歎異抄ってなんだろう #2

  1. 人生

国宝級の名文『歎異抄』に秘められた、難病を治す薬とは?

5月16日は、「旅の日」というのをご存知でしょうか。
松尾芭蕉が、奥の細道の旅に出発した日にちなんで制定されたそうです。

古池や  蛙(かわず)飛びこむ 水の音

田園に蛙たちが姿を見せ始めると、思い出されるのがこの芭蕉の句かもしれません。
言葉一つで情景が思い浮かび、まるで水音の周りを包む“静寂さ”までもが聞こえてくるようです。

同じ名文でも、「国宝級の名文」として名高い『歎異抄(たんにしょう)』。

文体や叙情的美しさはもちろんのこと、そこに込められた善悪を超越した深い人間観、死生観を訴えているところに鮮烈な特徴があると言われています。

前回に続き、歎異抄解説の第一人者・高森顕徹先生監修『歎異抄ってなんだろう』から、「はじめての人」のための入門編をお届けします。
(編集部より)

国宝級の名文『歎異抄』に秘められた、難病を治す薬とは?の画像1

『歎異抄』を知識ゼロから理解するには

明治時代から現在までに出版された歎異抄と名のつく書籍は、500冊にも上るといわれています。

しかし近年は、難しそうだと歎異抄を敬遠される方があるのは、古文に加えて見慣れぬ仏教の言葉が、ふんだんに使われているからでしょう。

例えば、歎異抄1章の冒頭には、次のように書かれています。

弥陀(みだ)の誓願不思議に助けられまいらせて、往生をば遂ぐるなり」と信じて「念仏申さん」と思いたつ心のおこるとき、すなわち摂取不捨(せっしゅふしゃ)の利益にあずけしめたまうなり。

(『歎異抄』第1章)

ご覧のように、冒頭から「弥陀の誓願」で始まり、その後も仏教用語が続いています。

歎異抄は親鸞聖人の教えを知っている前提で書かれたものです。

ですから、親鸞聖人の教えの全体像が分からなければ、歎異抄も分からなくなります。

「一人の難病人がいました。」名著をストーリーで読み解く

そこで、今日、はじめて歎異抄に触れる方には、まず親鸞聖人の教えの全体像を知っていただくことが、歎異抄の大枠を知るには、とても大事なことなのです。

では、親鸞聖人の教えの全体像とは、どんなものなのでしょうか。

それは、そのまま歎異抄の全体像ともいえるものです。

親鸞聖人の教えの全体像を理解するための、例え話を紹介したいと思います。

この例え話にそって、親鸞聖人の教えの全体像を知り、歎異抄を読めば、世界を魅了する古典の名著を、グーッと身近に感じられるようになられるでしょう。

歎異抄の全体像を理解する例え話

【1】すべての医師から見放された難病人がいました。

【2】世界唯一の名医の存在を教える案内者が現れました。

【3】名医は、「難病人の苦悩の根元を突き止め、治せなければ命を捨てる」と、誓っていました。

【4】名医は、永い間、苦労を重ねて、遂に特効薬を完成されました。

【5】特効薬を飲んで難病が全快した患者は大変に喜びました。

【6】難病が完治した患者は、名医と案内者のご恩に深く感謝し、お礼を言わずにおれなくなりました。

それでは次に、【1】から【6】まで、何を例えているのか、歎異抄の全体像を解説していきましょう。

(『歎異抄ってなんだろう』高森顕徹 監修、高森光晴・大見滋紀 著より)
国宝級の名文『歎異抄』に秘められた、難病を治す薬とは?の画像2

「物に本末あり、事に終始あり」という言葉のとおり、どんな話も、順番が分からなければ間違った解釈をしてしまう恐れがあります。

お礼を言ったら病気が全快し、全快してから特効薬が出てきた。そこでようやく名医が登場し、それを案内してくれる人がやって来て、難病人が現われる……。

これでは、まったくおかしな話になってしまいますね。

たとえ話の最初に出てくる「難病人」とは何のことでしょう。
もし、自分がそんな難病にかかっていたとしたら?

この連載では順番に、「はじめての人でも分かる歎異抄」をお届けしていきたいと思います。

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