『平家物語』でも有名な「諸行無常」の意味とは?
今回のテーマは「諸行無常」です。
有名な『平家物語』の冒頭で
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」
といわれていますので、聞かれたことのある方も多いかもしれません。
『平家物語』は、平家一族が大変な繁栄を手にするも長くは続かず、わずか20年ほどで源氏によって滅ぼされてしまうという話です。
その『平家物語』の根底にあるのが「諸行無常」というテーマなのです。
『平家物語』について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
諸行とはすべてのもの、あらゆるものということで、この中に入らないものはありません。
無常とは常が無い、続かない、変わってゆく、という意味です。
すべてのものは、ずっと同じままではありません。
大きく変わるか少しずつ変わるかの違いはあっても、変わってゆくものだというのが諸行無常の意味です。
「諸行無常」だからこそ日常も変化する
私たちは、ずっと今のままが続くと思っていますし、続いてほしいと願っています。
趣味に打ち込む楽しい時間、家族と過ごす時間、学校や職場、家庭でのありふれた日常が今日も明日もそして明後日もどこまでも続いてゆく。
ぼんやりとそんなことを思っていないでしょうか。
しかしそんな何気ない毎日も変わっていき、いつか終わりを迎えます。
学校を卒業するとき、友達が引っ越してしまったとき、地元を離れて就職や進学をするとき、結婚するとき、転職するときなどなど、ずっと続くと思われていた毎日が終わってしまうこともあるでしょう。
これを諸行無常といわれますが、中でも最大の変化は、生きているものが死んでしまうことです。
もう二度と会うことも話をすることもできなくなり、変わり果てた姿になってしまいますので、仏教で無常といったら、人の死をあらわすことが多いのです。
祇園精舎の鐘の音から感じること
最初にあげた『平家物語』にもありますように、祇園精舎の鐘には諸行無常の響きがありました。
祇園精舎とは、2600年ほど前のインドで、ブッダを慕う人達が建立した建物のことです。
ここでは、ブッダの説法も数多くなされていました。
またブッダのお弟子方も居住して、修行をしておられましたので、ブッダを慕う人たちの集まりの中心的な場所でした。
そんな祇園精舎で鐘が鳴らされるのは、お弟子のどなたかが亡くなられた時だったと伝えられます。
ですので、祇園精舎でつかれる鐘の音を聞いた人々は「お弟子のどなたかが亡くなられたのか…」と知ったのです。
ブッダからいつも
「この世は諸行無常であり、人はいつ終わりを迎えるかわからない。
老いも若きも関係なく突然終わりがくる」
と聞いてはいましたが、「本当にそうだな」と強烈に諸行無常を実感したことでしょう。
諸行無常を知ると考え方が変わる
諸行無常と聞くと、暗い気持ちになるという方もいるかもしれません。
しかし、それは逆なのです。
諸行無常だとわかればわかるほど、日々の一瞬一瞬を大事にしなければと思えてきます。
人間関係でも、いつまでも一緒にいられると思うと、ぞんざいに接してしまわないでしょうか。
一方、諸行無常だと知ると、いつまでも一緒にいられるわけではないから大切にしようという考えになります。
よく「いつまでもあると思うな親と金」といわれるとおりです。
親がなくなってなら、「こんなことならもっと孝行しておけばよかった」と嘆いている人は少なくありません。
逆に、嫌いな相手ともいつまでも一緒にいるわけではありません。
人生全体でみれば、一緒いる時というのはあっという間の短い瞬間のことです。
ずっと一緒にいなければならないように思うと、ますます嫌になり苦しくなってくるでしょう。
しかし、これも無常で、ひと時の間のことだとわかると少しは、冷静になれるのではないでしょうか。
人生の今この瞬間が大事
人間関係だけではなく、人生の時間についても同じことが言えるでしょう。
とくに病を患い、人生の終わりについて意識すると、病気になる前と考え方が変わると言われます。
タレントの堀ちえみさんは、さまざまな病気と闘っている方です。
病気になって感じられたことをブログにつづられていました。
「一日一日はあっという間に過ぎるけど、小さな一生だと思うから、
今日というこの日も一生だという覚悟で、大切に生きたいです」
「本当の意味でのしあわせは何かを考え、価値観も含めて変われる時が、今なのかも知れません」
と語っておられます。
諸行無常という現実が知らされれば知らされるほど、明日でもいいか、また今度でもいいかではなく、今をより大事にしようと思えてくるのです。
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