HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第17回です。
これまでの連載はこちら
HSPの基本的な内容については下記でまとめていますのでご覧ください。
「親密さへの恐れ(親密になることを恐れる理由)」の最後(8番目)は「ささいなことで嫌ってしまうこと」への恐れです。
HSPは、小さな情報をキャッチし深く処理するので、物音や空気、誰かの癖などに煩わされがちです。
相手(特に非HSP)が、「そんなささいなことで?」思うようなことでも、HSPにとっては、嫌なものは嫌、気になってイライラすることは、十分ありうることなのです。
あなたは、他人のどのような癖に気がついたり、どういう音や臭いに鋭く反応したりして、ストレスを感じていますか?
【癖】
- ため息 誰のどのようなため息ですか?( )
- 口癖 具体的にどのような言葉ですか?( )
- 収集癖
- その他の癖( )
- 気になる理由( )
【音】
- 食事の咀嚼音
- 食器のカチャカチャ鳴る音
- 子どもの泣き声
- 工事などの騒音
- 仕事中の誰かの私語
- 足音
- 鞄やファイルをドサッと投げる音
- キーボードをたたく音
- 電話の声
- 隣家の生活音
- その他の音( )
- 中でも最近特に気になった音( )
- 気になる理由( )
【臭い】
- 香水
- 体臭
- 口臭
- 生活臭
- ペット臭
- 足臭
- その他( )
- 中でも最近特に気になった臭い( )
- 気になる理由( )
HSPは、ささいなことにイライラしながらも、こんなことでイライラするのは自分だけと思い、そのイライラで相手を傷つけることを恐れます。
また、相手はおおらかな心で受け入れてくれるのに、自分はなんて器が小さいんだろうと自分を責めます。
いっそのこと誰も愛さない、もしくは別々の場所で生きていれば楽なのにと思います。
以前アンケートで、
「好きだけど 、距離を詰めるのがこわい」
「気が利きすぎて、人に嫌われることを知った」
「子どもがネガティブな言葉を使うと、それをおおらかに受け止められず気持ちが沈んでしまう」
などの回答をたくさん頂きました(ありがとうございます)。
HSPはそういう自分の反応を、しばしば相手を「本当に愛せない」ことと取り違えてしまいます。
そうして相手と一緒にいると、刺激がオーバーしたり葛藤が起きたりするので、「自分はこの人を愛せない」と落ち込んでしまうのです。
さらに自分が困っていることを伝えられず、重大な隠し事をしている気分になってしまいます。
こうなるとHSPの選択肢は、「自分が悪いから我慢し続ける」か、「相手が悪いので拒絶する」か、どちらか極端になりがちです。
しかし、それでは親密な関係ではないとアーロン氏は言います。
「どうして分かってくれないの?」とイライラする前に
HSPにとって、小さなことが気になってしまうのは当然のことです。
だから、そのことを相手に伝えるのです。どのくらいの音がどのくらい嫌なのか、感覚の違う相手には、一つひとつ繰り返し説明をしないと伝わらないです。
「こんなこと何度も言わせないで!」と思う瞬間があるかもしれません。
しかし、相手にはあなたの冷静な説明が必要です。
1を聞いて10を知るような深い理解を期待してもダメなのです。それは感覚が違うから仕方がないことなのです。そして多分、1回聞いても忘れます(笑)。
それでも、相手があなたのことを本当に大切に思ってくれているならば、丁寧に話せば、何度だって耳を傾けてくれるはずです。
(そうでない相手ならば離れましょう。あなたにはあなたの敏感さを大切にしてくれる、もっと別のいい人がいるはずです)
不快感の原因は、相手ではないのかもしれません
ただし、ひとつだけ考えてみてほしいことがあります。どうしてその音、臭い、癖が、それほど気になるのか?です。
HSPは、視聴覚が優れているというのではなく、受け取りが深いのです。
不快な原因は、感覚そのものではなく、深い心(脳)の処理の過程で増幅した感情に原因はないでしょうか?
雨音は落ち着くのに、水道の閉め忘れの音が不快なのは、「水道代が上がるのに何考えてるの!」「水がもったいない」「(自分は節水しているのに相手は)なんてだらしない」と思うからです。
「いつまで寝てるの!起きたら?」と非難されている気がする朝の掃除機の音は耳障りですよね。
好きな匂い、嫌いな臭いも人それぞれで、幼少期の経験が関係していることがあります。
不快感には、原因があるのです。感覚をきっかけに感情をたどってみてください。
ひょっとしたら、自分の求めや訴えが「無視された」「軽んじられている」という犠牲者の感情や、「あんなに楽しそう」「うらやましい」という劣等感、「疲れていて悪いな」という後ろめたさがあるのかもしれません。
あなた自身が自分の敏感さを受け容れていないときは、いくらパートナーが頑張ってくれても、あなたのつらさは消えません。
ささいなことがどうしても気になってしまう背景に、深い自己否定の感情が隠れていることがあるのです。
世界から不快な原因がなくなることはありません。
小さなイライラがやってくるとき、HSPとしての自分に目を向けて敏感さを大切にすれば、自分と相手をもっと深く愛せるようになるはずです。
そうすれば、風や音、色々な現象や出来事にあふれた毎日の喧騒を、逆に楽しむことができるようになるかもしれません。
【ぜひ読んでいただきたい書籍】