思ってしまうと、不幸な人生になってしまいます。

私たちは、いろいろな人からお世話になって助けてもらって生きています。
中でも身近で、大きな恩を受けている相手は親ではないでしょうか。
仏教では、親の恩がいかに大きいかを「父母の恩重きこと天の極まり無きが如し」と繰り返し言われます。

わたしも二児の父ですが、子供を育てるのは容易ではありません。
自分のしたいこともガマンしなければなりませんし、子供がこれも嫌、あれも嫌とわがままを言って、結局どうしたらいいのか困惑することもあります。

子育ては大変だというのを実感すると共に、自分もどれだけ親に手を焼かせてきたことかと親の苦労の一端を思い出さずにいられません。
どれだけわがままを言っても憎まれ口を叩いても、見捨てず見守り、必要であれば助けてくれた。
そんな両親の恩はとても大きなものがあります。

親が子供に願っていること

ではそんな深い恩にどう報いていけばいいのでしょうか。
恩を受けた相手に、その恩を返すときには相手の望んでいることを知ることが先決です。
相手の望まぬことをしていても、恩返しにはなりません。

ですので、親の恩に報いるときには、親が望むことを知ることが大事になります。
私も親の立場になり、子供に望むことを考えてみますと「どうか健やかに、まっすぐ、幸せに生きていってもらいたい」という気持ちがあります。

もし、自分の子供に将来「どうして自分を産んだんだ!こんな辛いなら生まれてこなければよかった」と言われたらどうでしょうか。
とても辛くショックで、今までのすべてを否定された気持ちになるでしょう。

親はたとえ少々つらいことがあっても、苦しい目にあっても、子供に笑っていてもらいたいものです。
私も親になってから日々感じます。

「お父さん、お母さんの子に生まれることができて本当によかった。生んで育ててくれて本当にありがとう」
そう心から言われることが、親として何より嬉しいことではないでしょうか。

まとめ:親への恩返しは自分が幸せになること

親が喜ぶことは、子どもである自分が心から、生まれることができてよかったという幸せになること。
そして、「今、自分は幸せに生きているよ」と親に伝えることが恩返しになるのではないでしょうか。

ぜひ、人間に生まれてよかったという喜びを得るための人生なんだということを、見つめなおしてみてください。
そして母の日や父の日には、心からの感謝の気持ちをあらわしてみてはいかがでしょうか。
これまでの連載はコチラ

話題の古典、『歎異抄』

先の見えない今、「本当に大切なものって、一体何?」という誰もがぶつかる疑問にヒントをくれる古典として、『歎異抄』が注目を集めています。

令和3年12月に発売した入門書、『歎異抄ってなんだろう』は、たちまち話題の本に。

ロングセラー『歎異抄をひらく』と合わせて、読者の皆さんから、「心が軽くなった」「生きる力が湧いてきた」という声が続々と届いています!

仏教から学ぶ「恩」とは?母の日・父の日に考えたい本当の恩返しの画像1

仏教から学ぶ「恩」とは?母の日・父の日に考えたい本当の恩返しの画像2