「物を大切にしなさい」
と私たちはよく言いますが、どんなに大事にしていても、物を壊したり、無くしたりすることはあります。
そういう時、どういった心掛けが必要なのでしょうか。
「大切にしないからよ!」ではなく……
子どもの頃、大切にしていた物が壊れてしまって、悲しい思いをしたことはありませんか?
そんな時、「物を大事にしないからよ!」と叱られたり、「どうしてこんなことになっちゃったのかなぁ…」と、残念そうに言われたりしたこともあったかもしれません。
でも、物が壊れていちばんつらい思いをしているのは、当の本人です。
失敗をゼロにできない以上、大切なのは、その気持ちをどう受け止めてもらうか。心の向きが変われば、結果も大きく変わってきます。
今回は、物を大事にするとはどういうことか、その本質に迫ってみたいと思います。
物を大事にする人が、本当に心掛けていること
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つい粗末に扱ってしまうのは、いつまでもあると思っているから。
最近、物を壊したり無くしたりすることが多いな、というときは、その心に目を向けてみるといいかもしれません。
もちろん、丁寧に扱っていても壊れる時は来ますが、どこか「いい加減な扱いをしていた」と思い当たるところはないでしょうか。
大切にしないといけないはずの物を雑に扱って、壊したり無くしたりしてしまうのは、「物はやがて壊れ、自分から離れていくもの」という大前提を忘れているからです。
実際に、大切な物を失うまで、今の幸せが無くなることを想像するのは、なかなか難しいことです。
お気に入りの物を壊したり、無くしたりしたという出来事は、一見取り返しのつかない大失敗のように思えます。
しかし、「どんなに大事なものも、いつかは手放さないといけないんだ」という、受け入れがたいけれど、目を背けてはならない真実を見つめるチャンスでもあるのです。
「いつかは離れていく」のが当たり前
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「無常」とは、すべてのものは続かないということ。
「どんなに大切なものも、いつかは手放さなければならないときがくる」
これを、700年前の名著『歎異抄(たんにしょう)』には、「火宅無常の世界」と書かれています。「この世の中に、続くものはひとつも無い」ということです。
「いつまでも続くものは無い」「形あるものはやがて崩れる」と聞くと悲しくなってしまうかもしれませんが、これには例外がありません。
今、机の上にあるコップやボールペンのようなものはもちろん、世界中のすべてのものは、「火宅無常の世界」のものです。地球上だけではありません。大空に輝く太陽も、夜を照らす月も、みんなこの中に入ります。
一切が続かないというのは、誰もが否定することのできない事実なのです。
大切な「物」に限らず、愛する「家族や友人」、それらの人たちと過ごすあたたかい「時間」も、決していつまでも続くものではありません。
一緒にいられる時間には、限りがあります。そう思うと、何気ない毎日の一瞬一瞬が、一度失ったら二度とは戻らない、かけがえのない時間であることが知らされてきます。
「終わりが来る」と知ることが、今を大切にする第一歩
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いつかお別れするからこそ、大事にしようと思えるんだね。
「いつか必ず別れがやってくる」という事実を知り、まっすぐに向きあってこそ、今の幸せをより深く感じることができます。
その思いがあるからこそ、周りの物や人を、そして人生という時間を、本当に大切にできるのではないでしょうか。
今回は、「最近、物をよく壊したり、無くしたりする」という悩みをきっかけに、「物を大切にする」とはどういうことかを考えてみました。
(編集部より)
マンガ『こども歎異抄』とは
子どものころ、ひそかに感じていた、素朴な疑問。
家族や学校の先生に聞いてみても、「まぁそんなものだよ」「考えてもどうしようもない」とごまかされて、モヤモヤした経験はありませんか?
大人になるにつれ、知りたかった気持ちにはフタをして、目の前のことに追われる毎日。
「心とは?」「人間とは?」「生きるってどういうこと?」
今さら人に聞けなくなってしまった人生のギモンを、700年前の名著『歎異抄(たんにしょう)』を通じて、少し深めに掘り下げるマンガ連載が、『こども歎異抄』です。
無人島に、一冊持っていくなら『歎異抄』
国宝級の名文としても名高い『歎異抄』は、これまで多くの文豪や思想家、哲学者を魅了し、人々に生きる希望を与え続けてきました。
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