HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第12回です。
これまでの連載はこちら
HSPの基本的な内容は下記でまとめていますのでご覧ください。
「親密さへの恐れ(親密になることを恐れる理由)」の3番目は、見捨てられることへの恐れです。
「見捨てられ不安」がHSPに影響しやすい理由
すべての人は見捨てられることを恐れています。恋人が去っていく、親が死んでしまうことを恐れない人はないでしょう。
もしそんな人がいるとすれば、あえて心にフタをして他人と距離を置こうとする自己防衛かもしれません。
見捨てられることへの不安から、相手にしがみついたり、ささいなことで嫌われたと感じたりすることもあります。
さらには、見捨てられる不安に耐えられず、自分から嫌われるようなことをして、相手を試し、相手が見捨てないと確認して安心する人もいます。
特にHSPの場合は、大切な人との別れに、とても強いダメージを受けます。ですからいつも、相手が裏切るのではないか、心変わりするのではないかとひそかに恐れています。
また、心のどこかで別れたほうがいいと分かっているのに、相手を傷つけたくない(HSPの場合そのまま自分が傷ついてしまいます)というだけで、別れを選択できないこともあります。
「依存するのが恐い」という気持ちの奥にあるのは?
またHSPの場合、見捨てられ不安から、逆に、他人に依存するのを恐れることもあります。
親密な関係では、適度な依存関係はむしろ必要なものでもありますが、その依存関係を断ち切られるのを恐れるがあまり、依存そのものを拒否してしまうのです。
「相手を失ったらどうしよう」「裏切られたり、裏切ったりしたくない」「傷ついてどうにかなってしまうのではないか」という恐れから、知らず知らずのうちに距離を置いてしまいます。
さらに、幼少期に喪失感を味わったり、見捨てられたり、裏切られたりすると、深く根ざした不安から、恋愛依存になったり、反対に、極端に相手を拒絶したり避けたりしてしまうこともあります。
「人はいつかきっと自分を見捨てていく。ならば、最初から誰も信じない。ひとりでいい。傷つきたくないから」
そう思うことで自分を守ろうとするのです。
愛する人と永遠に一緒にいることはできません。大切な人との別れが、いつどのようにやってくるか、誰も予測はできません。
死別かもしれないし、どちらかの心変わりかもしれません。10年後かもしれないし、今日かもしれません。
これが現実です。HSPは、そんな不安にどう対処すればよいのでしょう。
別れを告げられたとき、HSPが特に気をつけること
アーロン氏は、相手の心変わりを「無意識の噴火」と名づけています。
どんな素晴らしい人でも、突然、裏切ることはあるのです。無意識のエネルギーにいったん火がつくと、もう押しとどめることができないということがあるのです。
そしてそれは相手だけでなく、あなたも同じです。
ただそこで、アーロン氏は「別れよりも、もっと気をつけないといけないことがある」と言います。
それは、その別れによって、「自分は人から愛される価値のない存在だ」「自分はこの世界にいらない人間だ」「こんな自分はとても一人では生きていけない」と思い込んでしまうことです。
一度そのように思い込んでしまうと、すべてのつながりを断ち、自分一人の世界に閉じこもってしまうことになりかねません。
そうなると、さらに周囲とつながりを持てなくなり、なおいっそう自分を追い詰める、という悪循環になってしまいます。
ですから、そんな時には、その人と付き合う前の自分を思い出してみましょう、とアーロン氏はアドバイスしています。
付き合う前には、あなたは価値のない人間だったでしょうか。一人で生きていけない人間だったでしょうか。
もしそうでなかったとするなら、別れたあとのあなたも、価値のない人間ではありません。一人で生きていけない人間でもありません。
あなたはあなたのままだし、価値を失ってなどいないのです。
「見捨てられ不安」チェックと対処法
次に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
- 上司や同僚が不機嫌だったり、恋人の返信が遅かったり素気がないと、「怒らせた」「嫌われた」「関係はもう終わったかもしれない」と思い込んでしまう
- 何気ない一言が「ディスられている」ように聞こえるが、その場で相手の真意を確認できない
- 相手が浮気をしているように勘ぐってしまうのに、それを聞けない
- ネガティブな記憶のほうが多く残っている
- あなたがこれまで他人から「大切にされた」「愛された」と感じるポジティブな出来事を教えてください
1~3については、相手に悪気がないことがほとんどです。悪気がないからこそ、相手は後から言われても、「それ何のこと?」と思い出せなくなるものです。
その時その場で、あなたの感じた不安を思い切って口に出してみましょう。きっと、最後には笑いながら話し合えるでしょう。
ところがそんな不安を放っておくと、「傷ついた」「不快な」感情だけが残って、さらに見捨てられ不安が増幅してしまいます。
4にあてはまる人は、いいことも思い出してみてください。
※下のアンケートフォームで「見捨てられ不安」をチェックしてみましょう。あなたが大切にされたポジティブな経験、この記事への感想もお待ちしています。
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