日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #98

  1. 人生

人間なんて、心変わりすると、全く別人になるんですよ~たとしえなきもの(枕草子 第68段)

「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるとおり、秋の気配を感じるようになりました。
寒くなってくると、中華まんが食べたくなったり、人と会いたくなったりしてきます。
恋はオールシーズンですが、秋冬は、より温かい恋を求めているのかもしれません。

恋の最中には、「この人しかいない!」と思いますが、ふとしたことで100年の恋も冷めると、「あれ? こんなことするの?」と、途端に嫌いになることも……。
相手は同一人物ですが、別人のように感じますね。

『枕草子』に、「あまりにも違いすぎて、比べようもないもの」という一段がありました。木村耕一さんの意訳でどうぞ。

人間なんて、心変わりすると、全く別人になるんですよ

(意訳)

あまりにも違いすぎて、比べようのないもの。

夏と、冬と。

夜と、昼と。

雨の日と、晴れの日と。

人が笑っている時と、腹を立てている時と。

年老いた人と、若い人と。

白い色と、黒い色と。

自分が思いを寄せている人と、自分が憎んでいる人と。

同じ人なのに、自分に愛情を持ってくれていた時と、心変わりしてしまった時とでは、全く別人のようにしか思えません。

人間なんて、心変わりすると、全く別人になるんですよ~たとしえなきもの(枕草子 第68段)の画像1

(『こころきらきら枕草子』木村耕一著 イラスト 黒澤葵 より)

恋の歌

木村耕一さん、ありがとうございました。

季節も、天気も、人の心も、比べようもないほど、変わるものなのですね。
「同じ人なのに、自分に愛情を持ってくれていた時と、心変わりしてしまった時とでは、全く別人のようにしか思えません。」の一文に、ハッとしました。
このあたりの恋愛事情は、千年前も今も変わらないようです。

ある日、プロポーズしてきた貴公子に、清少納言はこんな歌を送って、ピシリと断っています。

夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも
 世に逢坂(おうさか)の 関はゆるさじ

この歌があまりにも素晴らしかったので、断られた当の貴公子が、皆さんに披露したとか……。

この清少納言の歌は、『小倉百人一首』に選ばれていました。やっぱりとても素晴らしい歌なのですね。
恋の歌が、現在まで語り継がれているって、とてもロマンチックです。



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人間なんて、心変わりすると、全く別人になるんですよ~たとしえなきもの(枕草子 第68段)の画像2

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