裁判所から、身に覚えのない手紙が届いたなら、あなたはどうされますか?
身に覚えのない上に、忙しい方だと、対応を忘れてしまうかもしれません。
そんな方にぜひ知っておいていただきたいのが「支払督促」という言葉。「支払督促」のこわさについて、実際に起こったことを踏まえ、弁護士の小倉悠治先生に解説いただきます。
支払督促という制度をご存じでしょうか。
請求する側にとっては簡単でよい制度 なのですが、支払う側からすると、無視した場合、たとえ事実と異なった要求でも通ってしまうという、おそろしい制度なのです。
簡易裁判所からの「身に覚えのない」内容の手紙を無視し続けていった結果…
こんなことがありました。Aさんの家に一通の手紙が届きました。送り主は東京 簡易裁判所。開けてみると、「10年以上前にお金を貸したのに返さないから返せ」という内容の書類でした。
Aさんはずいぶん前のことで覚えていなかったこと、 そして仕事が忙しかったことから、無視してしまいました。
その後、再び裁判所から手紙が届きましたが、それも無視してしまいました。
すると、しばらくして 給料を差し押さえられてしまったのです。
さて、何が起きたのでしょうか。
裁判所から届いた書類は絶対に無視しない 放置すれば“強制執行”される
裁判にも種類があり、もっとも簡単なものが支払督促です。
これは、裁判所に一定の事項を書いた書類を提出すれば、通常の裁判と異なり、書類審査だけで手続きできるものです。これにより、裁判所から支払督促が郵送されます。
裁判所から届いた書類を2週間放置してしまうと、相手は仮執行宣言の申立てということをします。裁判所が内容を審査して、問題がなければ、仮執行宣言付支払督促を発送します。
仮執行宣言付支払督促が手元に届き、さらに2週間放置すると、今度は相手は強制執行をすることができるのです。
もちろん、裁判所から書類が届いた段階で「異議申立て」というのをすれば裁判所で審理が行われますので、そこでいろいろな反論ができます。
ところが、無視し続けていると、相手の主張が全部認められてしまうのです。
仮に、相手の言っていることが事実と異なっていても、全部認められてしまうのです。
Aさんの場合であれば、10年以上前の借金ですから、もし1回も返していないのであれば、時効であり、返す必要のないものでした。しかし支払督促が確定してしまえば、時効は10年間伸びてしまいます。
もし裁判所から書類が届いた場合には絶対に無視せず、弁護士に相談することをお勧めいたします。
まとめ
- もっとも簡単な裁判が「支払督促」です。裁判所からの支払督促を無視し続けると、強制執行により給料が差し押さえられることもあります。相手の主張が間違っていても、その言い分も認められてしまいます
- 裁判所からの書類は絶対に無視せずに、弁護士に相談するなど、処置をしましょう