四季の変化を楽しむ
11月に入り、紅葉の美しい季節になりましたね。
「秋深き 隣は何を する人ぞ」と詠んだのは松尾芭蕉。日本人は昔から、四季の変化を楽しんできたようです。
さて『枕草子』の第1段は「春はあけぼの」です。
この段は、皇后定子からの問いかけに対する清少納言の答えが記されています。
その問いかけとは。
「春、夏、秋、冬、それぞれの季節の中で、何がいちばん好きですか──」
型にはまった、平凡な答えでは、合格点をもらえないと知っている清少納言は、「春はあけぼの」と答えています。有名ですね。
では、秋は何と答えたのでしょうか。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。
「秋」は、夕暮れ。
(意訳)
「秋」は、夕暮れ。
真っ赤な夕日が、大空をだいだい色に染め、西の山に沈もうとしています。
こんな時間に、黒い烏が、あちらに3羽、4羽、こちらにも2羽、3羽と、急いで巣へ帰ろうと飛んでいるのを見てさえ、心にしみるものがあります。
まして美しい雁が、「く」の字に隊列を組んで飛び、空のかなたへ小さく消えていくと、ますます、夕暮れ時の寂しさが込み上げてきます。
太陽が沈んでから聞こえてくる風の音、虫の声に、秋の風情を感じるのはいうまでもありません。
(原文)
秋は夕暮。夕日のさして山のはいとちこうなりたるに、からすの寝所へ行とて、三四、二みつなど、とびいそぐさえあわれなり。まいて雁などのつらねたるが、いとちいさくみゆるは、いとおかし。日入はてて、風の音むしの音などいとあわれなり。
(『こころきらきら枕草子』木村耕一著 イラスト 黒澤葵 より)
「秋」の寂しさも
木村さん、ありがとうございました。
「秋の夕暮れ」といえば、もの寂しさを感じます。
「寂しい」気持ちは、ネガティブな感じがするので、見ないようにしたり、忘れるようにしたりしがちではないでしょうか。
しかし清少納言は、寂しさから目を背けるのではなく、真正面から見つめており、その素直さに共感します。
映画のような秋の夕暮れのシーンを、清少納言は文章で美しく表現しているなと思いました。
読書の秋に、一人しっとりと『枕草子』を読むのも、すてきな時間になりそうです。
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