梅雨入り
今年の梅雨入りは、例年より早かった地域もありました。
梅雨というと、ジメジメ、雨ばかりで、うっとうしいイメージですが、楽しみもあります。
私の楽しみは、あじさいの花を見ることです。青、ピンク、白、紫など、色とりどりの花。同じ青色でも、濃い青から、薄い青、赤味の強さなど、微妙に色合いが違ったりするので、ずっと見惚れてしまいます。皆さんは、どの色のあじさいがお好みでしょうか?
『枕草子』にも、梅雨を楽しむ一段がありました。木村耕一さんの意訳でどうぞ。
梅雨の時期に、野山を歩くのは、楽しいものです
(意訳)
五月頃(旧暦。梅雨の時期)に、牛車(ぎっしゃ)に乗って、山里を歩き回るのは、とても楽しいものです。山の麓(ふもと)には、清らかな水が流れ、青々とした草が一面に茂っています。この美しい景色の真ん中を、私たちは、牛車を連ねて、真っすぐに進んでいきました。
すると、牛車の供人の足元から、水滴が、バシャバシャと跳ね上がっているのに気づきました。雨上がりだからですね。青々とした草の下には、水が浅く流れていたのです。
牛車が狭い道を通る時には、左右に立っている木の枝の先が、ちょっとだけ車の中に入ってきました。慌てて葉をつかんで折り取ろうとしたのに、指の間から、さっと逃げていってしまいました。残念でしたが、とっても楽しい瞬間でした。
また、牛車の中に、蓬(よもぎ)の香りが入ってくるようになりました。少し間隔をあけながら漂ってきます。はて、なぜだろうと、よくよく周りを見ると、押しつぶされた蓬が、車輪にくっつきながら回っているではありませんか。
蓬がついている部分が車輪の上に来た時に、強い香りが、ぷーんと車内に届いていたのです。山里ならではの、楽しみですね。
(『こころきらきら枕草子』木村耕一著 イラスト 黒澤葵 より)
五感で梅雨を楽しむ
木村耕一さん、ありがとうございました。
まるで、清少納言と一緒に牛車に乗って、山里を歩き回っているような気持ちになりました。
清らかな水の流れ、水滴がバシャバシャと跳ね上がる「音」は、耳の楽しみ。
青々とした草、美しい景色を見る、目の楽しみ。
木の枝の先を触る、手の楽しみ。
よもぎの香りをかぐ、鼻の楽しみ。
もう一つ、牛車の中で、清少納言と一緒に「よもぎ餅」をいただけば、舌の楽しみになります。
「古典」を読んで、五感で梅雨を楽しめるなんて、素敵ですね。
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