日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #196

  1. 人生

【イソップ物語】ブドウの葉を食べたシカ〜感謝の心を忘れると……

今年1年お世話になった方に贈り物をする機会が増えてきました。
相手の喜ぶものを考えていると、こちらも幸せな気持ちになってきますね。
恩を知り、感謝する心を大切にしたいと思います。
反対に、感謝の心を忘れるとどうなるのか。
『イソップ物語』に、こんなお話がありました。木村耕一さんの意訳でどうぞ。

ブドウの葉を食べたシカ

弓を持った猟師が、一頭のシカを見つけました。
「今日は、いい獲物に出合ったぞ」
そっと近づいていきます。

人の気配を感じたシカは、とっさに駆け出しました。

「逃がすもんか!」
猟師はあきらめずに、追いかけます。

【イソップ物語】ブドウの葉を食べたシカ〜感謝の心を忘れると……の画像1

シカは、たくさんの葉っぱが茂ったブドウの木を見つけ、その陰へ滑り込みました。

目を閉じて、じっと隠れていると、猟師は少しも気づかずに通り過ぎていったのです。
ブドウの葉っぱが、シカの体を隠して守ってくれたのでした。

「ああ、助かった。このブドウの木がなかったら、殺されていたに違いない……」

【イソップ物語】ブドウの葉を食べたシカ〜感謝の心を忘れると……の画像2

安心したシカは、おなかがすいてきました。

そして、目の前の葉っぱを、むしゃむしゃと食べ始めたのです。

【イソップ物語】ブドウの葉を食べたシカ〜感謝の心を忘れると……の画像3

そのかすかな音が、先へ行った猟師の耳へ聞こえてきました。

「おかしいぞ。風もないのに、葉っぱが揺れている」

猟師は、矢をつがえ、弓の弦を引き絞ります。
ギシ、ギシ、ギシッ……。

葉っぱが揺れている所へ向かって、矢を放ちました。

ビシッ!

【イソップ物語】ブドウの葉を食べたシカ〜感謝の心を忘れると……の画像4

大地へ倒れたシカは、息が切れる前につぶやきました。
「ああ、俺は、なんてバカなんだろう。命の恩人であるブドウの葉っぱを、食べてしまうなんて……。これは、当然の報いだ」

私たちは、多くの人に支えられ、お世話になって生きています。
返し切れないご恩があるのに、ついつい当たり前になっていないでしょうか。

感謝の心を忘れ、平気で裏切る人は、とても不幸な人です。

【イソップ物語】ブドウの葉を食べたシカ〜感謝の心を忘れると……の画像5

(『月刊なぜ生きる』 令和2年12月号「イソップ物語 人生にこんな場面ありませんか?」 文 木村耕一 絵 黒澤葵 より)

お世話になった人への恩返し

木村耕一さん、ありがとうございました。
感謝の心があるかどうかで、人生が豊かになるかどうか、分かれてくるように感じました。
お世話になった方へご恩返しができる人は素晴らしいと思います。

今回ご紹介した『イソップ物語』は、『新装版 こころの朝』にも掲載しています。
詳しくはこちらからどうぞ。