暑い日々が続いています。
夏になると耳鼻咽喉科の診察室には「耳がかゆいです」という方や「耳がつまります」という方が多く来られます。
なぜでしょうか?
それは汗をかいたり、プールの水が耳に入ったりして、耳の皮膚が荒れやすくなるからなのですが、もう一つ原因があります。
それは、耳かきをするからです。
「え?耳かき、気持ちいいのに」と思われたあなた、要注意ですよ。
耳かきのやりすぎは禁物ですし、むしろやる必要はないともいわれています。
多くの人が誤解している耳ケアの意外な常識をご紹介します。
耳垢にも大切な役割がある
耳の穴(外耳道)は、手や足と同じ皮膚でできています。
皮膚からは常に垢がはがれ落ちているように、耳の穴でも垢がはがれ落ちています。それが耳垢の正体です。
耳垢は、基本的に外に押し出されていくようにできていますし、たった1日でたくさんたまるようなこともありません。
耳には自浄作用があるのです。
ですから、耳かきは基本的にはする必要はありません。
考えてみますと、耳かきをしている動物は人間だけなのです。
そもそも耳垢は、耳の中を適度に湿らせ、チリやホコリが中に入るのをブロックし雑菌の繁殖を防ぐ大事な役目があります。
風呂上がりの綿棒もNG? 耳かきのデメリットとは
自浄作用の備わっている耳をむやみやたらに耳かきすると、自浄作用が低下して、かえって耳垢が増えてしまいます。
そして耳の中を頻繁に触りすぎると、傷ができてしまい、感染の原因にもなります。
また、風呂上がりに綿棒を使うと、濡れた耳垢をどんどん奥へ押し込んでしまって、耳栓のようになることがあります。
アメリカの耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が2017年1月に、耳ケアの新ガイドラインを発表しました。
その概要は、以下の通りです。
- 耳掃除はやり過ぎないようにすること
- 綿棒のような細いものを耳に入れないこと
- 痛み、難聴、耳が詰まるなどの症状がある場合は、耳垢が原因とは限らないため、耳鼻咽喉科医に診てもらうこと
- ほとんどの人は耳掃除不要であるが、耳掃除が必要な体質の人は正しい手入れに個人差があるため、耳鼻咽喉科医に相談すること
家で耳掃除をするときのコツ
耳垢はどこでできるのかというと、耳の穴の入り口から半分までの場所です(下図を参照)。
ということは、奥の半分は掃除する必要がなく、耳の入り口に出てきた耳垢を払い出すだけでよいのです。
お子さんなど他の人の耳を掃除する場合も、見える範囲に耳垢があれば、それを細い綿棒を使って払い出すだけです。
「もっと奥はいいの?」と思われるかもしれませんが、見えない奥のほうを、無理にのぞき込んで穴掘りをする必要はありません。
奥に綿棒を入れても、耳垢はないですし、むしろ耳垢を押し込んでしまうことになります。
次のようなときは、無理せず耳鼻咽喉科を受診してください
- 耳の違和感がある
- 耳がつまった感じがなかなか取れない
- 固い耳垢が詰まっている
- また耳だれが出てきた
『子育てハッピーアドバイス 知っててよかった 小児科の巻 増補改訂版』の耳鼻咽喉科の章にも耳掃除について書いてありますので、ご一読ください。
まとめ
- 耳には自浄作用があり、基本的には耳かきをする必要はありません。耳垢にも雑菌の繁殖を防ぐ大事な役割があります
- むやみに耳かきをすると自浄作用が低下してかえって耳垢が増えたり、傷ができたりして、感染の原因になることもあります。また風呂上がりに綿棒を使うと、濡れた耳垢を奥に押し込んでしまうこともあるのです
- 耳垢ができるのは耳の穴の入り口から半分まで。耳掃除は耳の入口に出てきた耳垢を払い出す、それだけでOKです