自己肯定感を育むために、まず大事にしたい「甘え」
――前回は、3歳までの子育てで、いちばん大切なことは、心の土台である「自己肯定感」を育てること、とお聞きしました。そして3歳までの心の育て方についても、教えていただきました。
明橋
前回、自己肯定感というのは、「自分は生きてていいんだ」「大切な存在なんだ」ということで、これがすべての心の土台です。これを育てることが、子育てでいちばん大事なことなんだ、という話をしました。
0歳から3歳まで(これを過ぎたら手遅れ、ということはないんですけれども)、まず、この時期に自己肯定感を育てることが大事です。
そのために、どうすればいいのか、ということなんですけれども、「自己肯定感を育てるためには、ほめることが大事だ」とよくいわれます。
もちろん、ほめることも大事なのですが、特にこの時期は、ほめることよりも、もっと大事なことがある、と私は思っているんですね。
それは、子どもの「甘え」を大事にする、ということです。
――「甘え」ですか? 甘えん坊の「甘え」ですよね? ちょっと意外な感じがします。
明橋
そうですね。「甘え」というと、世間ではあまりよいことじゃないように思われています。
けれども、実は心理学的にはすごく大事な意味があるし、特に自己肯定感を育てるうえで、子どもの甘えを受け止める、ということが、とても大事なことだと私は思っています。
まず、子どもの心はどういうふうにして大きくなるのか、ということについて話をします。
甘え(安心感)が自立の土台になっている
子どもの心は、「甘え」と「自立」の行ったり来たりで大きくなる、といわれています。
甘えは「依存」とも言い換えられますし、自立は時には「反抗」という形で出てくるのですけれども、この2つを行ったり来たりで大きくなるのが子どもの心だといわれています。
どうして行ったり来たりするのかというと、まず、子どもは親に完全に依存した状態、甘えた状態で生まれます。
そのときに、子どもの心がもらうのが「安心感」です。
そのときにまた、子どもの心に不自由という気持ちが出てきます。自由になりたいと思います。
そこで出てくるのが意欲で、自立に向かうのですね。
自立は自由で何でもできます。そこで自由を満喫するのですね。
ところが子どもの心にもう一つ、「不安」という気持ちが出てきます。自立の世界は自由だけれども、同時に不安な世界なんですよね。
不安を感じた子どもは、「お父さーん」「お母さーん」と、また依存の世界に戻ってきます。
そこでじゅうぶん甘えて安心感をもらいます。
じゅうぶん安心感をもらうと、また不自由になってきて、「自分でやる!」「自分で!」と言って、また自立へ戻っていく。
そして、また不安になって、また甘えの世界へ戻ってくる。
それで、行ったり来たりして大きくなるのが子どもの心だ、ということなんですね。
よく、子どもを自立させるにはどうすればいいのか、といわれますけれど、「自立」の反対は「甘え」ですから、甘えさせないことが自立させることだ、と思われがちなんです。
ですけれども、先ほどお話ししましたように、自立のもとになるのは意欲です。意欲はどこから出てくるか、というと安心感。じゃあ、安心感はどこからもらうのかというと、じゅうぶんな依存、甘えからです。
そこでもらった安心感が、自立の土台になっているんですね。
ですから、「甘えない人が自立する」のではなくって、「じゅうぶん甘えて安心感をもらった人が、自立する」のです。
「甘えた人が自立する」ということなんですね。
「いや、反対じゃないか」と言う人が多いのですけれども、実際、自立につまずく人を見ていると、小さいころ、甘えていいときに甘えてこなかった、ということが背景にあることが多いんですね。
ですから、子どもの心が自立していくために、小さいとき、子ども時代の甘えというのは、実はすごく大事なものなのです。決して否定すべきものではない。
しかもそれは、3歳までということではなく、小学校くらいまでの間は、じゅうぶん甘えさせていい。
「10歳まではじゅうぶん甘えさせる。そうすれば子どもはいい子に育つ」という言葉もあるくらいです。
甘えと自立は“子供のペース”で受け止める
――この0歳から3歳までの時期でいいますと、2歳のころは、「自分でやる」と反抗するイヤイヤ期ですよね。「魔の2歳児」ともいわれますが、これは反抗が激しくなった状態なのでしょうか?
明橋
そうですね。それまでじゅうぶん安心感をもらうと、自分でやりたい、という気持ちが出てきますので、「イヤ!」とか「自分で!」というふうに言います。
だけどまだうまくできないので、親は振り回されて大変なんですけれども、実はそれは、心の成長のプロセスで大事なことなんだ、ということなんですね。
2歳のイヤイヤ期も3歳を過ぎたころになると、少しずつ、落ち着いてくるといわれています。
大事なのは、甘えと反抗、依存と自立の行ったり来たりが、あくまで「子どものペースでないといけない」ということなんですね。
子どもが「お母さーん」と言ってきたら、「よしよし」と言って助けてやる。
「自分でやる」と言ったら、「じゃあやってごらん」とやらせてみる。
ついつい大人は忙しいもんですから、「お母さーん」と呼ばれても「今忙しいから自分でやりなさい」と言ってしまったり、「自分でやる」と言っているのに、「どうせできないんだから、貸しなさい」と取ってしまったり…。
それはやむをえない部分もあるのですけれども、本来は子どものペースで行ったり来たりできるのが大事なのです。
――子どものペースを受け止める、ということが大事、ということですね!
後編につづきます。
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