衣替えシーズンに
6月に入りました。衣替えシーズンですね。
夏服を着ると、気持ちも軽やかになります。
衣替えは、夏と冬ですが、『徒然草』には、昼と夜の服装について、論じている一段がありました。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。
夜は、華やかな服装で語り合いましょう
(意訳)
「日が沈んで夜になると、どんなものでも、本来の美しさを失ってしまう」と言う人があります。私は、そんな言葉を聞くと、とてもがっかりするのです。
服装や装飾品の色合いは、夜のほうが格段に美しく、趣があります。
昼は、簡素で、地味な姿をしていてもいいでしょう。
しかし、夜は、きらびやかで、華やかな服装にするほうが断然いいのです。
人の姿も、夜の灯火に照らされると、より一層りっぱに見えます。そっと話をする声も、薄明かりの所では、とても奥ゆかしく聞こえてきます。
香りも、楽器の音も、夜のほうが一段と味わい深くなると思います。
【原文】
「夜に入りて、物の栄えなし」と言う人、いとくちおし。よろずの物のきら、飾り、色ふしも、夜のみこそめでたけれ。昼は、ことそぎ、およすけたる姿にてもありなん。夜は、きららかに、花やかなる装束いとよし。人のけしきも、夜の火影ぞ、よきはよく、もの言いたる声も、暗くて聞きたる、用意ある、心にくし。匂いも、物の音も、ただ夜ぞ、一際めでたき。(第191段)
(月刊なぜ生きる5月号「古典を楽しむ」 意訳・解説 木村耕一 イラスト 黒澤葵 より)
夜の趣
木村耕一さん、ありがとうございました。
兼好さんの時代は、現代よりも、夜は暗かったのではないでしょうか。
「こう暗くっちゃ、何にもできやしない」とネガティブになると、夜は楽しくありません。
夜ならではの魅力にスポットを当てて、人の姿も、話し声も、香りも音楽の音も、夜のほうが、一段と味わい深くなると、兼好さんは言います。
そうすると、夜が特別な時間のようで、ウキウキしてくるから不思議です。
人生を楽しむ智慧、ありがとうございました。
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