皆さん、毎日全国で交通事故はどれだけ起きているかをご存知ですか?
けっこうあるのでは、いや私は一度も交通事故を起こしたことがないからそんなにないんじゃないかと思う方もあるかもしれません。
実は、全国で毎日約850件の交通事故が起こっています。
その中で約76人が重傷を負い、約10人が亡くなっています。
一年では約30万件以上の交通事故が起きていることになります。
皆さんの周りでも交通事故は日常的に起きているのかも知れません。
私は、交通事故事件を中心に扱っている弁護士です。
弁護士になって5年目。
「交通事故に遭った」という被害者、「交通事故を起こした」という加害者の相談を、これまで500件近く聞いています。
今回は、交通事故の統計データを紹介して、私たちと交通事故との関係について、考えてみたいと思います。
交通事故に関する統計データ
毎年、警察庁が、交通事故に関する統計データを公表していますので、その一部をご紹介します。
【統計表|警察庁Webサイト】
この統計上で「交通事故件数」とは、車両(自転車、バイクなどを含む)の事故によって人が亡くなったり怪我をしたりした件数を指します。つまり、けが人が出なかった事故(物損事故)は含みません。
令和2年のデータを見ると、交通事故件数は30万9178件、交通事故で負傷した人は36万9476人でした。
そのうち重傷者(1か月以上の治療が必要な怪我をした人)は2万7774人、死亡した人は2839人。
統計を見ると、交通事故件数は、平成15年頃をピークに一貫して減少傾向です。
令和2年の交通事故件数はピーク時の3分の1以下に、負傷者数は約3分の1程度に、死者数も4分の1程度に減少しています。
減少した原因としては、危険な運転(飲酒運転など)の厳罰化、警察による取締りの強化、自動車の性能の向上などが考えられています。
昨年はコロナ禍の外出自粛によって車両の交通量が減ったことも、減少に影響していると言われています。
昔より少なくなったとは言え、依然として相当な件数の交通事故が発生していることが分かります。
令和2年も、冒頭で申し上げましたように、1日に約850件の交通事故(負傷者が出る人身事故)が起こり、1日に約76人の方が交通事故で重傷。10人近い方が交通事故で亡くなっています。
この「死者数」は、交通事故の発生から24時間以内に亡くなった方の数です。
数日後に亡くなってしまうというケースもあり、交通事故が原因で亡くなる人の数は、統計データ以上に多いのではないでしょうか。
ちなみに、統計データから大まかにいうと、令和2年は、日本人の5000人に1人が交通事故で重傷を負い、5万人に1人が交通事故で亡くなったことになります。
年末ジャンボ宝くじが当選する確率は1000万の1程度と言われていますので、宝くじに当たるよりも200倍、交通事故で亡くなる確率が高いことになります。
車に乗らないから大丈夫?
「自分は車にもバイクにも乗らない、自転車にも乗らない、だから交通事故とは関係がない」と思われる人もいるかもしれません。
しかし、歩行中に事故に遭って死傷した人も、相当たくさんあります。
令和2年では、歩行中に事故に遭って重傷を負った人は6998人、死亡した人は1002人ありました。
2020年に、滋賀県栗東市の県道で小学校3年生の男の子が、安全なはずの横断歩道を横断中、運転してきたダンプカーにはねられて死亡しました。
車を運転しないから私は関係ない、とも言えないのではないでしょうか。
若いから大丈夫?
交通事故は、年配の方が遭うこともありますが、実は若い人が遭うことも多いです。
令和2年では、交通事故で重傷を負った29歳以下の方は5503人、亡くなった方のうち29歳以下の方は367人でした。
年齢に関係なく、誰でも、交通事故に遭うかもしれないというのが現実です。
2013年にお笑いタレントの桜塚やっくん(37=本名・斎藤恭央さん)が、山口県内の中国自動車道の路上ではねられて死去。その早すぎる死をいたむ声は後を絶ちませんでした。
このように見ると、交通事故は決して他人事ではないと思いませんか。
法律では、交通事故で亡くなったこと、または後遺障害を負ったことをお金に換算して、賠償するという方法で、被害の回復を行うことしかできません。
私が実際に扱った事案でも、若い方が交通事故に遭われ、重傷を負ったり、亡くなられたものは多くあります。
自転車に乗っていて車に轢かれ、顔に一生消えない傷痕が残ってしまった小学生の女の子。
信号無視の車に衝突されて亡くなった高校生。
学費を稼ぐために新聞配達をしていた最中にトラックに轢かれて亡くなった大学生。
事故で子どもを亡くしたお母さんが、「息子を返して!」と涙に暮れる姿が、今も脳裏に焼き付いています。
どれだけ願っても、亡くなった人が戻ってくることはありません……
このような悲劇が起こらないよう、交通事故のない世の中になってほしいと、切に願ってやみません。