今年1年お世話になった方に贈り物をする機会が増えてきました。
相手の喜ぶものを考えていると、こちらも幸せな気持ちになってきますね。
恩を知り、感謝する心を大切にしたいと思います。
反対に、感謝の心を忘れるとどうなるのか。
『イソップ物語』に、こんなお話がありました。木村耕一さんの意訳でどうぞ。
ブドウの葉を食べたシカ
弓を持った猟師が、一頭のシカを見つけました。
「今日は、いい獲物に出合ったぞ」
そっと近づいていきます。
人の気配を感じたシカは、とっさに駆け出しました。
「逃がすもんか!」
猟師はあきらめずに、追いかけます。
シカは、たくさんの葉っぱが茂ったブドウの木を見つけ、その陰へ滑り込みました。
目を閉じて、じっと隠れていると、猟師は少しも気づかずに通り過ぎていったのです。
ブドウの葉っぱが、シカの体を隠して守ってくれたのでした。
「ああ、助かった。このブドウの木がなかったら、殺されていたに違いない……」
安心したシカは、おなかがすいてきました。
そして、目の前の葉っぱを、むしゃむしゃと食べ始めたのです。
そのかすかな音が、先へ行った猟師の耳へ聞こえてきました。
「おかしいぞ。風もないのに、葉っぱが揺れている」
猟師は、矢をつがえ、弓の弦を引き絞ります。
ギシ、ギシ、ギシッ……。
葉っぱが揺れている所へ向かって、矢を放ちました。
ビシッ!
大地へ倒れたシカは、息が切れる前につぶやきました。
「ああ、俺は、なんてバカなんだろう。命の恩人であるブドウの葉っぱを、食べてしまうなんて……。これは、当然の報いだ」
私たちは、多くの人に支えられ、お世話になって生きています。
返し切れないご恩があるのに、ついつい当たり前になっていないでしょうか。
感謝の心を忘れ、平気で裏切る人は、とても不幸な人です。
(『月刊なぜ生きる』 令和2年12月号「イソップ物語 人生にこんな場面ありませんか?」 文 木村耕一 絵 黒澤葵 より)
お世話になった人への恩返し
木村耕一さん、ありがとうございました。
感謝の心があるかどうかで、人生が豊かになるかどうか、分かれてくるように感じました。
お世話になった方へご恩返しができる人は素晴らしいと思います。
今回ご紹介した『イソップ物語』は、『新装版 こころの朝』にも掲載しています。
詳しくはこちらからどうぞ。