日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #180

  1. 人生

『徒然草』からの生きるヒント〜みんなと一緒にいるのに、なぜ、「独りぼっちだな」と感じるのか(徒然草 第12段)

天気予報で、最高気温30度超えが並ぶようになりました。いよいよ夏本番です。

夏の風物詩といえば、花火。今年は4年ぶりに、花火大会を開催する所が多いそうです。楽しみですね。

ところで、花火大会に、家族や友だちと出かけていって、盛り上がったあとの帰り道、ふと、なんだか寂しい気分になることはありませんか。みんなと一緒にいるのに、なんだか孤独を感じる……。
私だけかなと思っていたら、『徒然草』に、こんな一段がありました。木村耕一さんの意訳でどうぞ。

みんなと一緒にいるのに、なぜ、「独りぼっちだな」と感じるのか

(意訳)
真の心の友を、持っていますか。
よく気の合う人と、しんみり語り合い、楽しかったこと、つらいこと、自分のこと……、何でも心置きなく話せたら、どんなに癒やされるでしょうか。

でも、そんな人は、いるはずがないのです。
だから、人と話をする時は、相手に合わせるようにし、ぶつからないように心がけていく必要があります。どんなに話し相手が多くいても、まるで独りぼっちでいるように感じるのは、そのためなのです。

何か話し合う時に、「私は、そうは思わない」と反論したり、「こうだから、こうなるのだ」と、とことん本音で議論したりできれば、心の寂しさも慰められるでしょう。しかし、実際には、どうでもいい内容なら合わせられますが、「真実の心の友」というには、はるかに遠い会話しかできません。本当に、やりきれませんね。わびしい思いがします。

(原文)
同じ心ならん人と、しめやかに物がたりして、おかしきことも、世のはかなき事も、うらなくいい慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじけれど、つゆたがわざらんとむかいいたらんは、ただひとりある心地やせん。(第12段)

(解説)
お釈迦(しゃか)さまは、「人間は、独りぼっちの旅をしているんだよ」と教えられています。経典には
独生独死(どくしょうどくし。独りで生まれ、独りで死んでいく) 
独去独来(どっこどくらい。独りで来て、独りで去っていく)
と記されています。
兼好法師は、「一緒に笑い合っていても、真の心の友はいないなあ、寂しいなあ、お釈迦さまが教えられたとおりだなあ」と、ここでつぶやいているのです。

『徒然草』からの生きるヒント〜みんなと一緒にいるのに、なぜ、「独りぼっちだな」と感じるのか(徒然草 第12段)の画像1

(『こころ彩る徒然草』より 木村耕一 著 イラスト 黒澤葵)

真の心の友だち

木村耕一さん、ありがとうございました。独りぼっちだな、寂しいなと感じるのは、真の心の友がいないからなんだと思いました。
「あの人には、なんでも言える」と思っても、やっぱり、言えるところまでしか言えないんですよね。
時代は変わっても、人の心は変わらないものだなと感じました。

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今回ご紹介した『こころ彩る徒然草』には、兼好さんの生きるヒントが詰まっています。こちらから、試し読みができます。