「親の自己肯定感を高めたい!」という人へ。明橋先生インタビュー(3)
――ここまで子どもの自己肯定感を育てるために、大切なことを聞かせていただきました。実は私もなのですが、自分の自己肯定感はどうかというと、高いとは思えない、低いんじゃないかと思います。そんな親が、子どもの心を育むことができるんだろうか、と思うのですが……。
明橋
その質問は、私が講演をする時に、講演の後に質疑応答の時間があると、ほとんどの会場で、必ず出る質問の一つなんです。
要するに、今の話を聞いて、子どもの自己肯定感を育てなきゃいけない、ということはよく分かった。
ところが話を聞いているうちに、親である自分の自己肯定感はどうか、と思った時に、決して高くない、むしろ低いことが分かってしまったと。
そんな親が、果たして子どもの自己肯定感を育てることが、できるんでしょうか、という、本当に切実な質問です。
ですから今は、子どももそうですが、親自身の自己肯定感も、決して高いとはいえないのです。
ですから保育士さんとか、子育て支援に関わる人が対象の講演では、私はいつも、「子どもだけでなく、親の自己肯定感を育ててあげてください」という話をしています。
子どもの自己肯定感を育てるうえで、親の自己肯定感もすごく大事なことなので、実は、今回の0歳から3歳の本にも、後半のほうは、親の自己肯定感を育てるにはどうしたらいいのか、ということを、かなり集中的に書いています。
それは、本当に絶対欠かせないことなので。
そういう方法をいくつか書いているんですけれど、その中からいくつか、かいつまんで言いますと、まず1つめは、周りの人たちとの間に適切に境界線を引く、ということです。
要するに「人は人」「自分は自分」ということですね。
――やっぱり周りの人の目は、とても気になります。
明橋
じいちゃんばあちゃんから、「おっぱいが足りないんじゃないの」とか「もっとしつけをちゃんと」とか言われると、やはりついつい、自分の育て方がいけないんじゃないか、とか思ってしまいます。
そうすると、そういう親のモヤモヤは、必ず子どもに行くわけです。
「あんたがしっかりしないから、こんなこと言われるんじゃないの」とかね。
もちろん、周りの人のアドバイスはありがたいことなんですけれど、その人が、子どものすべてを知っているわけでは決してありません。
また、子どもには、成長段階があるわけです。
例えば、1歳2歳の子どもが、周りに構わずぎゃーぎゃー泣く、というのは当然のことなわけで、しつけが悪いのでも何でもないわけです。成長のプロセスなんです。
そういうことを分からずに、周りから言われてしまうと、ついつい気にしてしまうけれども、ある程度、「あの人は心配して言ってくれているんだな」と思ってみたらいいと思うんですね。
「人はいろいろ言うけれど、この子はこの子でちゃんと成長しているし、以前できなかったこともできるようになっているし、大丈夫だ」と、境界線を引いてもらいたいな、ということですね。
やっぱりお母さんは、ついつい周りの目が気になりますよね?
――すごく気になります。ほかの子と比べてしまったり。あのお母さんはできているのに私はできない、とか……。
明橋
そうですよね。あのお母さんはあんなに優しそうなのに、私は何でこんなにイライラするんだろう、と思いますが、そんなことないんです。
最近のお母さんは、子どもを叱る前に、まずやることがあるんです。
窓を閉めるんですね(笑)。叱り声が近所に聞こえると、児童相談所に通報されてしまうから。
こういう話をすると、みんな「ふふふ」と笑うんです。ということは、みんな心当たりがある、ということです。みんなそうなんです。
ですから、自分だけじゃなくて、みんな同じなんだ、だから人と比べるのは意味がない、むしろ、以前の自分と見比べたら、成長した部分もある、と、自分の頑張っているところを、認めてほしいと思います。
実際、頑張っているんだから。
子育てをする、ということは本当に大変なことなんです。
頑張っている、その頑張りを認めてほしい。それは、うぬぼれでも何でもないです。
やっていることそのままを認める、というですね。
ついついキレてしまうのは、それだけ親御さんが、子育てを頑張っている証拠なんだ、ということです。ですからキレるのもOK!
――OKですか。うれしいですね~。
明橋
そうです。そういうふうに思っていただいたらいいと思います。
そういうことを、この本には書きました。
インタビューを終えて
ついつい自分を追い詰めてしまいがちなお母さんに、あくまで優しく、アドバイスしてくださる明橋先生の言葉は、癒やしです。
この本の中に、「子が宝なら、親もまた宝」と書いてあるページがあります。
明橋先生は日々、本当にそんな思いで診察、講演、執筆されているんだなぁと、お話を聞かせていただいて感じました。
⇒【インタビュー1】0歳から3歳が「心の土台」をつくる大事な時期!しつけ・勉強よりも大切なこと
⇒【インタビュー2】「言葉育て」が大事!自己肯定感を育てる7つの方法
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主な内容
●3歳までは、「自分は大切にされている」という気持ちを育む大切な時期
●0~3歳の心の育て方 抱っこ/話を聞く/まるごとほめる/……
●小さいときに、しっかり甘えた子がしっかり自立する
●なぜ、甘えはよくない、と誤解されているのか。「甘えさせる」と「甘やかす」の違い
●子どもの年齢に合わせたしつけ
●育児の困った 赤ちゃんが泣きやまない/かんしゃくがひどい/……
●5人に1人はひといちばい敏感な子(HSC)
●親の自己肯定感アップのためのアドバイス ほかQ&A
Q 子どもが小さいうちは、育児に専念したほうがいい?
Q 子どもが祖父母に甘えている場合、親は厳しくしたほうがいい?
Q 後追いがひどく、家事もできません
Q 「私も虐待をしてしまうかも……」と不安になります ほか