Dr.明橋のHSP大全 #19

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生き方の土台となる、3つの「愛着スタイル」とは【精神科医が解説】

HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第19回です。
これまでの連載はこちら

HSPの基本的な内容は下記でまとめていますのでご覧ください。

愛着スタイルは、乳幼児期に自分で決める

人は、生まれたときから、少しでも安心して生きていくために、人との関係において「パターン」を持つようになります。中でも、「愛着スタイル」と言われるパターンは、すべての土台になります。

アメリカの児童心理学者ミーガン・グンナーは、赤ちゃんは生まれて9カ月のときに、そばにいる養育者が支援的で思いやりのある人かどうかを見分けていると言います。

乳児は何もできないので、自分の面倒をみてくれる誰かとの繋がりを持ち始めます。そして、その関係が安心できるものであるように、乳幼児のうちにパターンを決めます。

こうして形成された愛着スタイルは、成人してからも、「他者をどう見るか」についての基本的な枠組みとなります。

それが大きく覆されるような出来事がない限り、その人の世界観、人間観となって、長く人生に影響を与え続けるのです。

あなたの愛着スタイルは、何型?

まず、あなたの「愛着」はどれでしょうか? 子どもの頃の養育者(大抵は母親)との関係はどうであったか、大人になった今は対人関係にどのような傾向があるか、考えるきっかけになればと例を集めました。

あなたが多く当てはまると感じるグループを、ABCの中から1つ選んでみてください。

A―①:

親は、私が困っていることに気づくとすぐに助けてくれた

親は、私が何かにチャレンジするとき信じて見守ってくれた

家族と過ごした時間を思い出すと優しい安心する感じがする

A―②:

全般 大体誰とでも、程よく心地よい付き合いができる

仕事 ピンチのときは迷わず周囲に助けを求める。快く助けてもらえると信じている

友人 他人との距離感が心配や苦痛になることはあまりない。友達とは言いたいことを言える仲だ

恋人 相手に依存されたり、自分が好きになることに、心配や不安がない

B―①:

親は日によって私への接し方や言うことが違うことがあった

親は「私のため」でなく「自分の都合」で子育てをしていると思った

家族は私の「私の味方」でいてくれないこともあった

「愛してくれた」「また同じ親の元に生まれたい」と“100%”は言い切れない

B―②:

全般 今は順調でもいつか必ず裏切られる

仕事 そのうち「要らない」と解雇されるのではないか不安だ

友人 陰で悪口を言われているのではないかと心配だ

恋人 「好きです」「結婚したい」と本音を言うと相手が不快になる気がする

C―①:

家族とのいい思い出が少ない、親と過ごした時間はあまり記憶にない

親は私を邪魔者扱いしていた気がする

親に拒否された、認めてもらえなかった記憶がある

「生んで後悔している」のが親の本音だと感じたことがある

C―②:

全般 人間関係は基本的に煩わしい

仕事 できれば仕事を辞めたい。仕事の同僚とプライベートでの付き合いなどあり得ない

友人 人を頼らずに自分で何とかしてほしい

恋人 心の距離を縮められると不安になる、わがままを言われるのではないかと心配だ

生き方の土台となる、3つの「愛着スタイル」とは【精神科医が解説】の画像1

当てはまる傾向が強いのはABCのどれでしたか?

①はあなたが子どもの頃の養育者との関係はどうであったかを聞いています。
②は成人してからのあなたです。全部当てはまるところがあったり、その時の状況や気分で違ったりするものです。

しかし、この中に気になる言葉があるのなら、今、あなたの無意識がそのことについて考えてほしいと伝えているのです。(無意識については第14回「HSPが楽になる考え方」

心の安全基地は、親子関係以外でも獲得できる

Aが強そうならば、あなたの愛着スタイルは「安定型」でしょう。安定型(A)の人は、①で生まれたときの養育者(多くの場合、母親です)との関係が安定しています。

親は自分ではなくあなたの求めを優先してくれました。あなたが「そばにいてほしい」「安全で気持ちいいと感じていたい」ときは「いつもそばにいるよ」と抱きしめてくれました。

あなたが1人で世界を探索しに行きたいときは「行っておいで」と送り出してくれて、あなたがピンチになると助けてくれました。

Aの人は、まず①に多く当てはまり、②にも当てはまります。

親が安心して送りだしてくれて、困ったらいつでも抱きしめてくれた心地いい感覚が、今も心の中にしっかりと残っています。

だから大人になった今も、「大丈夫、自分はやっていける」と自信があり、他人にも「信じてもらえる」「いつでも助けてくれる」と安心して頼れるのです。

心の中に「安全基地」があるといわれます。

AよりもBやCの①に当てはまるのに、②はAというのなら、あなたは、愛着の研究者たちが「獲得された安定型」と言う人です。辛い幼少期を乗り越えてきた自分を褒めましょう。

「安定型」「とらわれ型」「回避型」HSPとの関係は?

すべての人の約半分は安定型で、アーロン氏は、安定型か否かはHSPか非HSPかに関係ないと言います。だから、読者のみなさんの半数は安定型です。

一方で、残りの半分の人たちは養育者を頼れず恐れや不安を感じてきた不安定型です。

BとCが多い場合は、もしかすると不安定型かもしれせん。Bはとらわれ型Cは回避的な愛着スタイルを示します(Cの回避的な愛着スタイルにもまた2通りあります)。

とらわれ型の愛着スタイル(B)は、親の世話に一貫性がなく、あなたが冒険しようとすると、親は強い不安を示すので、あなたにとって安心できるスタイル(パターン)は、その人からずっと離れないでいることでした。

回避型の愛着スタイル(C)は、養育者が忙しすぎることで生じます。

ストレスが多過ぎる、病気、そばにいてくれない、世話をしてくれない、または危険な親と一緒にいると、その子にとって一番安心できるスタイルは、その人との距離を保ち、助けを求めたり、親を煩わしたりしないようにすることでした。

不安定型になってしまう過去があったために、「どうせうまくいかない」「一人ではやっていけない」「他人は自分を裏切る」というパターンが染みついてしまっているとしたら、今後、あなたにはそれを覆すほどの経験がたくさん必要です。

あなたが過去を振り返り、未来を変えていきたいと思うのなら、安定型になれるチャンスはいつだってあります非HSPも含め、半分の人はそのような経験を増やしていく必要があるのです。

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HSPの場合、良い状況ではうまくやっていけそうですが、悪い状況では多くの困難を抱えます。HSPとしての自分の身に起きていることを理解し、いい思い出を増やして安定型になることが必要不可欠です。

あなたが今も否定的な過去を繰り返してしまうのは、「そう育てられたから」だけでも「HSPだから」だけでもありません。その両方の作用が複雑に絡み合っていて、どちらかだけが問題ということはないのです。

小さい頃のあなたの眼に映っていたのが、「忙しい」「厳しい」「愛してくれない」母親だったとしても、成人したあなたが振り返ってみると違うかもしれません。

あの時の親が本当はちゃんと自分を愛してくれていたことが、自分が親になって我が子を抱きしめた時に分かるという人は、非HSPの男性にも多いです。

子ども時代をよく洞察することで、生まれつき「恐れや不安が多い」「暗い」「メンタルが弱い」というわけではなかったことが分かり、否定的なレッテルを払拭することができます。

そしてさらに、「大変だったね、もう助けを求めていいんだよ」と自分を受け容れることもできるのです。

不安定型だったからこそ、より魅力的な人に

このようにして、意識的に安定型になる人は、もともと安定型であるよりも、魅力的な人柄になれると言われます。

そして、とらわれ型は、誰かの一貫した注目に感謝できるようになります。本当は寂しい回避型も、孤独に対処できて他人にも自分にも優しい人になれるのです。

どうしたら安定型になれるのでしょうか?
次回から、それぞれのスタイルを詳しく見ていきましょう。

AからCに挙げた例は、あなたの記憶を引き出すための、ほんの一例に過ぎません。

あなたの養育者との関係はもっと複雑だったはずです。その後の人生でも色々なことがあったと思います。思い出す出来事があれば、それを振り返ってみましょう。

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【ぜひ読んでいただきたい書籍】

HSCの子育てハッピーアドバイス

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明橋大二(著) 太田知子(イラスト)

教えて、明橋先生! 何かほかの子と違う? HSCの育て方 Q&A

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明橋大二(著)