早いもので、今年も残すところわずかとなりました。
今年のNHK大河ドラマは、松本潤さん主演の「どうする家康」でした。
さまざまな選択が迫られた時、家康は「どうする」と悩み、道を選び、ついに天下人になりました。
中でも大きな選択の一つは、天下分け目の「関ヶ原の戦い」ではないでしょうか。
江戸から関ヶ原へ向けて出陣する時、家康のこんなエピソードがありました。
木村耕一さんにお聞きします。
「殿、縁起の悪い日でござる」
「気にするな。自分で切り開いて進めばいい」
関ヶ原の戦いは、徳川家康の東軍、石田三成(いしだみつなり)の西軍、合わせて15万を超える兵が激突した、「天下分け目の合戦」でした。
家康が、大軍を率いて江戸城を出発しようとしたのは、9月1日。
この日、一人の老臣が、
「今日は、縁起の悪い日でござる。どうか、出陣を延期してくだされ」
と進言しました。出陣に際して、吉凶を占うのが当時の常識だったからです。
家康は尋ねました。
「どんな日だ」
「西塞がりでござる」
今、大軍を率いて江戸から大坂へ向かおうとしている。進行方向は西──。
その「西」がふさがっている、とは、戦いに不利だという意味になるというのです。
家康は、一笑に付しました。
「西がふさがっているならば、自分で破り、開いて進むまでだ。気にする必要はない」
東軍は、予定どおり出発しました。
そして、大坂を中心とする西軍と、関ヶ原で雌雄を決し、わずか一日の戦闘で、勝利を得たのでした。
越前(福井県)の大名、朝倉孝景(あさくらたかかげ)は、十七カ条の家訓を制定しています。
その中に、次のような一節があります。
「合戦に際し、吉日を選んだり、方角を考えたりして、いたずらに時日を遅らせることは、非常に無駄なことである。
いかに吉日だからといって、大風の日に船を出したり、大勢の敵に一人で向かったりしたのでは、まったく意味がない」
こんなことを、わざわざ家訓に入れねばならぬほど、人間の心は迷いやすいのです。
縁起がいいとか、悪いとか、そんなことを気にするよりも、「努力は必ず報われる」と信じて、前向きに進んでいけば、必ず、道が開けるのです。
(『新装版 こころの道』木村耕一編著より)
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木村耕一さん、ありがとうございました。
「人生は選択の連続である」は、シェイクスピアの名言です。私たちも、日々、何かを選択しながら生きています。簡単なこともあれば、長期間悩むこともあります。
そんな時、人生の先達はどうしたのか、歴史上のエピソードを知ると、生きるヒントになりますね。
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