「eスポーツとゲームは違うんです」
そうハッキリ教えるのは、京都eスポーツ協会会長の堀川宣和先生。京都大学在学中から経済学を学び、マーケティングを研究するなかで「eスポーツ」に出会ったのだと言います。
現在は、大学でeスポーツを教え、中部地方を中心に大会を運営するなど、eスポーツの普及活動に取り組んでいます。また、2人の女の子と、ゲーム好きな男の子を育てるパパでもあります。
じゃあ、eスポーツとゲームって何が違うの?
ゲームが好きなら、親は口出ししないほうがいいの?
そんな初歩的な疑問に、わかりやすく答えていただきました。
eスポーツとゲーム、何がちがう?
のび太は野球をするけど、野球選手ではない
出典:Apex Legends™ メディア – EA公式サイト(https://www.ea.com/ja-jp/games/apex-legends/media#wallpapers)
人気ゲームのプレイヤー数を比べると
・PUBG(PlayerUnkown’s Battlegrounds)……4億人
・フォートナイト(Fortnite)……1億2500万人
・リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)……1億人
・エイペックス(Apex)……1億人
とも言われています。
ただし、これはあくまでゲームで遊んでいる人数で、eスポーツプレイヤーの数ではありません。
僕は大会に出て初めて、eスポーツプレイヤーなんじゃないかと思うんですよね。
例えば、野球で考えてみましょう。
『ドラえもん』では、のび太、ジャイアン、スネ夫がよく草野球をしています。でも、彼らは野球のスキルを磨きたくて集まっているわけじゃありません。友達と遊ぶために野球をしているだけだと思うんですよ。
それに比べて、『タッチ』や『ドカベン』は甲子園を目指すストーリー。こういう野球マンガに出てくる人たちは、選手ですよね。友達やライバルと切磋琢磨しています。
同じ道具を使っていても、向き合い方が違う。eスポーツとゲームの差はここだと思います。
eスポーツとゲームの違いは大会で勝利を目指すこと!
今は野球を例に挙げていますが、どのスポーツもプロがいて、プロを目指す人がいて、その下にはもっとライトにプレイする人たちがいるんですよね。
小さな頃から習っていた人、部活で何年も続けてきた人、お父さん世代には特にたくさんいることでしょう。でも、そのうちプロになった人は1%もいないわけです。
だからといって、打ち込んできた時間が無駄だった訳じゃありません。
野球やスポーツに関係する仕事に就いたり、学生時代に身に付けたコミュニケーション力を生かして、営業職で活躍したりする人もいます。
eスポーツの場合、のび太レベルは多いんですよ。それこそ他のスポーツより全然多い。ただ、この人達はeスポーツプレイヤーではありません。
日本の大人たちは、プロのプレイやeスポーツバトルを見たこともないんですよね。
遊びとしてプレイしている人しか見ていないから、eスポーツとゲームの違いがわからないし、親御さんからすると勉強のジャマ、アカンよってなる。
だけど、eスポーツも他のスポーツと同じで、プロになるかどうかではなく、一生懸命取り組むことに意味があるんです。
将来、プロゲーマーになる人はごくわずかでも、デジタル関連の企業やイベント会社、もっと新しい分野で活躍する人など、優秀な若者がたくさん現れることでしょう。
大会を目指してプレイするのはeスポーツ、それ以外は遊びというのが、僕の持論です。
そして、アマチュアが安心して参加できる大会を作っていこうとしているのが、僕たちeスポーツ協会の役割ですね。
ゲームの使い方を教えてあげるのが親の役目
多くの親御さんがお悩みのように、僕も子どもたちが何時間もダラダラとゲームで遊ぶことには反対です。放っておいたら日中問わず、寝る間も惜しんで遊んでしまう。これはもうeスポーツとは言えないですよね。
これはしょうがないことですが、人気のゲームは中毒性があります。そう作られています。
子どもに限らず、やりだしたら止まらない。本来ならば、大人になってから遊ぶべきだとまで思いますね。
ゲームは、スナック菓子と同じだと思うんですよ。子どもは好きだとしても、子どもにとって良い物ではないんです。
夕飯前、子どもがお菓子を食べたいと言ったらどうしますか?
きっと多くの親御さんはダメだというはずです。
ただ、それは、お菓子そのものが悪だからと注意するのではなく、タイミングが良くないからですよね?
ゲームに関しても同様、メリハリを教えるのは親の役目だと思います。
ゲームを遊ぶのは、1日1時間までにするとか、21時以降は触らないとか、ルールは絶対に決めた方がいいです。子どもにとって、あれほど楽しいものはありませんから、中毒の脅威から守ってあげてください。
時間をかけて取り組むのは、選手になってから
もしeスポーツを目指す気があるなら、その限られた時間で、どうすれば強くなれるのか考えると思うんです。
それでもやっぱりゲームが好きで、勝つことが好きで、大会の参加まで視野に入るようになったら立派なeスポーツプレイヤーです。親御さんは、その時に初めて制限を取り払って、温かく応援してあげて欲しいと思います。
詳しくは本に書きましたが、eスポーツとしてゲームをプレイする場合、大人たちが想像するような、身体や学力への悪い影響は起きないことがわかっています。
実際、プロ選手は1日10時間練習する人もいますし、どれだけ才能があったとしても、優勝を目指すのならば1日1時間では足りません。
ゲームそのものを悪者にするのは間違っています。真剣に取り組むようになれば、どんなスポーツより将来性がありますよ。
子どもと一緒にゲームをプレイしてみよう!
子どもが好きなゲーム、どんなゲームか知ってる?
eスポーツを応援するのも、ゲームのメリハリを教えるのも、やはり、親による理解が必要です。
まずはゲームを一緒にプレイすることが、親子にとって大切なことだと思います。
お父さんと子どもでキャッチボールをするようなものですね。
これは、普段ゲームをしない親御さんにとって、かなりつらいことだと思います。
まず操作がわからない、画面は常に目まぐるしく動いている、考えることだらけで頭はいっぱい、子どもの足を引っ張って怒られるかもしれない。本当につらいですよ。
でもお子さんは、そういうゲームを平気で楽しくプレイしているのも事実です。
親が想像している以上に、子どもは「ゲームへの嫌悪感」を受け取っています。
学校や塾でのストレス発散でゲームをしていても、親にダメと言われると、ストレスを解消できなくなってしまうんです。せっかく好きなゲームだったのに、悪いことをしているんじゃないかと感じてしまいます。
ゲームで遊ぶ時間は心置きなくのびのびとプレイできた方が、親子それぞれにとって嬉しいことだと思いませんか?
eスポーツは親子のコミュニケーションツール
いきなりプレイするのが難しい方は、親子大会の様子を見るだけでも、ゲームの印象が変わると思います。
「フォートナイト下手くそおじさん」こと、芸人の小藪一豊さんが主催している『GALLERIA presents 第2回 親子大会 Featuring Fortnite』の動画です。
全編は長めですが、1試合だけでも良いのでご覧ください。親子で協力し合う姿は、本当に感動しますよ。
eスポーツは、今の時代に最も適したコミュニケーションツールです。
ゲームがきっかけで、親子の会話が増え、他の話題も気楽に話せるようになったというのは非常によくある話です。また、引きこもりだった子が家族とご飯を一緒に食べられるようになったというケースもあります。
たった1つ、なんでもいいです。一緒にゲームをして、お子さんを認めてあげてください。
このアイテムどう使うの?
あの敵はどうやって倒すの?
次は何すればいい?
きっとわからないことだらけでしょうから、遊び方を教えてもらいましょう。
親から子どもに教えるコミュニケーションだけじゃなく、子どもから親に教えるコミュニケーションを取れるのが、eスポーツの魅力です。
まとめ:eスポーツを知れば子どもの気持ちがわかる!
- ゲームとeスポーツの違いは、大会を目指しているかどうか
- ゲームが面白いのは当たり前!子どもにメリハリを教えるのが親の役目
- 子どもとゲームを一緒にやってみよう!
子どもの心に寄り添うために、ゲームを知ることが1つの手段かもしれません。
ゲーム好きのお子さんを持つ方は、今からゲームの世界に飛び込んでみませんか?
今回、お話をいただいた堀川宣和先生の著作『子供の成長はeスポーツで飛躍する!』では、子どもがeスポーツに取り組むメリットが詳しく語られています。ゲームやeスポーツへのイメージがガラッと変わる1冊です。