先日、残暑見舞いの葉書が届きました。「和」の筆文字に、水色の花が描かれた「花咲く書道」の葉書は、色合いの涼やかさと、筆遣いの温かさが伝わってきて、うれしく思いました。
さて、NHK連続テレビ小説「らんまん」では、全国各地から「植物の名前を教えてください」と主人公の牧野万太郎に手紙が届き、丁寧に返事を書く場面が描かれています。実際に、このドラマのモデルである植物学者・牧野富太郎博士の直筆の手紙が、岩手県や兵庫県、徳島県で見つかっているそうです。
会ったことがなくても、手紙のやりとりでつながれるなんて、素敵ですね。
手紙といえば、ロシアの文豪・トルストイに、こんなエピソードがあるそうです。木村耕一さんにお聞きしました。
人生に転機をもたらした手紙
手紙には、大きな力があります。
心と心の交流であり、立場や年齢などを超えて、人生に転機をもたらすことすらあるのです。
フランスの大学生で、21歳のロマン・ロランは、
「自分は、いかに生きるべきか」
と悩んでいました。ロシアの文豪・トルストイの小説を読み、その謎は、一層深まるばかりでした。
思い切って彼は、トルストイへ手紙を書いたのです。
心から「私の疑問を晴らしてください」と願う内容でした。
果たして、当時、世界で最も有名な文学者が、無名の一学生に返事をくれるのでしょうか。
1カ月、2カ月と待っても、何も来ませんでした。常識で考えても、無理なことは本人にも分かっていました。
ところが、6カ月後に、トルストイから、後に論文として出版されたほどの分厚い返書が届いたのです。
手紙は、こう書き始められていました。
「あなたの最初のお手紙を受け取りました。
そのお手紙に感動しました。
わたしは眼に涙を浮かべて読みました……」
ロランの誠意ある手紙が、大文豪の心を動かしたのでした。
トルストイは大作『人生論』の執筆中だったので遅くなりましたが、丁寧な返事を書いてくれたのです。この手紙が、どれだけロランを勇気づけたか分かりません。
ロランはトルストイを師として文学活動を続け、やがてフランスを代表する作家となっていきます。49歳の時には、長編小説『ジャン・クリストフ』でノーベル文学賞を受賞しました。
世界的に有名になったロランもまた、トルストイと同じように、読者からの手紙には、温かい返信を、生涯、書き続けたといわれています。
(『新装版 思いやりのこころ 〜人はみなひとりでは生きてゆけない』木村耕一編著より)
心と心の交流
木村耕一さん、ありがとうございました。
見ず知らずの一学生の手紙に感動したトルストイが、大作『人生論』の執筆中にもかかわらず返信の手紙を書いたことに、驚きました。
手紙は、身分や年齢、国や人種を超えた「心と心の交流」になると知らされます。私も心を込めて、手紙や葉書を書きたいと思いました。
トルストイが衝撃を受けた「ブッダの寓話」
ロランのように「自分は、いかに生きるべきか」に悩む人に、大きな影響を与えたトルストイは、「人間とは何ぞや」を追究した文豪でした。
トルストイが驚嘆したブッダの寓話があります。
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