新型コロナの影響で、ずっと自粛していた忘年会をやるのか、やらないのか。ニュースでは町の声が伝えられ、小規模でのマスク会食が勧められていました。今年は気をつけて、会食を楽しみたいですね。
その楽しいはずの会食で、酔った勢いなのか、けんかや争いごとが起きてしまうことも……。
人と争わないようにするには、どうすればいいのでしょうか。兼好さんは、ズバリ『徒然草』に書いています。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。
人と争いたくなければ、こうするしかありません
(意訳)
人と争わないようにするのが大切です。そのためには、自分を、ぐっと抑える必要があります。自分のことは後回しにして、なるべく相手を立てていったほうが無難です。
どんな遊びでも、勝負事を好む人の目的は、勝つことです。勝って、自分の腕前が人よりも優れていることを確認して喜んでいるのです。だから、負けた相手が、どんなに落胆しているかも分かっているはずです。それなのに、相手を負かし、嫌な思いをさせて楽しむのは、人の道に背いています。
親しい間柄で冗談を言う時も、何とか相手をだまして、自分の知恵が勝っていることを示して楽しんでいるのです。これもまた、礼儀にかなっていません。
だから、ちょっとした遊びや酒宴の時の冗談が原因となって、長い間解けない恨みが生じる例がとても多いのです。
これは皆、人との競争を好む心から起きています。
【原文】
物に争わず、己をまげて人に従い、我が身を後にして、人を先にするにはしかず。
よろずの遊びにも、勝負を好む人は、勝ちて興あらんためなり。己が芸の勝りたることを喜ぶ。されば、負けて興なく思ゆべきこと、また知られたり。「われ負けて、人を喜ばしめん」と思わば、さらに遊びの興なかるべし。人に本意なく思わせて、わが心を慰まんこと、徳にそむけり。むつましき中に戯ぶるるも、人を謀り欺きて、己が智の勝りたることを興とす。これまた礼にあらず。されば、はじめ興宴よりおこりて、長き恨みを結ぶたぐい多し。これみな、争いを好む失なり。
(第130段)
(『月刊なぜ生きる』令和3年4月号「古典を楽しむ」 意訳・解説 木村耕一 イラスト 黒澤葵 より)
褒め合う忘年会に
木村耕一さん、ありがとうございました。
昔も今も「人に勝りたい、人より上に立ちたい」という思いは変わらないのですね。お酒が入ると余計に、その気持ちが前面に出てしまい、お互いにぶつかってしまうと思いました。
兼好さんの言われるとおり、「相手を立てること」が大切なんですね。
子どもの頃は、何かできるようになると褒めてもらいましたが、大人になると、できるのが当たり前で、褒めてもらえなくなります。逆にできないと叱られて、へこみますよね。
なかなか褒められる機会が少ない大人同士、忘年会では、相手のよいところを褒め合って、お互いに気持ちよく過ごしたいですね。
兼好さん、生きるヒントをありがとうございました。
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