5人に1人のHSC(ひといちばい敏感な子)。
ささいなことで泣き叫んだり暴れたりして、周囲に迷惑をかけることがある一方、悩みや不安を素直に表せず、つらい思いをしている子も多くいます。
HSCの本音を引き出すポイントは、できるだけ小さいうちから、できるだけ具体的に、「〇〇に困ってない?」と確認してあげること。
そこで今回は、HSCが小学校に入るまでに、つまづきやすい場面とその理由、知っておいてほしいポイントをご紹介します。
HSCが保育園でつまづきやすい3つの場面
HSC(Highly Sensitive Child)とは、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン氏が提唱した概念で、日本語では「ひといちばい敏感な子」と訳されています。
- 大人からの評価に敏感
- 1のことを10に受け取る
- 気持ちを言葉にするのが苦手
といった特性のため、他の子が何とも思わない場面でつらさを感じていることがあります。
そこでまずは、0歳から保育園に通っていた私が、一日の中でも特に苦手だった場面を3つ、ご紹介します。
あくまでも私の場合ですが、多くのHSCに共通する部分があるのではないでしょうか。
HSCが保育園でつまづきやすい場面:①給食
保育園での生活の中で、最も苦手だった時間1位は、なんといっても給食です。
私の場合は、
- お母さんの料理とは違う味漬け
- 食べ慣れない食材
- 先生からの「全部食べなさい!」というプレッシャー
に押しつぶされていました……。
特に、しいたけ・いか・えびの3つは、私の中では食べ物とも思っておらず、消しゴムを食べさせられているかのような感覚。
給食の後の掃除の時間も、廊下で泣きながら給食を食べていたので、掃除をした記憶がほぼありません(笑)
HSCが保育園でつまづきやすい場面:②お昼寝
次に苦手だったのが、給食、掃除のあとのお昼寝の時間です。
薄暗い教室で、周りの皆は寝息を立てている中、一人だけ目がパッチリと冴えたまま。
- おうちのベッドじゃないのに寝れないんだけど……
- なんで眠くないのに寝ないといけないの?
- 友達が周りにいっぱいいて緊張する~~
など、色々なことをグルグルと考えながら、時間がすぎるのを待つばかりでした。
保育園の先生が、ちゃんと寝ているか見回りに来るのが怖くて、布団に頭まで潜って寝たふりをしていたのを覚えています。
近くで足を止めた先生が、「いや、この子、絶対寝てないよね(笑)」とクスクスしているのが、とにかく恐怖でした……!
HSCが保育園でつまづきやすい場面:③集団遊び
給食、お昼寝の時間の次に苦手だったのが、「大人数で遊ぶ」こと。
外に出ての鬼ごっこや、皆とずっと同じ動きをしなければならないお遊戯は、とにかく居心地の悪い時間でした。
- 「鬼」が追いかけてくるの、めっちゃ怖い……
- お部屋で絵本読みたいのに、なんでおどらなきゃいけないんだろ……
- 途中でトイレに行きたくなったらどうしよう……
など、余計なことばかり考えていました。
どうしても気分が乗らず、先生におんぶしてもらって見学をしていたことも、何度もありました。
HSCの保育園時代にありがちな3つの特徴
HSCであれば皆、給食・お昼寝・集団での遊びが苦手というわけではありません。
しかし、次のような特徴から、HSCにはある程度、共通して苦手な場面があるのではないかと思います。
HSCの特徴①:いつもと違う環境に動揺しやすい
HSCは五感が鋭いため、
- 家の味付けと違う料理
- 初めて訪れる場所
- 知らない人がたくさんいる場所
といった慣れない環境に疲れやすかったり、不安を感じる子が多いです。
特に、運動会や発表会・参観日・遠足などのイベントは、前日から緊張しっぱなしで、終わったら疲れ果てて寝てしまうこともよくあります。
『HSCのための子育てハッピーアドバイス』では、次のように言われています
楽しいはずのイベントでも、すぐ疲れてぐったりしてしまったり、興奮するようなことがあると、目がさえて眠れなくなったりします。
大きな発表会など、人に見られたり実力を試されたりする場面では、普段の力を発揮できないことがあります。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
HSCの特徴②:急かされるとパニックになりがち
刺激に圧倒されやすいHSCは、一度に大量の情報を処理するのも苦手です。
あれもして、これもして、早く早く、と急かされると、頭の中が混乱して、パニックになってしまいがちです。
1を聞いて10受け止める敏感な子は、10聞いて9忘れる子の100倍、頭を使ったり、気を遣ったりしていることになります。
これは疲れます。
そのうえ、周囲が、「あれしなさい」「これしなさい」と言っていると、処理しないといけない心の作業が膨大になり、それだけで疲れてしまう、ということがあるのです。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
HSCの特徴③:よく考えて納得しないと動けない
HSCは、周りをよく観察し、
- 本当に安心できる状況か
- なぜそれをやる必要があるのか
など一歩踏み込んだ部分まで、深く考えています。
そのため、ただ「〇〇しなさい」と強制したり、「みんなちゃんとやってるんだから」という理由では納得せず、積極的に動き出せないことがあります。
HSCは、言葉を発するのに時間がかかったり、行動を起こすのが人より遅れたりすることがあります。
それは決して、「指示を聞いていない」とか「理解していない」ということではなく、与えられた指示を実行するのにさまざまなことを考えるために、少し時間がかかっている、ということなのです。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
HSCに関わる大人に知ってほしい3つのポイント
これらの特徴から、HSCは、お母さん・お父さんや保育園・幼稚園の先生から「神経質」「行動が遅い」「わがまま」と思われてしまうことがよくあります。
しかし基本的なポイントをよく知って接することで、子どもは安心し、落ち着いて過ごすことができるようになります。
HSCのお母さん・お父さん・保育園の先生方に、ぜひ知っておいてほしい基本的な知識を3つお伝えします。
①5人に1人の敏感さは生まれつきの性質
子どもが上手く保育園に馴染めなかったり、スムーズに皆の輪に入れないと、育て方が間違ってたのかな…もっと厳しくするべき? と悩むことがあるかもしれません。
しかし、HSCは、5人に1人が持っている、生まれつきの性質です。
甘やかしすぎや、本人のメンタルが弱いからでもなく、病気や障がいとも違います。
厳しく叱責したり、無理に他の子に合わせたりするのではなく、「その子らしさ」を表す個性として受け止めてほしいと思います。
②何に敏感かはひとそれぞれ違う
同じHSCでも、どんな刺激が苦手なのか、苦手なことに対してどう反応するかは、子どもによって違います。
給食やお昼寝、みんなと遊ぶのが大好き!という子もたくさんいます。
この子はHSCだからこれが苦手なんだ、と決めつけず、ゆっくり話を聞いてあげてほしいと思います。
HSCは、敏感な子どもですが、何に対して敏感かは、人それぞれ違います。
音に対して敏感な子もあれば、においに対して敏感な子もあります。
人の気持ちに敏感な子もあります。同じHSCといっても、「敏感だ」というところが共通するだけで、千差万別です。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
③安心できる環境では、自分らしく過ごすことができる
HSCの子育てで一番大事なポイントは、「その子のペースを尊重する」ことです。
周りの大人からすると、もっとテキパキ動いて! 何をそんなに怖がってるの? 気にしすぎでしょ、とイラつくこともあるかもしれません。
しかし、その子が「嫌!」「できない!」と言っている段階で、
苦手なことを無理に強制すると、かえってトラウマになり、二度と近付けないほどショックを受けてしまいます。
反対に、状況をきちんと確認し、ここにいても大丈夫、と安心感を持てれば、
運動や遊びに対して誰よりも積極的に取り組むこともあるのです。
時には背中を押してあげることも必要ですが、まずは、本人が前向きに取り組む気持ちになるまで、待ってあげてほしいと思います。
ひといちばい敏感な子には、ひといちばい安心感が必要です。
「自分のペースを尊重してくれる」「自分のことを信じてくれている」その安心感が、一歩踏み出す勇気になるのだと思います。(『HSCの子育てハッピーアドバイス』より)
ひといちばい敏感な子は、ひといちばい頑張っている
HSCは、ひといちばい敏感という特徴から、「手のかかる子」「わがままな子」と言われることがあります。
しかし、今回改めて、私の両親に小さいころの様子を聞いてみたところ、返って来たのは、「えっ? むしろ全然わがまま言わなかったけど……?」という正反対の言葉。
給食やお昼寝も、当時は嫌そうにしておらず、苦手なことを強制しているつもりはなかったとのこと。
振り返ってみると確かに、保育園の先生も、どうしても無理、と伝えたことは、柔軟に気持ちを尊重してくれていました。
HSCという言葉を知らなくても、ひといちばい敏感な私に寄り添ってくれる大人がいたから、大変なこともなんとか頑張れたのだと思います。
でも、もし、給食やお昼寝が、私にとってはこんなに大変なんだとハッキリ伝えられていたら。きっと、泣きそうな思いをしてまで我慢しなくて済んだのではないでしょうか。
HSCは、一緒に過ごす相手の笑顔が大好きです。
そのため、家族やお友達が嬉しそうにしていると、自分のことのように喜ぶことができます。
一方で、大人を困らせたくない一心で、と悩みを言い出せない子が多くいるのも事実です。
お子さんや周りにいる子がHSCかも?と思ったとき、この記事が、「〇〇に困ってない?」と本音を引き出すきっかけになれば幸いです。
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