1. 人生
  2. 心理

対人関係で役立つ!EQが高い人の特徴と高めるトレーニング方法を紹介

「EQ」という言葉、あなたは聞いたことがあるでしょうか。

EQとは「こころの知能指数」「感情知性」のことをいいます(「Emotional Intelligence Quotient」を略したものです)。

「こころの知能指数」「感情知性」とは、自分の気分・感情を正確に把握する能力です。また他人の感情をできるだけ正しく予測して、共感する能力であり、自分の感情をうまく利用して目標達成に向かえるようにする能力の総称を指します。

前回はさまざまな研究・調査によって、IQ(言語や数学的な知能指数)よりもEQが人生に差をつけること、学業やビジネスでの成功と関連が深いのはIQよりもEQのほうだ、ということをお話ししました。

なぜEQの高さが、学業やビジネスでの成功をもたらすのでしょうか。

それは、EQが高い人は感情を上手にコントロールでき、衝動的な行動を起こしにくいからです。

困難な状況に陥っても、すぐにあきらめることなく、粘り強く努力を続けられます。
たとえくじけても、立ち直りが早いです。

ストレスのかかる場面でも感情的になることはなく、気持ちを落ち着けて、よりよい言動をしていけるのです。
ゆえに対人関係が良好に保たれ、成功のチャンスもつかめるのですね。

前回の記事は下記よりご覧ください。

今回は、EQには5つの基礎能力があること、その能力を高めることでできるようになることをお話ししていきます。

EQが高い人の特徴:基礎能力5つ

EQという概念を初めて提唱した人の一人 イェール大学のピーター・サロベイ博士は、EQを5つの基礎能力に分類して説明しています。

その能力とは、以下の5つです。

  1. 自分自身の感情を知る
  2. リスト感情を制御する
  3. 自分を動機づける
  4. 他人の感情を認識する
  5. 人間関係をうまく処理する

 

参考文献:『EQ こころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著 講談社)

今回の記事では、これらの能力の特徴 と 高める方法を一通りご紹介していきます。

基礎能力①:自分自身の感情を知る

1つ目の能力は

「いま、僕はとても気分がいい」
「今日、私は少し気が滅入っている」

のように、「自分自身の感情を知る」ことです。

これはEQのいちばん大切な基本といわれています。

「自分がいま、何をどう感じているのか」を把握できなければ、感情の波に押し流されてしまい、衝動的な言動をしてしまいかねないからですね。

反対に、「自分はいま、どんな気持ちなのか。どんな気分であるのか」に気づいていれば、その次の段階である「感情を制御する」ことにつながります

感情にとらわれることなく、状況を落ち着いて見みれるようになります。

基礎能力①を高める方法

「自分自身の感情を知る」能力をすぐに高める方法として、「いま自分はどんな気持ちなのか?」を問いかけてみましょう

振り返ってみると、日常のほとんどの時間、自分の感情に意識を向けていないのではないでしょうか。
「今日一日、自分はどんな感情を抱いていたのか」と質問されると、なかなか答えづらいかと思います。

「自分は今どんな気持ちなのか」説明する習慣をつけると、感情をコントロールする力は格段に高まります。

基礎能力②:感情を制御する

2つ目の基礎能力「感情を制御する」は、1つ目の能力「自分自身の感情を知る」こと(より詳しくいえば、「情動の自己認識」といわれます)の上に成り立っています。

これは自分の感情を静めて、不安や憂うつ、苛立ちといったネガティブな感情にとらわれない能力のことです。

感情を制御できない人は、いつも怒りや不安のような不快な気分と闘わねばなりません。闘いに負けて感情的になったり、重圧に押し潰れたりしてしまいます。

感情をうまく制御できる人は、不快な感情に流されることなく、逆境や混乱からも早く立ち直れるのです。

基礎能力②を高める方法

感情に振り回されないには、感情へのイメージを変えることがお勧めです。

怒りや不安、悲しみといった感情を抱くと、「こんな感情にとらわれてはならない!」と焦り、ますますその感情にとらわれることになります。

そこで「どんな感情にも意味や価値がある。こんな思いになるのは、何かしら理由があるからだ」と思ってみましょう
自分の状況を俯瞰して見ることにつながります。

そこからさらに自分のニーズに目を向けていくと、感情の本当の原因がわかり、解決策が見つけられるのです。

③自分を動機づける

3つ目の能力は「自分を動機づける」ことです。

これは、自分の感情に気づき、感情をコントロールした上で、目標達成に向かって自分を奮い立たせる能力のことです。

この能力によって自制心が働いて、目先の快楽をがまんし、1つことに集中できます
仕事でも学業でも、何を達成にするにも必要な能力です。

3つ目の能力が身につけば、気持ちの切り替えも上手になって集中して物事に取り組み、より高い成果を上げられるでしょう。

前回の記事でご紹介した「マシュマロ・テスト」の合格者は、食べたいという欲求をうまくそらして、やってはいけないことをやらない能力が強い人といえます。
やってはいけないことをやらない能力は、裏を返せば、1つのことに集中する力も強い人、つまり「自分を動機づける」能力の高い人ともいえるのです。

基礎能力③を高める方法

感情を、自分を動機づけることに生かすには、笑顔や笑い声を増やすといいといわれますね。

気持ちがのらないときに、無理矢理でも笑ってみると、神経化学物質のドーパミンが分泌されて、気分がよくなり、現実の認識が改善される(困難も乗り越えられると思える)のです。

また、ポジティブな言葉がけ(「大丈夫」「きっとできる」など)も、粘り強く物事に取り組む力を高めます。

笑顔の効果は、下記でも解説していますのでご覧ください。

 

④他人の感情を認識する

4つ目は「他人の感情を認識する」能力です。

これは「共感」能力とも言い換えることができます。相手の気持ちを察して、自分のことのように感じ、相手に寄り添うことのできる能力ですね。

この共感能力のベースにあるのが、「自分自身の感情を知る」能力であり、「感情を制御する」能力です。

他人に共感するには、その人の出す微妙な感情のサインを受け止めねばなりません。それには平静さが必要です。
自分が自らの感情に気づけていない、感情に流されている状態では、相手の感情を正確に読み取れません。

逆に平静さが保たれていれば、

「辛かったんですね」
「悲しかったのですね」
「困っているんですよね」

と、相手の感情を汲み取れます。

相手に共感することなく、自分の感情をそのままぶつければ、相手との関係は確実に悪化してしまいます。

たとえば、

「あなたって、ほんとに自分勝手ね。人の気持ちなんて、全然考えないんだから」
「お前のその言い方こそ、自分のことしか考えていないだろ!」

のような言い合いをすれば、険悪な関係になるのは目に見えていますね。

反対に、相手は共感をしてもらえたと感じると、好意や親近感を抱き、言葉や態度もその環状に沿ったものになります

「自分のことしか考えていないだろ!」という、相手を責める言い方はせずに、「君は〇〇ができていなくて困っているんだね。僕の都合を優先してしまって、申し訳ない」と言ったら、どうでしょう。

相手は、「困っている」という気持ちに共感してくれたことを喜び、言動・態度はいい方向に変わっていくはずですね。

基礎能力④を高める方法

共感能力を高めるには、相手の表情に注意を払うことが大切です。

私たちは相手がどんな表情をしているのか、あまり意識していません。
それでは、相手がどんな気持ちになっているのかを正しく認識するのは難しいですね。

まず「この人はこんな表情をしているから、おそらくこんな気持ちになっているはずだ」と、相手の様子から感情を推察する習慣をつけてみましょう。

そこからさらに、その読みが適切であるかどうか、相手に実際に訊いてみることができれば、他人の感情を認識する能力は着実に高めていけます(読みと合っていれば自信になりますし、外れていれば正しく感情を察することに近づけます)。

⑤人間関係をうまく処理する

最後、5つ目の能力は「人間関係をうまく処理する」です。

人間関係をうまく処理するには、他人の感情にうまく働きかけることが必要ですね。

落ち込んでいる人には鼓舞する言葉がけして、やる気を出してもらいましょう。

怒りで周りが見えなくなってしまいそうな人には、自分の心を見つめるようアドバイスをして、冷静さを取り戻してもらうことが必要です。

「人間関係をうまく処理する」能力は社会的知性(=「Social Intelligence Quotient」、略してSQ)ともいわれ、人気やリーダーシップの基礎となるものです。

これには、自分の感情を把握し、制御する能力(1つ目・2つ目の能力)と、他人の感情を認識する能力(4つ目の能力)が必要です。
身につけるのは簡単ではありませんが、できるようになれば一層、他者と良い関係を築けてプロジェクトのリーダーや会議のまとめ役の適任者ともなれるでしょう。

基礎能力⑤を高める方法

他人にうまく働きかけるための土台は、相手の話を聞くことです。

私たちは相手の話を聞いているようで、実際は 自分が何を言おうかと考えていて、しっかりとは話を聞けていないことが多いです。

そこで、相手の話を能動的に聞くことに心がけてみましょう

能動的に聞くとは、相手が何を感じ(=感情)、どう考えていて(=思考)、何をやろうとしているのか(=ニーズ)を注目して聞く、ということです。
そうやって相手の気持ちや考えがわかれば、共感にもつながり、適切な働きかけの仕方も見えてくるでしょう。

以上が、EQの5つの基礎能力でした。

EQの基礎能力を身に着けよう

簡単にEQの5つの基礎能力について振り返ってみます。

  1. 自分自身の感情を知る
    「自分はいま、どんな気持ちなのか」という自分の感情を正確に把握できている
  2. 感情を制御する
    感情を鎮めて、怒りや不安などのネガティブな感情にとらわれない。落ち着いて状況を観察できる
  3. 自分を動機づける
    感情を上手に利用し、目標達成に向けて自分を鼓舞する能力
  4. 他人の感情を認識する
    相手がいま どんな気持ちかを察して、自分のことのように感じ、寄り添う。いわゆる共感すること
  5. 人間関係をうまく処理する
    他人の感情にうまく働きかけて、相手を元気づけたり、落ち着きを取り戻させたりする

次回は、1つ目の基礎能力「自分自身の感情を知る」の鍛え方をお話ししていきます。

【参考文献】
『EQ こころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著 講談社)