推しが見つかる源氏物語 #14

  1. 人生

紫の上は源氏物語の王道ヒロイン!3人のライバルとの関係を解説

今回は、光源氏を長年支え続けた紫の上(むらさきのうえ)を紹介しましょう。
光源氏から最も愛され、源氏物語の女主人公と紹介されることもある女性です。

藤式部(とうしきぶ)と呼ばれていた作者が紫式部と言われるようになったのも、紫の上の名前が由来ではないかという話もあります。

容姿や教養、人柄や振舞いにおいて最も理想の女性と評価され、まさに王道のヒロインと言えるかもしれません。
そんな紫の上の魅力を2回に分けて書いていきたいと思います。

紫の上は源氏物語の王道ヒロイン!3人のライバルとの関係を解説の画像1

若紫の登場!藤壺にそっくりな女の子

幼い頃の紫の上は若紫(わかむらさき)と呼ばれています。
彼女の初登場は、18歳の光源氏が療養中の北山で垣間見(かいまみ)する場面です。
古典の教科書などにもよく出てくるので、知っている人が多いかもしれません。

10歳くらいだろうか、白い下着に山吹襲<がさね>の着なれたうわぎを着て走ってきた女の子…成人したら一際美しくなるだろうと思える可愛い容姿である。髪は扇を広げたようにゆらゆらとして、泣き腫らした顔は、こすって真っ赤になっている。

【原文】
十ばかりにやあらんと見えて、白き衣<きぬ>、山吹などのなれたる着て、走り来たる女子<おんなご>、…いみじくおいさき見えて、うつくしげなる容貌<かたち>なり。髪は扇をひろげたるようにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。

まだ桜咲く北山で、山吹色のうわぎを着た、10歳くらいのとても可愛い女の子が走ってやって来るのです。
源氏だけではなく読者も釘付けになる、鮮烈なデビュー場面ですね。

紫の上は源氏物語の王道ヒロイン!3人のライバルとの関係を解説の画像2

「雀の子を犬君(いぬき)が逃がしたの。せっかく大事にしていたのに」と。
女の子は近くにいた尼君に訴えますが、「なんて子どもっぽいことばかり…」と尼君にたしなめられています。

光源氏は、恋焦がれていた藤壺にそっくりな少女を見て息を呑むのでした。
藤壺について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。

まだ幼い若紫への想い

少女は尼君の亡き娘と、藤壺の兄・兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)の間に生まれた姫君でした。
藤壺の姪にあたる子ですから、そっくりなのも当然です。

若紫の母は正妻から嫌がらせを受け、思い悩んで亡くなったらしく、祖母の尼君が育てていました。
源氏は若紫をぜひ自分の手元で育て、将来は妻にしたいと強く願います。

そこで、尼君の兄の僧都(そうづ)に若紫を引き取りたいと伝えました。
光源氏は若紫との結婚を前提に言っていることが分かるので、まだ幼い子どもなのにと僧都も尼君も呆れるばかりで、まったく相手にしません。
 
若紫といえば、幼心に光源氏を素晴らしい方だと思っていたようです。
「お父さまより立派な方だわ」と言ったり、女房が「それなら、あの方のお子になったら」というとうなずいたり…。
人形遊びの折などには「源氏の君」の人形を作って大切にしていました。

若紫を引き取った光源氏

光源氏は療養を終えて都に帰ったあとも若紫を忘れられず、尼君たちや若紫あてにも文を送ります。

しばらくして、尼君は患っていた病により、次第に弱っていきました。
尼君は、光源氏の若紫への想いに戸惑っていたものの、若紫が成人したときには光源氏に後見してもらいたいと願っているようでもありました。

ほどなく尼君が亡くなります。
若紫は悲しくてたまらず、幼心にも胸がふさがれる思いでした。
 
服喪の期間が過ぎて、若紫のもとに光源氏が訪ねてきます。
亡き尼君は、孫娘が正妻からいじめに遭わないか心配して、父の引き取りを拒んでいたと乳母から聞きました。

翌日、その父親が邸を訪れ、「明日にも若紫を引き取りたい」と言ってきたではありませんか。
家来から知らせを受けた光源氏は、直ちに動かねばと思ったのでしょう。
明け方に若紫の邸を訪ね、無心に眠る姫を起こし、抱き上げて車に乗せました。

若紫は様子が変だと気づいて泣き出しますが、乳母とともに光源氏の邸宅へと向かうのでした。

二条院での光源氏との日々

若紫は光源氏の邸・二条院に迎えられます。
不安いっぱいだった姫は、翌朝には風情のある立派な邸宅や、うつくしい絵、おもちゃなどの光源氏の心尽くしに気持ちが和んでいきます。

源氏はさっそく若紫に手習いを教え、ともに人形遊びもするのでした。
若紫はやがて光源氏に慣れ親しみ、彼が帰ってくると真っ先に出迎え、素直に源氏の懐に抱かれます。

父娘、兄妹にも似た温かな情愛が通い合うのに時間はかかりませんでした。
夫婦ではないにせよ、源氏は姫が可愛くて仕方ありません。
源氏は気持ちが沈んでいても、可憐で愛嬌のある姫と語り合うと気が紛れました。

一緒に箏の琴を演奏すると、彼女はもの覚えが早く、難しい調子でも一度で習得するのです。
源氏は、何につけても才能があり理想通りだと嬉しく思いました。

美しく成長した若紫

若紫は、月日とともに美しく成長していきます。
愛嬌もあり、利発な性格も目立ってきました。

光源氏には葵の上(あおいのうえ)という正妻がいたのですが、男の子を出産してまもなく、急に亡くなります。
源氏は、葵の上の実家である左大臣邸に籠って喪に服します。

何か月かして、光源氏が二条院に帰ってきました。
邸の人々はみな心待ちにしていました。

若紫に「会えなかった長い間に、びっくりするほど大人っぽくなりましたね」と語りかけると、恥ずかしそうに横を向きます。
その姿は非の打ち所がなく、藤壺そっくりです。

光源氏はそろそろ男女の契りを結んでもいいのではないかと考え始めます。
結婚を匂わすことも話してみるものの、姫にはさっぱり何のことかわかりませんでした。

孤児同然だった若紫の結婚

その後、若紫は光源氏と夫婦として結ばれます。

光源氏は、部下に命じて三日の夜の餅(みかのよのもちい)、新婚3日目の祝いの餅を用意させ、少しでも正式な結婚に近づけようとしました。
また、若紫の父にも知らせようと、女子の成人式である裳着(もぎ)の準備も進めるのでした。

もしも若紫が父親に引き取られていたら、正妻にいじめられていたことでしょう。
光源氏の心遣いに、乳母は泣かずにいられないくらい有り難く思うのでした。

若紫の父は、かつての帝の子どもですから身分は高いのです。
彼女はその娘でありながら、父から大切にしてもらえなかった姫でした。
同じような立場にあった朝顔の姫君とその点が違います。

孤児同然の境遇とも言える若紫が、天下一の貴公子、光源氏の正妻格の女性となったことは、世間から見れば非常に幸運なことでした。

若紫が受けた衝撃

では、当の若紫はどのように感じていたのでしょうか。

本当の夫婦として結ばれた日、彼女は、父とも兄とも頼りにする光源氏の驚くべき変貌にあまりにも大きな衝撃を受けていました。
翌朝、枕元には源氏からの文が置かれています。

あやなくも 隔てけるかな 夜<よ>をかさね さすがに馴れし 夜の衣<ころも>を
(どうしてあなたと何もない関係でいたのでしょう。幾夜も幾夜も、親しく夜の衣を共にしていたのに)

若紫は悔しくて悔しくてたまりません。
こんないやらしい心があるとは知らず、「何の疑いもなく信じきっていたとは…」と。

昼頃、源氏がいつまでも寝室から出てこない若紫の様子を見にきます。
彼女はますます着物を引きかぶって寝たままです。
彼が「どうして何も言ってくれないのですか。意外に冷たい方だったのですね」と着物をはがすと、若紫はびっしょり汗をかいていて額の髪も濡れていました。

源氏はいろいろ機嫌をとるけれども、若紫は心底からひどいことだと思っているので、まったく返事をしません。
源氏の歌にも当然、返歌はありませんでした。

光源氏は須磨へ…近づく別れの日

思いもよらぬ結婚をした紫の上も、徐々に世間の常識を理解し、妻としての自覚をもって光源氏を支えていきます。

ところが、光源氏が20代前半のとき、大きな事件を起こしてしまいます。
謀反の罪を着せられて、無位無官となり、自ら須磨へ謹慎することを決めました。

事件の詳細については、こちらの記事で詳しく書いています。

紫の上の嘆きや悲しみは、別れの日が近づくにつれて深くなります。
何年という期限がある旅ではありません。

しかも、無常のこの世には何があるかわからないのです。
「もしかしたら、永遠の別れになるのでは…」と、紫の上は不安にかられます。

紫の上が頼りにできるのは光源氏一人です。
一緒に須磨へ行きたいのですが、どうしても無理だと言い聞かされました。

翌朝、痩せた面影を鏡に映す源氏の姿を、目に涙を浮かべてじっと見つめずにはいられません。

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光源氏は紫の上をいじらしく思い、次のように詠みます。

身はかくて さすらえぬとも 君があたり 去らぬ鏡の 影は離れじ
(我が身はこうして流浪の身となっても、あなたのそばにある鏡に映ったこの影は離れませんよ)

紫の上はこう応えました。

別れても 影だにとまる ものならば 鏡を見ても なぐさめてまし
(お別れしても影さえとどまるのならば、鏡を見て心を慰められるでしょうが…)

彼女は柱の陰に隠れて涙を拭うのでした。
源氏は、やはり今まで出会った女性たちの誰とも比べられない女性だと心打たれます。

妻としての役割を果たす

旅立ちの日、紫の上は光源氏と語り合って過ごします。
夜更けてから出発するのが旅立ちの常でした。

光源氏は、

生ける世の 別れを知らで 契りつつ 命を人に 限りけるかな
(生き別れがあるとは思いもせず、命ある限り別れまいとあなたに何度も約束しましたね)

と口にします。
紫の上は次のように詠みました。

惜しからぬ 命にかえて 目の前の 別れをしばし とどめてしがな
(惜しくもない私の命にかえて、今この別れを少しでも引き止めておきたい)

須磨に旅立った源氏からは、五月雨の頃に手紙が届きます。
紫の上は手紙を抱きしめたまま、起き上がることもできずに源氏を恋しく思いました。

源氏の弾き慣らした琴や脱ぎ捨てた衣の香りが、亡くなった人の形見のように思えます。
須磨に送る夜具を準備していても源氏の面影ばかりが浮かんでくるのです。
源氏への返事はとくに心こもったものでした。

浦人の しおくむ袖に くらべ見よ 波路へだつる 夜の衣を
(浦人の塩を汲む袖のようだという、あなたの涙で濡れた袖を私の衣と比べてみてください、波路を隔てて毎夜泣いている私の衣と)

紫の上がお見舞いにと源氏に送った着物の色合いも仕立て具合も、たいそう素晴らしいものでした。
紫の上が何ごとにおいても見事な腕で、理想的な女性になったことを思うと、源氏は彼女に会えない今の境遇をひどく残念に思います。

光源氏は邸(やしき)や領地の管理を紫の上にゆだねていました。
彼女は嘆きながらも女房たちをまとめ、光源氏の留守を守っています。
彼女の人柄からか、源氏についていた女房たちも誰ひとり二条院から出ていく者はいませんでした。

当時では珍しいことです。
主人の光源氏がいつ帰京するかわからない中、もっと有望な働き口を探して出ていくことも可能でしたから。

紫の上と3人のライバルたち

立派に妻としての役割を果たし、光源氏からも愛されていた紫の上でしたが、彼の浮気癖にはたびたび悩まされます。
紫の上にとって、とくにライバルとなった女性を3人ご紹介しましょう。

➀明石の君【紫の上の衝撃度:★☆☆】

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光源氏は須磨へ旅立ってしばらくしてから、明石へ移ります。
都で待っていた紫の上のもとに、彼から手紙が届きました。
手紙には、明石の君という女性と結ばれたという報告が書かれているではありませんか。

彼は、紫の上に隠し事をしたくないという思いから、正直に書いてきたのです。

「今までも浮気沙汰であなたに嫌な思いをさせ、思い出すと胸が痛むのに、また不可解なつまらない夢を見てしまいました。この告白で隠し事をしない私の気持ちはわかると思います。あなたへの変わらぬ愛を誓ったことには背いていません。

しおしおと まずぞ泣かるる かりそめの みるめは海士<あま>の すさびなれども
(あなたを思いさめざめと泣いています。かりそめに他の女と逢ったのは海士の戯れにすぎないけれども)

紫の上は素直な書きぶりで返事をし、手紙の終わりに歌を添えました。

うらなくも 思いけるかな 契りしを 松より波は 越えじものぞと
(疑うことなく信じていました、約束したのですから。<何があっても>末の松山を波が越えることはないように、心変わりはないものと)

身分は紫の上の方がずっと上ですから、妻の立場が脅かされることはありません。
ただ、光源氏を想って待っていた彼女にとってはショックだったでしょう。

さらには、光源氏が都へ帰ってからしばらくして、明石の君が女の子を出産したと告げられます。
「あなたでないのは残念だ。親として見捨てることもできない。憎むのではないよ」と。

紫の上は顔を赤くして、「いやですわ。自分の心が嫌になります。嫉妬することを私たちはいつ覚えるのでしょう」と恨み言を言いました。

光源氏は、誕生した姫君のことで明石の君と手紙のやりとりをしたり、都の近くに明石の君が移ってくれば、そわそわして出かけていきます。
紫の上は不満を隠さず、そのたびに拗ねるのでした。

******

しかしやがて、光源氏は紫の上に「明石の姫君をあなたが育ててくれないか」と相談を持ちかけます。
明石の君のもとで育てるよりも、身分の高い紫の上が母となったほうが姫君のためにもよいと考えたからです。

紫の上は幼い子どもが無性に好きだったので、引き取って大事に育てたいと快く引き受けます。
姫君を二条院に迎えると、最初は実母の明石の君や親しんできた人を探して泣いたりしていたものの、紫の上にすぐになついて慕うようになりました。
紫の上も心から喜んでいます。

明石の君を訪ねる源氏に恨み言を言うこともなくなりました。
愛らしい姫君に免じて大目に見ているのです。
自分が明石の君の立場なら、娘が恋しくておかしくなるだろう、と思います。

姫を抱き上げて戯れる姿は実の母子のようで、だれもがつい見つめてしまうのでした。

➁朝顔の姫君【紫の上の衝撃度:★★☆】

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明石の姫君を引き取った翌年の秋頃から、光源氏は朝顔の姫君に恋慕するようになります。
世間では「とてもお似合いの二人」と噂しています。
源氏をよくよく観察すれば、心ここにあらずの有り様でした。

紫の上は、「朝顔の姫君は私と同じような身分といっても世間の人望は格別な方。噂どおりになれば、私はどんなにみじめになるだろう」と悩みます。
明石の君のときは恨みごとを口にできましたが、今は心から苦しんでいるため、かえって顔色にも出せません。

源氏は、朝顔の姫君のもとへ出かける際、紫の上に外出の挨拶だけはします。
紫の上は明石の姫君をあやしながら、源氏の方を見ようとはしません。

言い訳を並べる源氏に、「見慣れ過ぎると悲しいことが多くなりますね」とだけ言いました。
「長く一緒にいる私のことが鬱陶しくなってきたのですね」という気持ちでしょう。
雪の光に映える華やかな姿を見送りながら、これ以上源氏が離れていったら堪えられそうもない、と思います。

帰ってこない日が続き、紫の上はこらえていても、恋しくて恋しくてたまりません。
ようやく顔を合わせた日、源氏は紫の上の髪をなでながら「どうしたの」と語りかけ、邸を留守にしていたことや朝顔の姫君の件について、あれこれ弁明をしました。

また、これまで関わりのあった女性たちについて語るのを聞いた紫の上は、

氷閉じ 石間<いしま>の水は ゆきなやみ 空澄む月の かげぞながるる
(氷が張って、石の間の水は流れかねていますが、空に澄む月の光は西へと流れていきます。私は閉じこめられていますが、あなたはどこへでも行けるのですね)

と詠みました。

朝顔は結局、源氏の求愛を拒みとおしたので、紫の上は事なきを得るのでした。

➂女三宮【紫の上の衝撃度:★★★】

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光源氏が頂点を極め、40歳を迎える頃、朱雀院は愛娘・女三宮の婿選びをしていました。
候補として源氏の名前が挙がっているという噂を聞いても、紫の上は「朝顔の姫君の時も結局何もなかったわ」と楽観的な気持ちでいたのです。

ところが、女三宮の源氏への降嫁(こうか:帝の娘が皇族以外の男性に嫁ぐこと)が決定してしまいます。
今までの女性たちと違い、帝の愛娘、最高の身分の姫君です。
正妻ではない紫の上は、大きく動揺しました。

「朱雀院様からの気の毒な頼みごとですね。私がどうして不快な思いなどできるでしょうか…」と表面は平静をよそおいました。
源氏は、紫の上が素直に受け入れてくれて有り難いことだと思います。

紫の上は愛されている身を思い上がり、安心しきっていました。
それなのに、ここへきて世間の笑い者になろうとは…と内心では苦しまずにいられません。

******

年が改まった2月半ば頃に、女三宮が六条院に輿入れしてきます。
新婚3日の間は盛大で優雅な宴が催され、紫の上はひたすら何気なく振る舞ってお世話をするのでした。

この3日間、源氏は女三宮の部屋に通います。
今までこんな経験のなかった紫の上は、こらえようとしても、もの悲しい気持ちです。歌を書きました。

目に近く うつればかわる 世の中を 行く末遠く 頼みけるかな
(目の当たりにこうも変わってしまうあなたとの仲でしたのに、行く末長くと頼りにしていたことです)

ある日源氏は紫の上が隠していた歌を見つけます。

身に近く 秋や来ぬらん 見るままに 青葉の山も うつろいにけり
(秋が身近に来たのでしょうか、見ているうちに青葉の山の色も変わってしまいました。私も飽きられたのでしょうか)

不安な心を抱えながらも、紫の上は悲しみを決して表に出しませんでした。
女三宮と対面した時は親しく言葉を交わし、無邪気な女三宮はすっかり気を許します。
それから二人は、親しく手紙のやり取りをするようになりました。

世間の人々は初め、紫の上はどう思っているだろう、光源氏の寵愛も少しは冷めるだろう、と言っていました。
ところが、女三宮を迎えて源氏の紫の上への愛情は一段と深まり、さらには紫の上と女三宮が仲良く付き合っているので、悪いうわさも立たなくなったのです。

光源氏を支えた理想の女性・紫の上

光源氏の人生の中で1番長く側にいたのが紫の上です。
源氏を政界から抹殺しようとたくらむ敵や、身内にもライバルがいる中、彼が39歳で頂上に上り詰めるまで、ずっと寄り添い支えてきました。

それだけに、彼の浮気に1番悩まされたのも紫の上かもしれません。
ほかに頼る人のない紫の上は、忍耐して源氏に尽くし、懸命に自分を磨いていきます。

そして、よりいっそう彼女の輝きは増していくのですが、光源氏とのすれ違いも多くなっていくのです。
二人の間に何があったのかは、次回お話ししたいと思います。

後編の記事はこちらからご覧いただけます。

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