こころを守る防災 #2

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大人なのに地震・雷が怖い…!明橋先生が教える、災害時の心の対処法

地震がやってきた時、が鳴り出した時、怖い気持ちをガマンして過ごすのは辛いですよね。
第2弾では、実際に災害が起こってしまった時の対処法をご紹介いたします!
ザワつく心を落ち着かせられたら、身を守る行動が取りやすくなるはずです。

教えてくださるのは、第1弾と同様、精神科医の明橋大二先生です。
明橋先生は国内におけるHSPの専門家で、累計500万部を超える「子育てハッピーアドバイス」シリーズなど、ベストセラーを多数執筆。
いわば「こころのスペシャリスト」です!

大人なのに地震・雷が怖い…!明橋先生が教える、災害時の心の対処法の画像1

前回は、「実際に災害が起こる前の不安」への対処法を明橋先生にお聞きしました。
災害に対する人並み以上の恐怖は、「HSPとしての気質」に由来しているというお話がありました。HSPとは「ひといちばい敏感な気質」の持ち主のことです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください!

「大人になっても怖い」は欠点じゃない

——前回相談に乗っていただいたように、実際に災害が起こる前でも不安で、疲れてしまう時があります。実際に地震や雷がやってこようものなら、泣きそうです。「大人なのに、こんなに怖がり」って変でしょうか?

明橋:確かに皆が平気な顔で過ごしてる中で、自分だけが「怖い!」って思うのは不安だし辛いですよね。
「いつか慣れるものだ」とか「大人なんだから我慢しなさい」とか言う人はいるかもしれないけど、それができないから困ってるというのもよくわかります。
でもね、「怖い」に大人も子どもも関係ないんですよ。だから大人になっても怖いものがあるっていうのは欠点なんかじゃありません。
例えば、実は私、虫のクモが大の苦手なんです。

——えぇ、そうなんですね! なんだか少し意外です。

明橋:実物はもちろんですけど、百科事典に載ってるクモの写真ですら怖くて触れないくらいで。大人になった今もです。
さて、シュウさん。この話を聞いてどう思いましたか?

——ん〜、ビックリはしましたけど、正直微笑ましく思ってしまいました(笑)。明橋先生のような精神科医の方でも怖いものがあるんだなぁと。

明橋:意外とそうやって受け入れてもらえたりするものなんです。
シュウさんは具体的にどんなことが怖いんですか?

「雷の音や光が怖くて落ち着かない……」

——私は雷がとっても苦手なんです。大きな音も突然の光も怖くて、鳴り出すと耳を塞いでしゃがみこみたくなります。仕事中にはそんなことできないし……。こんな時、どうしたらいいですか?

明橋:なるほど。確かにそれでは落ち着きませんよね。
残念ながら前回もお話ししたように、「怖いモノ」は避けるほかありません。雷の音が怖いならイヤホンで音楽を聴いたり、光にビックリしてしまうなら窓が目に入らない場所に移動したり。物理的にシャットアウトすることが、一番の対処法なんです。
でも仕事中だったり、人といたりする時は、確かにそういった行動を取りづらいですよね。そんな時は思い切ってこうするのがいいと思います。

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明橋:先ほども言ったように、「大人になっても怖い」は全く変なことじゃありません。思い切って周りの人に打ち明けてしまえば、回避の行動はグッと取りやすくなりますよ。

——そう言っていただけて安心しました! ありがとうございます。

「地震がやってきた! 頭の中が大パニックになっちゃう」

——次に、パニックになってしまった時は、どうしたらいいでしょうか。例えば、地震が起きた時です。「津波が来たら」とか、「もっと大きな揺れが来るんじゃないか」と、不安がドッと押し寄せてきてしまって……。

明橋:まずお伝えしたいのは、シュウさんがそうやって不安に思っていることは、「正しい心配」であるということです。津波などは現実的に起こる可能性があるし、実際にそれで亡くなられた方も、多くいらっしゃいますからね。
では、パニックになってしまうのはどうしてかというと、それは心配する対象が多いからです。それぞれの可能性に対して真剣に考えているのですから、無理もありません。
そんな時こそ、とってほしい行動がこちらです。

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明橋:前回おすすめしたような、信頼できる情報源から状況を確認してみてください。
津波の危険性がなければ、また起こるかもしれない揺れのことだけ心配すればいいのです。心配事がいくつもあるという状況自体がとてもストレスなので、心配する対象が絞られれば、かなり心が楽になるはずですよ。

「境界線」を引けば、イヤな雰囲気に影響されない!

——災害そのものへの向き合い方は、よくわかりました。もう一点、周りの環境についてご相談したいです。例えば、地震の規模が結構大きいと、身の回りにも緊張が流れると思います。自分の他にも怖がっている人がいて、テレビでは、どのチャンネルでも臨時ニュースが流れていたり……。こういった「ただならぬ雰囲気」に、すごく不安がかき立てられます。こんな時は、どうしたらいいのでしょうか?

明橋:これは災害時に限らず、特にHSPの人には日常的にやってみてほしいことなのですが、「バウンダリー」というものを意識してみてください。

——初めて聞く言葉です!「バウンダリー」って何ですか?

明橋:「バウンダリー」とは、「境界線」ということ。「バウンダリーを意識する」というのは、ひと言でいうと、「境界線を引くこと」、つまり「自分と相手」「自分と自分以外の全て」とを区別する線引きをするということですね。
もっと簡単に言うならば、「自分は自分、他人は他人」。そうハッキリ区別をすることが「バウンダリー」なのです。それをすることで、雰囲気や相手に影響されず、自分の心を守ることができます。

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明橋:特にHSPは、他人の感情を鋭く察知して、共感しやすかったりします。また、その場の雰囲気に心が影響されやすいのも、HSPの特徴です。だからこそ、シュウさんは不安を感じやすいんじゃないかな。
私生活でも、お友達の悩み相談に乗っていたら自分も辛くなってしまったり、怒られてる人がいると、自分まで萎縮してしまったり。そんなことはありませんか?

——おっしゃる通りです。では、日頃から「バウンダリー」を意識すれば、もっと楽に過ごせるんですね。やってみたいです!
「境界線を引く」って、具体的にどうしたらいいですか?

明橋:物理的境界線、②心理的境界線、この2つの引き方を説明しますね。

①自分ひとりの空間で、まずは深呼吸。

明橋:まずは、「物理的境界線」です。怖がっているお友達や、騒然としているその場から、物理的に距離をとってみてください。別室に移動して、まずは深呼吸。心を落ち着けることを優先するのがいいと思います。
というのも、ザワザワした雰囲気の中にいては、影響を受けることはまぬがれないのです。共感もそうですが、特にHSPの場合は、情報量が多いと、その処理だけでも疲れてしまいますからね。
他にも、ノイズキャンセリング機能つきのイヤホンをすることで、聴覚情報だけでもシャットアウトするというのも、効果的ですよ。

——はい、まずは、物理的に「見ない」「聞かない」状況を作ることで、自分の心のケアに専念するということですね。

②キーワードは「自分は自分」。相手を優先しなくていい。

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明橋:次に、「心理的境界線」です。キーワードは、「自分は自分、相手は相手」。そう強く思うことが、とっても大事なんです。

——「自分は自分、相手は相手」……うーん、それって少し冷たくないですか?

明橋:もちろん、相手の痛みに共感して寄り添ってあげられるのは、素晴らしい能力です。ですが、それはそれとして、まずは自分を最優先にしてみてください。そうすることは、冷たいことじゃありません。
例えば、HSPを提唱したアーロン博士は、飛行機のたとえを使ってこんなアドバイスをしています。
飛行機の中で、酸素が不足する事故が起こったとします。そうなると、酸素マスクをつける必要が出てきますよね。さて、あなたの横には小さい子どもが座っています。
自分と子ども、どちらを優先して酸素マスクをつけるべきだと思いますか?

——そうですねぇ。迷うけど……子どもに先につけたほうが、いいんじゃないでしょうか。自分ではつけられないだろうし。

明橋:シュウさんは優しいですね。だけどこれ、正解は「自分が先につける」なんです。
子どもにつけている間に自分が気を失ってしまったら、その後、子どものケアをすることができません。まず、自分が酸素を確保して、それから子どもを助ければ、2人とも助かる確率はグンと上がります。
同じことが、人間関係にも言えます。
怖がって泣いてる相手がいても、まずは自分の心のケアを優先しましょう。そうして落ち着くことで、初めて相手のこともサポートできるのです。
災害時においては、特に冷静になることが大切です。まずは自分だけでも冷静になることが、自分を含めたその場の人全員の命を救うことにつながります。

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まとめ:状況を把握したら、自分優先でケアをしていい。

今回は、「災害が実際に起こってしまった時」の対処法を教えていただきました!今回のポイントは、

  • 「怖い!」を周囲に打ち明けると、回避の行動が取りやすい
  • ニュースで状況を把握して、起こる可能性のあるコトに絞って心配する
  • 「境界線」を引くことで、相手や環境から、自分の心を守れる!

「“大人になっても怖い”は変じゃない」「自分を優先することが相手のためにもなる」、明橋先生にそう言っていただけて、心がずっと軽くなりました!
「バウンダリー」は、日常にも取り入れていけそうですね。

次回は連載最終回、「災害が起こった後の心のケア」をご紹介いたします。
お楽しみに!

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