年々増加しているのが離婚トラブルです。
慰謝料や親権、養育費など、もめごとの内容もさまざまですが、今回は「離婚を迫られたときに、回避することができるか」についてです。
離婚回避ができた事例や方法について、離婚トラブルに詳しい二木克明弁護士にお答えいただきました。
相談内容:
妻から離婚を迫られています。
今後のことを弁護士に相談したいのですが、今からでもよりを戻すことはできるでしょうか。
「離婚回避が容易でない」「早期の離婚ができない」理由
二木弁護士の回答:
弁護士の扱う紛争は全体的に減少傾向ですが、唯一増えているもの、それが離婚トラブルです。
日本国内で、1分50秒に1組の割合で離婚している、といわれています。実際に私の周囲でも、離婚している人は山ほどいます。
それだけ多くの方が離婚されている中で、弁護士に相談に来られるのは、ごくわずかです。
つまり当事者の話し合いで離婚できる場合は、わざわざお金を払って弁護士に相談に来ません。話がこじれてしまった、弁護士の力を借りないと離婚問題の解決ができないという場合に初めて相談に来られるケースが多いのです。
その中には大きく分けて、こちら(あるいは相手方)が離婚を希望しているが、相手方(あるいはこちら)が離婚を拒否している、というケースがあります。
また夫婦関係が破綻していて修復不可能なのに協議離婚できない、というケースもあります。
このようなことを聞くと、
「夫婦関係が崩壊し喧嘩ばかりしているのだから、お互いさっさと別れてしまえばよいのに、なぜ別れないのか、なぜ何年もかけて離婚の裁判などやっているのか」
と疑問に思われる方もあるかもしれません。
しかし離婚するには決めておかねばならないことがあります。子ども(20歳未満の)がいる場合は、どちらが親権者になるか、また子どもの養育費をいくらにするか、慰謝料や財産分与の額はどうするか、ということなどです。
この離婚の条件で話がつかず、もめることが多いわけです。
あるいは、離婚を相手が希望し、こちらも早く別れたいとは思っているものの、相手から離婚を要求されて応じたのでは相手の思うつぼだから、応じたくない、と意地を張って、表向きは拒否する、という人もあります。
これが紛争の解決しない大きな要因となることもあります。
こういった理由で、弁護士に相談するようなケースは、相当もめている場合ですから、簡単に離婚の回避はできない、あるいは早期の離婚はできない、といえます。
「離婚回避はできることもある!」具体例でわかる“離婚回避の方法”
ただし、離婚回避が絶対無理か、というと、そうでもありません。
現実に弁護士をつけて調停や訴訟をしてみたところ、双方の誤解が解けて、元のさやに収まった、というケースも時にはあります。
つまり、夫婦の意思疎通がもともと十分でなく、ささいなことからお互いの溝が深まってしまったが、お互いのどこが不満なのか、忌憚のない意見を書いて相手にぶつけてみたところ、「何だ、お前はそんなことを考えていたのか」と相手の立場や気持ちが理解でき、自分にも非があったことに気づいた、というようなケースです。
具体例を一つ紹介します。
あるとき、ある男性から依頼がありました。妻から離婚訴訟を起こされた、というのです。
訴状によれば、夫の浮気や、夫が家事や育児に非協力的であるため夫婦関係が崩壊し、家を出なければならなくなった、と言うのです。
しかし男性の依頼は、「浮気はかなり前にごく短い期間あったのみで、以後は浮気はしていない。仕事が本当に忙しくて家に帰れないときはあった。妻は体が弱く、離婚して一人でやっていけるとは思えない。何とか離婚せずに済むようお願いしたい」というものでした。
そこでその旨を書面に記載して、丹念に反論をし、実情がわかるように主張を繰り返しました。
そうしたところ、証拠調べがなされた後の段階で、相手の誤解が解け、一緒に食事をするなどして関係が改善し、離婚訴訟は取り下げになりました。
あの二人は、今も幸せに過ごしているだろうか、と時々思い出されます。
今回のご質問への回答
そこで今回のご質問ですが、相手の言い分をよく聞き、こちらの言い分も相手に伝えて、よく話し合ってみることです。
すでに調停が起こされているなら調停で、その後訴訟になっているのならば訴訟の手続きの中で、十分にこちらの言い分を伝えてみたらどうでしょうか。そのために弁護士をつけてみるのもいいでしょう。これまでの奥さんとの間でなされてきた自らの言動が問われます。
それで結果が良ければよいのですが、仮にそれでも良い結果が出ない場合、厳しい現実は受け入れて、反省すべきところを反省し、前向きに進むことが肝要かと思います。
まとめ
- 弁護士に相談するような離婚トラブルは相当もめている場合であり、簡単には離婚の回避や、早期の離婚はできないといえます
- 一方で、弁護士を通して奇譚のない意見を相手にぶつけたところ、相手の誤解が解け、関係が改善した例もあります
- 相手の言い分をよく聞き、こちらの言い分も伝えて話し合うことでお互いの誤解が解けるかもしれません。そのために弁護士をつけるのもいいでしょう