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催眠商法(SF商法)とは?弁護士の教える被害例・適切な対処法

高齢者をねらった悪徳商法が後を絶ちません。

今回取り上げる事例は、高額商品の購入をあたかも「いい買い物をした」と思わせる“催眠商法”。

もしあなたのお母さんやお父さんが高額商品を買わされてしまったら、どう対処すればいいのでしょうか。

適切な対処法を、消費者被害事件に詳しい村上覚朗弁護士にお答えいただきました。

相談内容

母が50万円もする布団を買ってきました。

キャッチセールスでイベント会場に誘われたようで、「いい買い物をした」と言っているのですが、とても50万円もするものとは思えません。どう対応すればいいでしょうか。

被害額は500万円以上!高齢者をねらった「催眠商法」

村上弁護士によるご回答

高齢者の方が次々と高額な商品を買わされる悪質商法の代表例が催眠商法。主催していた団体の名前にちなんで「SF商法」ともいわれます。

催眠商法とは、まず駅前の街角で「粗品を無料配布する」などと言って、それを餌に空き店舗などの会場に人を集めて、最初は日用品などをただ同然で配ります(希望者に「ハイ!ハイ!」と挙手させることもあって、「ハイハイ商法」ともいわれています)。

雰囲気を盛り上げた後で、業者が本当に売り込みたい化粧品や健康器具、布団など高額な商品(しかも市価よりもはるかに高額)を展示して、それがさもお買い得かのように商品説明を行います。

すると会場の高揚感と勢いと錯覚で、いわば催眠状態となった来場者はそれらの高額な商品を購入させられてしまう、という商法です。

具体的には、以下のような被害事例が国民生活センターでも紹介されています。

「商品の宣伝を聞いて無料で商品がもらえる』と知人に誘われ会場に出かけた。

販売員の話が楽しく何度か通っていたら、2カ月の間に、布団や磁気治療器、下着などの購入を次々に勧められ契約してしまった。

自分だけ小部屋に呼ばれて勧誘されたり、「あなたのため」などと言われたりして、断りきれず買ったこともある。

購入時は頭金の支払いだけなので高額だという意識はなかったが、「場所を移転する。残額を支払って」と言われ初めて、総額が500万円以上だと分かった

生命保険を解約し、貯蓄と併せて支払った。商品を返品するので返金してほしい。

(80歳代・女性)

粗品をきっかけに通っていたら、2カ月間で500万円の契約(見守り情報)_国民生活センター より引用

まずは落ち着かせる!催眠商法への対処法

高齢者が長期間通い続けることで次々と高額な商品を買わされるという、さきほどの被害事例のように、当の本人はいわば催眠状態のままで、その自覚がないこともあります

お母さん本人は「いい買い物をした」と言われていますが、本当に必要な布団で、それが値段に見合った布団でしょうか。またどのように支払うつもりでしょうか。

必要も価値もなく、支払う余裕もないのに、お母さんが高額な布団を買ってこられたのであれば、催眠商法に引っかかっている可能性が高いと考えられます

それらの点について、あなたがお母さんに話をして、お母さん自身にいわば催眠状態から覚めてもらわなければなりません

その上で、お母さん本人も布団の購入を取り止めたいと思われて初めて、「では業者に対してどのように対処するか」という話となります。

原則として、一度結んだ契約をなかったことにするのは簡単ではありません。

しかし訪問販売など特定の消費者契約等の場合、契約書面等を受け取った日から(その日を含めて)8日以内であれば、無条件で契約の解除(または申込の撤回)をすることができます

これをクーリングオフといい、頭を冷やしてやっぱり買うのを止めます、という制度です。

このお母さんの場合は自宅への訪問販売ではありませんが、キャッチセールス(路上等で呼び止められて店舗等に同行させて販売)で誘われ、また、おそらく販売目的も隠してイベント会場に誘われたと思われます。

その場合、法律上は訪問販売に該当(特定商取引法)しますので、クーリングオフを使うことができます。

8日以内なら全額返金可能!クーリングオフの方法

次にクーリングオフの方法についてです。

クーリングオフをする場合には、契約書面等を受け取った日から8日以内(クーリングオフ期間)に、その契約を解除(または申込を撤回)する旨を書面に書いて、コピーを取った上で、簡易書留か特定記録郵便で販売業者に発送します。

クレジット契約をしている場合は、クレジット会社と販売業者の両方に出してください。

記載例が、高槻市消費生活センターなどでも紹介されています。

はがきの書き方の参考のイラスト

 

覚えてください!クーリング・オフ制度/高槻市ホームページ より引用

クーリングオフを使うと契約は解除され、なかったのと同じことになりますから、代金を支払う必要がなくなります

もし商品代金を支払い済みであれば、代金全額の返金を請求することができます。

クーリングオフの場合は違約金も支払う必要がありませんし、商品の返品費用も販売業者負担です。

ということでお母さんに話をして、お母さんからクーリングオフするようにしてもらうのがよいでしょう。

契約書面等に不備があったり、そもそも契約書面等を受け取っていないなどの場合には、契約日から8日を経過していても、クーリングオフが可能なことがあります。

よく分からない場合は、最寄りの消費生活センターに相談しましょう

電話で188番(「いやや!」(関西弁)、消費者ホットライン)にかけると、最寄りの消費生活相談窓口につないでくれます。

もちろん弁護士に相談することも可能です。

まとめ

  • 会場の高揚感や勢いなどで催眠状態にさせて高額商品を買わせるのが「催眠商法」です。総額500万円以上を支払った事例もあります
  • 家族が「催眠商法」に引っかかった可能性がある場合、まず、催眠状態から目覚めさせなければなりません。その上で商品購入から8日以内であれば無条件で契約が解除ができます(クーリングオフ制度)
  • クーリングオフは違約金も支払う必要がありませんし、商品の返品費用も販売業者負担です。制度の利用についてよく分からない場合は最寄りの消費差生活センターや弁護士に相談をしましょう
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