一般的に月がいちばん美しく見えるのは、9月〜10月なのだそうです。
先日の中秋の名月も、ハッキリと鮮やかな月でした。

「名月を 取ってくれろと 泣く子かな」
(一茶)

背中におんぶされて、十五夜の月を欲しがる無邪気な子どもの姿が、目に浮かんできます。ほほえましい、心に残る名句ですね。

俳句や古典に、いろいろな表現をされている「月」。
『枕草子』には、こんな月の描写があります。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。

月のいとあかきに(第215段)

(意訳)
月がとても明るい夜に、牛車(ぎっしゃ)で川を渡りました。

車の中から、牛を見ていると、足で水面を蹴るたびに、美しい水玉が飛び散っています。

それはまるで、細かく割れた水晶が、月光を反射してキラキラ輝いているように見えました。とっても美しい光景でした。

(原文)

月のいとあかきに、川をわたれば、牛のあゆむままに、水晶などのわれたるように、水のちりたるこそおかしけれ。(第215段)

清少納言の意外な月見(『枕草子』第215段)の画像1

(『こころきらきら枕草子』木村耕一著 イラスト 黒澤葵 より)

美しさを見いだす感性

木村耕一さん、ありがとうございました。

名月の夜は、月の美しさを表現する人が多いと思います。
ところが清少納言は、意外なものに月光を感じ取って楽しんでいます。
とても繊細で敏感な感性によって、何でもないようなものにも気づいて感動し、人の何倍も心を弾ませていたことでしょう。

美しさを見いだす感性が『枕草子』には、散りばめられているようです。
古典は面白いですね。

意訳とイラストでよく分かる!

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清少納言の意外な月見(『枕草子』第215段)の画像2

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