昨今、認知症の高齢者が増加しています。日々新聞紙面を賑わせています。
認知症は発症した本人にとって深刻な病気ですし、介護にあたる家族の負担が重い病気です。しかも認知症の大多数は残念なことに、根治させることが難しい病気です。
自分は認知症にならないだろうか?認知症にならないためには、どんなことに気をつけたらよいのだろうか?と心配している方も多いでしょう。
認知症の原因と今からできる予防法を紹介します。
そもそも認知症の症状とは?「記憶障害」+「失認」
認知症は、記憶障害と失認などによって、日常生活に支障が出ていることを言います。
①失認
失認とは、認識できないということで、目は見えているけれども、その人をその人と分からない、声は聞こえるけれど言葉の意味が分からない、ということです。
進行すると、自分の居場所や家族・知人の顔も分からなくなってしまいます。手の感覚も分からなくなるので、携帯電話にストラップを通すなど細かい作業も難しくなります。
②記憶障害
認知症の記憶障害は、健康な人の物忘れとは少し違います。
「先生、最近昼頃になると朝何を食べたか覚えていないのです。私は認知症ではないでしょうか?」と心配そうに病院に来る患者さんがあります。
こういう人は大抵、大丈夫です。認知症の人は食べたこと自体を忘れて、「ちっとも嫁が食事を出してくれん!」などと言われます。
出来事(この場合は食べたこと)そのものを忘れてしまう記憶障害が、認知症の記憶障害の特徴です。
③遂行機能障害
遂行機能とは、物事を論理的に考え、計画し、実行に移す能力をいいます。
身近な作業で、この能力が大事な作業が炊事です。炊事は、実は大変複雑な思考・判断の上に成り立っています。
そのため認知症の方の初期症状として、料理が上手くできなくなる人があります。
④失語
言いたいことがあっても、言葉が上手く出てこず、言いたいことを伝えられない状態をいいます。
原因別に3つに分かれる認知症
ではそのような認知症になぜなってしまうのか、原因を見ていきます。
認知症は原因別に大きく3つに分けられます。
①変性性認知症(アルツハイマー型、レビー小体型など)
変性性認知症は、全認知症の6割を占めます。
変性性認知症とは、脳にたまったゴミ(タンパク質)が悪さをして脳細胞を変性させることで起こります。変性とは、”生卵”が熱の作用で”ゆで卵”になるように性質が変わることをいいます。
脳にゴミがたまる原因はまだ十分には解明されていませんが、血管の働きが弱くなり、ゴミが排泄できなくなるのが一因と考えられています。
②血管性認知症
血管性認知症は、全認知症の3割を占めます。
脳にはたくさんの血管が張り巡らされ、脳細胞に栄養を与えています。その血管がダメージを受けたために起こる認知症が、血管性認知症です。用水路の一部が絶たれると田んぼに水が入らず、稲が枯れてしまうようなものです。
ゆで卵を生卵に戻したり、一度枯れた稲を元通りにすることは困難です。
ちょうどそのように、これらの認知症は発症すると根治させることは大変難しいため、予防が大切です。
③その他の認知症
頭の中に水が溜まり過ぎたり、血の塊ができたり、ビタミン不足やアルコールを取り過ぎたりしても、認知症を発症します。これらの認知症の中には、水や血の塊を取り除いたり、ビタミンを補ったりすることで改善する認知症があります。
病院で治療可能な認知症がありますから、認知症を疑うときには、まず医療機関を受診してもらいたいと思います。
認知症予防は「血管を守る」こと
変性性認知症、血管性認知症で認知症全体の約9割を占め、その発症には血管が大きくかかわっています。
ですから血管を守ることで、認知症の予防、また発症後も進行を抑えることにつながります。
たばこ・高脂血症・高血圧症・糖尿病・内臓脂肪型肥満は、いずれも血管にダメージを与えます。これら生活習慣病を予防し治療しましょう。
血管の病気は症状が表れにくいので、年一回の健診を受けるとよいでしょう。
生活習慣病の予防には運動と食事が大切です。
運動から解説しましょう。
身体を動かすと脳の血流が良くなりますから、適度な運動も大切です。
運動は、筋力トレーニングと有酸素運動に大別されます。
認知症予防法① 筋力トレーニング
一例ですが、筋力トレーニングは週2回、スクワット・腕立て伏せ・腹筋を行うとよいでしょう。
各々30秒間でできる限り運動を行い、30秒休む。これを3回繰り返す。
すると9分間で一通りの筋力トレーニングが出来ます。
毎日行うのではなく、3日に1回程度行うと、筋肉の負荷と休息のバランスが取れてよいと言われています。
認知症予防法② 有酸素運動
有酸素運動は、筋力トレーニング以外の運動と大雑把に考えていただいて構いません。
散歩でもランニング、友人とのキャッチボール、バドミントンでもなんでも結構です。
これもまずは週2回、1回30分程度行うことを目標にしてください。
有酸素運動に取り組む第一歩として、「歩数計を付ける」ことをお勧めしています。歩数計を付けるだけでも、自然と歩数を意識するようになり、一日の目標(男性8000歩、女性7000歩)を達成しやすくなります。
食事も、お伝えしたいポイントがあるのですが、一度に話をすると大変ですので、次の機会にしたいと思います。
まとめ
- 認知症の症状として、認識できなくなる「失認」「記憶障害」、身近な作業に支障も出る「遂行機能障害」、言葉がうまく出なくなる「失語」があります
- 認知症は原因別に3つに分かれ、全体の6割を占める「変性性認知症」、全体の3割を占める「血管性認知症」、その他、ビタミン不足やアルコールの取り過ぎでかかる認知症があります
- 認知症の発症は血管が大きくかかわっているため、「血管を守る」ことが認知症の予防につながります。生活習慣病によって血管にダメージが与えられるため、生活習慣病の予防に適度に運動をしていきましょう