新年度を迎えるにあたり、新しい園生活、学校生活を楽みにしている子どもも多いことでしょう。
ですが同時に、新しい環境に不安を感じていることもあるかもしれませんね。
とりわけ、子どもにとって、友達関係は大きな関心ごとです。
親としても「仲の良い友達と一緒のクラスになれるかしら」「新しいクラスに馴染めるかしら」など、気になるところだと思います。
今回は、特に幼い子どもにとっては理解が難しく、トラブルになってしまうこともある、発達障がいのグレーゾーンの子が同じクラスにいる場合について、考えてみたいと思います。
そういったお友達との間で、何か心配なことが起きたとき、わが子にどのような対応をすれば良いのでしょうか。
具体的な言葉のかけ方や、日常で心がけたいことをお伝えします。
発達障がいのグレーゾーンとは?
ではまず、発達障がいのグレーゾーンとは、どのようなことを言うのでしょうか。
発達障がいとは違って、グレーゾーンというのは医学的な診断名ではありません。
「発達障がいの特性が見られるが、診断の基準には満たない」場合の通称です。
発達障がいの子どもに対しての理解や向き合い方は、現場でもかなり見聞きするようになりました。
また、その親御さんの悩みに対するアドバイスや、支援も広まりつつあります。
ですが、発達障がいのグレーゾーンは診断がされない分、支援も行き届きにくく、時に、子ども同士のトラブルになることもあるでしょう。
子どもの年齢によっては、そういった子の発達特性を理解することは難しく、「一緒に遊んでいてもルールを守らない子」「先生の言うことを聞かない子」「大きな声を出して騒ぐ子」「すぐに叩く子」など、個々の行動でとらえます。
そして、そのような友達に対し、不公平感を抱いたり、不安を感じたりすることもあるかもしれません。
では、「いつもおもちゃを取られる」というトラブルが生じた場合、親はどのように対応すれば良いのでしょうか。
子ども同士のトラブルで親ができること
1.「誰にでも苦手がある」ことを気づかせる
まずは子どもの話にゆっくり耳を傾けましょう。
そして、「いつもおもちゃを取られるのね、それは悲しいね」「泣かずによく我慢したね」「お母さんに話してくれて、ありがとう」などの共感とねぎらいの言葉をかけてください。
そのうえで「どうすればいいかな」と、子どもと一緒に解決案を考えましょう。
子どもが自分から、「返して!って言う」「一緒に遊ぼう、って言ってみる」などの案を出してくるかもしれません。ですが、それでは解決されない場合もあります。
そういう時は、「う~ん、どうしてうまくいかないのかな」と、今度は相手の気持ちや苦手な面について、一緒に考えてみます。
「そのお友達も、本当は仲良くしたいんじゃないかな」「でも、『貸して』って言ったり、一緒に遊ぶのが苦手なんだね」。他にも「言葉で説明するのが得意じゃないのかもしれないね」「小さな声で話すのが苦手なのかもね」「苦手なことって、誰にでもあるよね」と話してみましょう。
「おもちゃは他にもあるから、それで遊んでみるのも楽しいかも」などの代替案を出してみるのも良いですね。
大切なことは、子ども自身が相手のことや状況をよく考え、人にはさまざまな「苦手」があることに気づくことです。
2.先生には、わが子の困りごとを相談する
子どもへの言葉がけと同時に、担任の先生にも声をかけておくと良いでしょう。
少しくらいのトラブルなら、様子を見ていても良いのですが、繰り返し行われる、叩くなどの行為があった、などでしたら、担任の先生に相談しましょう。
その際、ただ「○○君にいつもおもちゃを取られる」など漠然と話すのではなく、わが子の困りごとをまずは伝えてください。
例えば、「遊んでいるおもちゃをいつも取られるので、自由遊びの時間に不安を持っている」「それが心配で、園へ行くのを憂鬱そうにしている」などと話すと良いでしょう。
そしてトラブルがあった日時や場所、状況をできるだけ具体的に伝えましょう。
この時のポイントは、園や先生の配慮に問題があったような言い方ではなく、また相手の子を非難するのでもなくて、どうすれば子ども同士のトラブルがなくなるかにポイント置いて話すことを心がけると良いでしょう。
次に親が、日常の生活の中で心がけておきたいことをお伝えします。
子どもが友達の苦手を理解するために親が心がけること
1.長所や良いところに目を向ける
世の中には、いろいろな人がいます。
かけっこが速い人、遅い人。絵を描くのが上手な人、苦手な人。背が高い人、低い人。計算が得意な人、苦手な人。おしゃべりが好きな人、好きでない人など。
そして、ひとつのことが苦手でも、他の何かが得意だったりすることもあります。
「お母さんは、歌うことがとっても好きなの、でもね、運動は苦手、運動会のかけっこではいつもビリだったわ」など、普段の会話の中でされると良いでしょう。
また、家族や友達の「いいところ探し」をしてみるのもいいですね。
例えば「花壇の花がキレイに咲いているのは、○○ちゃんがいつもお水をやってくれているからね」「○○ちゃんは手があったかくて、つなぐとほっこりする」など、能力面以外の良いところにも目を向ける習慣をつけておきましょう。
2.多様性の受け入れを阻む無意識な発言に気をつける
発達障がいやグレーゾーンの子どもに対して、「病気だから」とか「皆と同じようにはできないから」などの発言はNGです。
なぜなら、子どもは「皆と同じことのできない子」ということで、そういった子どもを下に見てしまうこともあるからです。
他にも、「男の子なんだから、泣いちゃだめ」「女の子なんだから、おとなしくしなさい」などの発言も固定観念を植えつけ、多様性の受け入れを阻む言葉になるでしょう。
「ご飯粒を残すと目がつぶれる・バチがあたる」などの言葉も、目が悪い人や不運な人は悪いことをした人なんだと、幼い子どもは単純に見下したとらえ方をすることがありますので、その場合は、きちんと「例え」であることを伝えてください。
また、自分が困ったとき、つらい目に遭ったときに、どうしてもらいたいかを一緒に話し合ってみるのもいいでしょう。
多様性を受け入れることは、自分を大切にすることに繋がる
子どもの属する集団は、成長と共に家庭から学校、社会へと、どんどん広がっていきます。
その中でさまざまな考えや、多種多様な個性を持った人との出会いもあるでしょう。
その時に戸惑ったり、人間関係に悩んだりしないためにも、幼い頃から、自分と違った考えや個性を理解できることは、とても大切です。
多様な相手への理解や受容は、将来、自分の短所をありのまま受け入れたり、自分自身を大切にすることにもつながるでしょう。
田宮先生の著書はコチラ
子どもの“ありのまま”を認めつつ、意欲や学力を育むにはどうすれば良いのでしょうか?
田宮先生の著書『比べない子育て』を要チェック♪