「甘え」は心理学的に大事な意味がある
――子どもの自己肯定感を育てるために、「甘え」が大事とお聞きしました。でも、やっぱり甘やかすのは、よくないのではないかと思ってしまうのですが…。
明橋
「甘え」といったら「よくない」「悪い」と思いがちです。ほとんどの人、99パーセントの人が、そう思っています。
ですが、さっき言ったように、「甘え」は心理学的にはすごく大事な意味があるのです。
どうしてこういう誤解が生じているのかというと、その大きな原因は、甘えといっても2つあることを知らないからです。
甘えには、「いい甘え」と「悪い甘え」があります。
- 「いい甘え」を「甘えさせる」といいます。
- 「悪い甘え」を「甘やかす」といいます。
この2つの違いを知ることが、すごく大事なことなんですね。
「いい甘え」と「悪い甘え」、「甘やかす」と「甘えさせる」はどこが違うのか、その違いが、ここにわかりやすく書いてあります。
(『0~3歳の これで安心 子育てハッピーアドバイス』74ページより)
まず1つめの違いは、「甘えさせる」とは、子どもの情緒的な要求にこたえることです。
情緒的な要求というのは、例えば、「抱っこして」とか「話を聞いて」とか、あるいは子どもが何かつらいことがあってわんわん泣いている。そういう子どもの情緒的な要求にこたえることが「甘えさせる」ということで、大事なこと、必要なことなのです。
では、「甘やかす」とは何かというと、情緒的な要求ではなく、物質的な要求です。
「お菓子買って」とか「おもちゃ買って」とか「お金ちょうだい」とか、物質的な要求に言われるがままにこたえるのは、「甘やかす」ということでよくありません。
ですから子どもの情緒的な要求にはしっかりこたえて、その代わり物質的な要求は、きちっと制限していく、ということが大事なんですね。
しかし世の中、それがともすると逆になっています。
お父さんもお母さんも忙しすぎて、日頃子どもの情緒的な要求になかなかこたえられない、こたえ切れない。それで日曜日にショッピングセンターに連れていって、何でも買ってしまうとか、じいちゃんばあちゃんに連れられて何でも買い与えられてしまう。
そういうふうに育てられると、子どもはどういう子になるかというと、自分の心の寂しさを、物で埋める子になってしまいます。
それが、いろんな心の病気につながっていったりすることがある。だからそれはよくない、ということなんですね。
それが1つ。
適切な甘えは、子どもの自己肯定感を育てる
2つめの違いは、「甘えさせる」というのは、子どもが、どうしてもできないことに対して手助けする、ということです。できないことを手助けるのは、大事なことで、必要なことです。
(『0~3歳の これで安心 子育てハッピーアドバイス』76、77ページより)
まだまだ子どもですから、できないことはあります。そういうのを手助けすることは大事なことだし、それによって子どもは、自分が困ったときに人に助けを求めてもいいんだ、助けを求めたら、ちゃんと助けてもらえるんだ、という、人に対する信頼感が育っていくんですね。
では「甘やかす」というのはどういうことかというと、できないことを手助けするんじゃなくて、子どもができることまで大人が手を出してしまう。子どもがやるべきことを大人が取ってしまう。
あるいは、じいちゃんばあちゃんが全部やってしまう。
こういうのを過干渉というんですよね。これは「甘やかす」でよくありません。
ですから子どもができることは、どんどん子どもに任せていく。
年齢に応じて、できることは増えていきます。ですから、どんどん子どもに任せていく。失敗を恐れずやらせてみる。
だけど、子どもだからどうしてもできないことはあります。そういうときは、大人がちゃんと手助けすることが大事です。
そういう意味で、子どもの情緒的な要求にこたえるとか、できないことを手助けする、というように、甘えを受け止めることは、すごく大事なことです。
甘えを受け止めてもらったときに、子どもの心は安心感をもらい、また自分が大事にされている、と思います。
それは自分が大事にされる価値があるからだ、ということで、それが自己肯定感が育つもとになる、ということなんですね。
ですから、子どもが小さいときに、甘えを適切に受け止める、というのは、とても大事なことなのです。
――よくわかりました。ありがとうございます。
紹介した本はコチラ
「甘えさせる」と「甘やかす」の違いといっても、なかなか「じゃあ、こういう場合はどうなんだろう」「これって甘やかしなのかな?」とか、いろいろ判断に迷うことがあると思います。
こちらの本には、いろんなケースに応じて詳しく書いてあります。ぜひ参考にしてくださいね。