2024年の大河ドラマの主人公が紫式部になりました。
紫式部といえば『源氏物語』ですから、この作品にもあらためて注目が集まっています。
しかし、どんな内容か関心はありながらも、読むことに大きなハードルを感じている人が多いのではないでしょうか。
一夫多妻や身分制度など、現代と価値観が違いすぎて理解できない。
古典の授業で読んだことはあるけれど、面白さがわからなかった。
『源氏物語』のキャラクターは光源氏くらいしか知らない。
そんなあなたにぜひ知ってもらいたいのが、『源氏物語』に登場するたくさんの女性たちの存在です。
『源氏物語』にはさまざまな性格、立場や考え方を持つヒロインが登場します。
素直になれない人もいれば、気の強い人、自由奔放な人、クールな人など、一人ひとりが個性的。
その中にはきっと、あなたの「推し」になる人がいるのではないでしょうか。
人間関係に悩んで出勤拒否!?作者・紫式部の人生観
彼女たちが生きる舞台は平安時代ですが、現代の私たちが共感できるところ、身近に思えるところも多いのです。
それは、作者の紫式部が私たちと同じような悩みを持っていたことからもわかります。
紫式部は「千年に一人の才女」と言われるので、雲の上の人みたいに思われがちですが、実際は私たちと変わりません。
物心つく前に実のお母さんを、若くして年子の姉や親友を亡くしました。
とても寂しい思いをしたことでしょう。
結婚した時には夫に「私って想像したよりいい女でしょ」と自慢します。
これをストレートに言ったら引かれてしまうようにも思いますが…。
一夫多妻の時代とはいえ、夫の浮気が続いて訪問が少なくなると、他の女性と同じく嫉妬で悩みます。
しかし、そんな夫が3年もせずに亡くなると、性格が変わるほどの衝撃を受けました。
また、宮仕えしても同僚とうまくいかず、しばらく自分の家に引きこもります。出勤拒否です。
さまざまな悩みや悲しみを経験した紫式部は、自分の心も他人の気持ちも世の中も深く見つめて、物語を書いていきました。
『源氏物語』ヒロインたちのドラマのような物語
ですから『源氏物語』のヒロインたちは、現代の私たちと同じようなことで喜んだり悩んだりしているのです。
たとえば、『源氏物語』には両想いの幼馴染みが登場します。
二人は成長するにつれ惹かれあっていくものの、父親同士がライバル関係にあるため引き裂かれてしまうのです。
対立する家の子ども同士が恋に落ちるところは、さながら平安版の「ロミオとジュリエット」という感じでしょうか。
光源氏の長男・夕霧(ゆうぎり)と、光源氏のライバルである頭中将の娘・雲居雁(くもいのかり)です。
二人がその後どうなるかは、ぜひ連載の中でご紹介したいと思います。
また、恋人ができないのもつらいけど、二人の男性から言い寄られたら…。
どうしても一人に決められず、結果、失踪し自殺未遂。
記憶も無くし倒れていたところを助けられ、最後には一人で生きていく、と周囲の反対の中、踏み出していく女性がいます。
千年前に書かれた『源氏物語』のヒロインの一人、浮舟(うきふね)の話です。
ほかにも光源氏と結婚し、苦労を重ねてよきパートナー、相談相手になっていった女性がいます。
しかし支え合っていても心の底までは理解し合えず、すれ違いばかり。人生の寂しさを感じるのです。
やがては完全に頼られきってしまい、「私がいなくなったらこの人どうなるかしら」と心配せずにいられません。
光源氏が最も愛したヒロイン・紫の上(むらさきのうえ)です。
長編小説で登場人物が多いのは困りものでも、女性たち一人ひとりのことを知ると、『源氏物語』の内容が少しずつわかってきます。
主人公の光源氏を取り巻くヒロインたちはとても魅力的な人ばかりですから、ぜひ知っていただきたいのです。
この中にあなたの推しはいる?個性豊かな20人
この連載では、源氏物語に登場する20人の女性たちを紹介していきます。
- 葵の上(あおいのうえ)
プライドが高く、ツンデレな、光源氏最初の妻 - 六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)
センス抜群のインテリ美人 - 空蝉(うつせみ)
秘めた恋心とあるべき姿の間で揺れる中流貴族の妻 - 夕顔(ゆうがお)
ミステリアスな魅力で男性を虜にする儚げな佳人 - 末摘花(すえつむはな)
一途さは誰にも負けない深窓の令嬢 - 朧月夜(おぼろづきよ)
自由な生き方を愛する情熱的で奔放なお嬢様 - 朝顔の姫君(あさがおのひめぎみ)
聡明で冷静沈着、独身を貫く才女 - 花散里(はなちるさと)
上手に悩み相談にのれる、心優しい癒し系の人 - 桐壺更衣(きりつぼのこうい)
儚げでいじらしい光源氏の母 - 藤壺(ふじつぼ)
何もかもに恵まれた、光源氏あこがれの女性 - 紫の上(むらさきのうえ)
可愛らしくて機転が利く理想のヒロイン - 明石の君(あかしのきみ)
家族の幸せを願って人生を歩む忍耐強い母 - 女三の宮(おんなさんのみや)
いくつになっても無邪気な箱入り娘 - 玉鬘(たまかずら)
物事に上手に対応できる容姿端麗なお姫様 - 秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)
一番安定している母親想いの高貴な人 - 雲居雁(くもいのかり)
幼馴染と恋に落ちた、明るく庶民的なヒロイン - 弘徽殿女御(こきでんのにょうご)
パワフルで頼りになるお局様 - 大君(おおいぎみ)
妹想いのひかえめで奥ゆかしい姉 - 中の君(なかのきみ)
人生の荒波にも前向きに対応する妹 - 浮舟(うきふね)
ドラマチックな人生を歩む最後のヒロイン
多くのヒロイン、一人ひとりに個性とドラマがあります。
あなた自身と、どこかで重なるヒロインが必ずいるはずです。
そうなれば、世界最古の長編小説、『源氏物語』も楽しく読めるようになるのではないでしょうか。
この連載でぜひ、あなたの「推し」のヒロインを見つけてみてくださいね。
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こちらの記事では、源氏物語のおおまかなあらすじを解説しています。
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