日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #163

  1. 人生

【イソップ物語】うろたえたライオン〜不確かな声に惑わされない

「10年に1度の最強寒波が到来」と報道されています。

夜、休もうとしたら、玄関のドアが、「ガタガタ、ガタガタ」と音がするのです。「もしかして、強盗?」と思いましたが、玄関に行くのも怖い。布団に入ったまま、どう逃げるかをシミュレーションしているうちに、寝てしまいました。

寒波の影響なのか、風が強かっただけのようです。

正体が分からないと、どんどん不安が大きくなりますよね。

イソップ物語に、こんな話がありました。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。

うろたえたライオン

広い草原に、真っ赤な夕日が沈みかけています。
一頭のライオンが、沼の近くを歩いていました。

すると、
「グゥオー、グゥオー」という声が聞こえてきました。
沼の中に、何かがいるのです。

「グゥオー、グゥオー」

その声は、だんだん大きくなります。
大地を震動させるように響き渡るのです。

【イソップ物語】うろたえたライオン〜不確かな声に惑わされないの画像1

ライオンは、
「不気味な声だ! どんなやつが隠れているのだろう」
と緊張し、身構えました。

見えない敵を前にすると、想像が膨らんでいきます。

「あの声から察するに、よほど口が大きいに違いない」

「これまでに、見たこともない巨大な生き物だろう」

「今、戦って勝てるだろうか」

心がひるんだ、その時です。

ガサガサッと、草むらが動きました。

「来たぞ!」

ライオンは、跳ぶように後ろへ下がります。

やがて、平然とした顔つきで、沼から出てきたのは、
一匹のカエルだったのです。

【イソップ物語】うろたえたライオン〜不確かな声に惑わされないの画像2

「アレッ……」

拍子抜けしたライオンは、

「百獣の王ともあろうものが、耳だけで想像して、うろたえるとは……」

と言って、恥ずかしそうに去っていきました。

不安をあおるような情報が、世の中にあふれています。

無責任な非難や、うわさも、たくさん流れています。

耳から入る情報だけで、うろたえたり、怒ったりするのは愚かなことです。

【イソップ物語】うろたえたライオン〜不確かな声に惑わされないの画像3

(『月刊なぜ生きる』 令和2年11月号「イソップ物語 人生にこんな場面ありませんか?」 文 木村耕一 絵 黒澤葵 より)

不確かな声に惑わされない

木村耕一さん、ありがとうございました。

百獣の王ライオンも、正体が分からなくて、うろたえてしまいました。

不確かな声に惑わされないためには、正しく知ることが大事なのですね。

無責任な情報に流されないで、生きていきたいなと思います。

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