今年もお歳暮や年賀状のシーズンが近づいてきました。
1年を振り返ってみると「この方にお世話になったなぁ、あの方にも……」と気づかされます。多くの方のご恩によって、今の私があるのですね。感謝です。
恩返しをする昔話は多いですが、「イソップ物語」には、こんな話がありました。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。
ワシを助けた男
ある男が、山を歩いていると、網にからまって苦しんでいるワシを見つけました。猟師がしかけた罠(わな)にはまったのです。
必死に逃げようと、バタバタすればするほど、網が体を締めつけ、身動きができなくなります。
「かわいそうに……。このワシにも、親もあれば、子もいるかもしれない。助けてやろう」
哀れに思った男は、ワシの体にからまっている網を外してやりました。自由を取り戻したワシは、青い大空へ向かって、一直線に飛び去っていきます。
数日後、この男が、農作業の合間に崖の下へ行って休んでいた時のことです。
上空に大ワシが現れました。
男の頭上を、ぐるりと円を描いて回り始めます。
「おや、この前のワシだな」
と思って眺めていると、ワシは、突然、男を目指して急降下し、鋭い爪で帽子を奪っていくではありませんか。
「何をする。恩を仇(あだ)で返すつもりか!」
男は、叫びながら、ワシの後を追って走ります。
やがて、ワシは帽子を落として、どこかへ飛び去っていきました。
男は、大事な帽子を拾って、
「いたずらをするにも、ほどがある!」
と怒りながら、元の場所へ帰ってみると……。
崖が崩れて、先ほどまで座っていた場所が、岩石で埋もれているではありませんか。
「ああ! ワシは、おれの命を救いに来てくれたんだ! もし、あのまま座っていたら、今ごろは岩の下敷きになって死んでいただろう……」
男は、ワシが恩返しをしてくれたことを知り、心から感謝したのでした。
いつも相手を思いやり、どんな人にも親切に接しようと心掛けている人には、必ず、よい結果が現れるのです。
(『月刊なぜ生きる』 令和元年12月号「イソップ物語 人生にこんな場面ありませんか?」 文 木村耕一 絵 黒澤葵 より)
相手を思いやり、どんな人にも親切に
木村耕一さん、ありがとうございました。
言葉が通じなくても、恩を感じて行動するワシに、心がじ〜んと温まりました。
世の中がどんなに変わっても、思いやりや親切は、幸せにつながっていくのだなと分かりました。心掛けたいと思います!
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