「別に……」
「なんでもない」
子どもに、最近の様子や困っていることを聞いても、ホンネを言わないことはないでしょうか。
親からしたら、子どもの気持ちが分からないことほど不安なことはありません。
今回は、自分の気持ちをハッキリ言えない子どもだった私が、本音を隠してしまう子の心理と、かけてほしい言葉をご紹介します。
嫌なこと、困ったことを我慢してしまう子の特徴
まず、本音を隠してしまう子どもの典型的な例として、私自身の子ども時代を振り返りたいと思います。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
私の両親は共働きだったため、0歳から保育園に預けられていました。
3月生まれで体が小さく、集団行動も苦手だった私は、みんなと一緒に何かをするのがとても大変でした。
楽しいはずの遊びの時間も、給食もお昼寝も、すべてがツラくてたまらない…!
初めのうちは「ほいくえんいきたくない~」と泣きながら通っていました。
でも、ワガママを言ったところで、「じゃあどうすんの! このまま置いていくよ!」と怒鳴られるだけ。
結局、無理やり連れて行かれてしまいます。
そんなことを繰り返すうちに、思ったことを言うだけムダ、と諦めて、できるだけ感情を殺して過ごすようになりました。
小学校に上がっても、とにかく、嫌なこと・困ったことを誰にも言えない子どもでした。
例えば……
- 消しゴムを忘れたのを怒られたくなくて、友達の机から盗ってしまう
- トイレの臭いが苦手で近寄れないまま、一日ずっとモジモジしている
給食の時間、気分が悪くなったのを言い出せず、目の前の友達に向かって吐いてしまったこともありました(今でも、その子に会う度に言われます…笑)。
こうしてガマンを重ねていた頃に始まったのが、気がつくと、自分のまゆげを抜いてしまう癖。
すると、担任の先生が「何か悩みがあるんでしょ?」とものすごく心配そうに話しかけてきました。
しかし、せっかく声をかけてもらっても特に言うことが思い浮かばず、「えっ、別にない…」と即答してしまったのを覚えています。
そのくらい、自分が何に困っていて、何をガマンしていたのかも、全く分からなくなっていました。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
気持ちをハッキリ言えない子ども、将来が心配?
今振り返って、客観的にみると「この先大丈夫か?」と不安な子どもですね……。
ちなみにこの後、まゆげを抜く癖もおさまり、無事に分かりやすい反抗期をむかえます。
特に、高校生になってからは、
- 「これ以上休んだら卒業できない」と言われるほど、遅刻を繰り返す
- 一日のほとんどをSNSの監視に使う
など、イライラや不安が行動に出てしまい、かなりムダな時間を過ごしていました。
また今でも、やりたいこと・困ったことを聞かれると上手く言葉にできないことがあります。
精神科医・明橋大二先生は、本音を言えない「手のかからない子」が心配な理由を、次のように解説されています。
手のかからない、いい子になることによって、じゅうぶんな世話、関心を受けないまま、大人になってしまうことがあります。
あるいは、自分がいい子でいる間は受け入れてもらえるけれど、もし一度自分が悪いところを出したら、その途端に嫌われるんじゃないか、見捨てられるんじゃないかと思っていることがあります。
それがもう少し大きくなってから、赤ちゃん返りとか、試し行動といって、わざと悪いことをするとか、さまざまな心身症という形で出てくることがあるのです。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
このように、子どものうちから、言いたいことを我慢する習慣がついていると、
- 反抗期に、それまで抑えていた気持ちが爆発してしまう
- 大人になっても、自分のやりたいことが見つけられない
- うつ病や心身症といった、精神的な病に苦しむ
といったリスクがあります。
できるだけ小さいうちに、本音を言える環境をつくってあげることは、とっても大切なんです。
子どもが困っていること・嫌なことを言えない理由
ではなぜ、子どもは、思っていることを言葉に出せなくなってしまうのでしょうか?
代表的な理由を3つ、紹介します。
自分の気持ちよりも、大人の反応を優先している
子どもにとっては、保育園・学校と家庭が世界のすべて。
お父さん、お母さんや先生など、周りの大人に嫌われたら生きていけません。
そんな子どもが、勇気を振り絞って「ぼく、ほいくえんおやすみしたい…!」と言ったとします。
もし、次のような反応が返ってきたら、どう感じるでしょうか?
- 「お母さんだって、嫌な仕事に行ってるんだから!」と感情的に責める
- 「どうしてそんなこと言うの?」と悲しい顔をする
大人からすれば、もっと頑張ってほしい、強くなってほしい、という励ましの気持ちもあると思います。
しかし、子どもに残るのは、
「自分が本当の気持ちを言ったことによって、お母さんを傷つけてしまった」というショックです。
そうすると、本音を言うのは悪いことなんだ、と思い込んでしまいます。
どうせ分かってもらえないとあきらめている
自分の気持ちを受け入れてもらえないことが続くと、子どもは、本音を言うのをやめてしまいます。
大人でも、何度言っても分かってもらえなかったら、もう言うだけ無駄だ……と諦めることはありますよね。
同じように、「どうせ悲しい気持ちになるなら、最初から言わない方がいいや」と、口を閉ざしてしまうのです。
ネガティブな気持ちにフタをしてしまう
自分の気持ちを受け入れてもらえないのは、とてもつらいことです。
何度も否定されることが続くと、子どもは「自分の気持ちを無視した方がラク」と考えるようになります。
本音を言えない子どもの問題は、ただ単に、気持ちを言葉で伝えていないだけではありません。
イライラや不安といったネガティブな感情を自覚できず、笑顔で楽しそうに過ごしている子も多いのです。
そうすると、言葉にできないモヤモヤした気持ちが、問題行動や体の症状として、表面に出てくることになります。
子どもが本音を言えるようになる、3つの言葉
では、子どもの本音を引き出すためには、どのように接してあげるのが良いのでしょうか?
自分の気持ちを上手く表現できない子どもに、安心感を与えられる言葉を3つ、紹介します。
①「なんでも言っていいんだよ」
いやだった気持ちを、ワーッと吐き出すと、子どもは自分の気持ちに気づくことができます。
それを受け止めてもらうと、自分でもその気持ちを受け止めることができるようになります。「何でも話していいんだよ」という気持ちで聞きましょう。
(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
まずは、困っていることや悩みを吐き出していいんだよ、と伝えましょう。
自分の気持ちを言えない子どもは、お母さんや先生に心配をかけてはいけない、という意識がとても強いです。
- 「〇〇ちゃんの話を聞かせて」
- 「なにか困っていることはない?」
と声をかけてあげてほしいと思います。
その場では上手く話せなくても、いざとなったら頼れる大人がいるだけで、每日を安心して過ごせるようになります。
②「いつも大変だけど、よく頑張ってるね」
とはいえ、気持ちを表現するのに慣れていないと「何でも言って良いんだよ」と言われても困ってしまうことがあります。
とくに
- 自分の気持ちが分からない子
- 感情表現の仕方を知らない子
には、次のような、感情を引き出してあげる言葉が必要です。
- 「お母さんは××が苦手だけど、〇〇ちゃんはどう?」
- 「はじめての注射、怖かったけど、よくガマンしたね」
「苦手」「怖い」など、モヤモヤした気持ちに名前を付けてあげることで、
“自分はこれが苦手だったんだ!” “苦手なことも頑張ってたんだ!” と言葉で認識できるようになります。
③「そうか、〇〇だったんだね」
子どもの本音は、必ずしも大人が納得できる内容とは限りません。
それは自分が悪いんじゃない? と思ったり、何を言っているか分からなかったりすることもあります。
むしろ、大人が聞きたくないようなことを思っているからこそ、子どもは、本音を隠しているのです。
普段は聞き分けの良い子から、不満やイライラした声が出てくると、あなたらしくないね、と注意したくなることもあると思います。
しかし、まずは、子どもの気持ちを受け止めて、
- 「〇〇ちゃんは××がイヤだったんだね」
- 「そんなに大変なのに、いつも我慢してたんだね」
と、共感する言葉をかけてあげてほしいです。
気持ちを分かってもらえた、受け止めてもらったという安心感から、次第に、イライラや不安も落ち着いてくるはずです。
まとめ
本音を言わない子は、あまり手がかからず、育てやすいと感じられることも多くあります。
一方で、心の中でネガティブな気持ちを抱えていることを見過ごされがちです。
しかし、本当の気持ちを受け止めてもらえないまま大人になることで、
- イライラや不安が爆発してしまう
- 自分の人生を自分で決められない
- うつ病や適応障害など、心身の不調
といった、より深刻な問題につながってしまいます。
そのため、出来るだけ小さいうちに「ここでは何を言っても大丈夫!」という環境をつくることが、とても大切です。
また、子どもが本音を言えない原因の一つに、子ども自身が「HSC(ひといちばい敏感な子)」という特性をもっている可能性があります。
これについては、次の記事で詳しくお話したいと思います。
<続きはこちら↓>