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医療費控除が拡大?主婦なら知っておきたい「セルフメディケーション税制」とは

ニュースやドラッグストアなどで知られているかもしれない、新たな税制度「セルフメディケーション税制」。

これまでの制度と比べてなんとなく家計を助けてくれそうなイメージですが、

今までの税制度とどう違うのか、
自分とは関係があるのか、関係あるとすればどれくらい役に立つのか、
制度をうまく利用するにはどうしたらいいのか、

など、いろいろ疑問を持たれている方もいるでしょう。

そんな「セルフメディケーション税制」への疑問を、公認会計士であり税理士の渡邉光賢さんにわかりやすくお答えいただきます。

平成29年から医療費控除の特例として、「セルフメディケーション税制」が導入されました。

すでに始まっているこの制度ですが、認知度はあまり高くないようです。知っておけば得をするかもしれない、新たな税制について解説します。

医療費控除のハードルは高い?

「医療費控除」については、知っている人も多いかもしれません。病気やケガなどで病院にかかった場合に、支払った金額の一部をその年の所得から控除することのできる制度です。

しかしこの制度によって優遇を受けられる人はそれほど多くなかったのが実態です。

医療費控除の金額は次のような計算によって算定します。

医療費控除の金額 =

その年に支払った医療費*注1 - 保険等で補填される金額 - 10万円*注2

 

*注1 本人及び生計を一つにする家族のために支払った医療費も含みます。

*注2 総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%。

*注2の適用になる人は、例えば普通のサラリーマンであれば、年収311万円以下の人です。これ以上の収入がある人の場合、少なくとも年間の医療費が10万円以上なければ、医療費控除の適用を受けることはできません。

筆者の経験では、高齢の親と同居している人や本人が定期的に通院している人、あるいは、その年に大きなケガなどで入院したり手術を受けたりした人でないと、医療費で10万円を超えるということはなかなかありません。

自分も家族も、大きな病気やケガもなく1年間過ごせたことを喜ばなければなりませんが、医療費の支払いがあっても、制度の適用を受けられないのは少し残念な気がします

新たな税制度「セルフメディケーション税制」

では、「セルフメディケーション税制」とはどんな制度でしょうか。

平成29年~平成33年までの時限的な制度ですが、特定一般医薬品等(いわゆるスイッチOTC医薬品*)を購入した場合には、年間で1万2千円を超える金額を所得から差し引けるというものです

* 医師の処方箋がなくてもドラッグストアや薬局で直接購入できる医薬品

セルフメディケーション税制により所得から控除できる金額*注1 =

その年に購入した特定一般医薬品等の金額*注2

- 保険等で補填される金額 - 1万2千円

 

*注1 上限は8万8千円。

*注2 本人及び生計を一つにする家族のために購入した分も含みます。

特定一般医薬品等の対象になる品目は厚生労働省のホームページ(セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について |厚生労働省)に記載されています。

また、薬局などで対象となる医薬品を購入した場合、レシートに「★」マークなどで明記されています。

医療費控除が拡大?主婦なら知っておきたい「セルフメディケーション税制」とはの画像1

※クリックして拡大できます

従来の医療費控除に比べて下がったハードル

対象となる医薬品の購入金額が年間1万2千円を超えれば適用を受けられます。月平均で千円超です。

この点、従来の医療費控除に比べて、セルフメディケーション税制の方がハードルは下がったといえると思います

一方で、適用を受けるためには以下のような要件があります。

①本人が健康の保持増進及び疾病の予防への一定の取組を行っていること

「一定の取組」とは、勤務先等で実施する定期健康診断を受診したり、インフルエンザなどの予防接種を受けたりしていることなどです。

②購入した特定一般医薬品等の明細書(領収書は提出不要ですが、5年間は保管)、及び 健診結果通知の写し(結果そのものの部分は黒塗りしたもので構わない)などの①の取組を行ったことを示す書類

これらを添付して確定申告をしなければなりません。

③従来の医療費控除と同時に適用することはできません。

その年の状況によって有利な方を選択することになります。

④所得税や住民税を納めている人が対象です。

税金を納めるだけの所得がなかったり、住宅ローン控除などで減税されていて納税額がゼロという人は、制度を適用しても減税効果はありません。

「セルフメディケーション税制」導入の目的は?

この制度の導入により、国の医療費の削減につながることが期待されています。

日本は、超高齢社会に突入し、保険料を納める現役世代の労働者人口は減少する一方、医療サービスを必要とする高齢者の人口は相対的に増加しています。

そこで医療費を少しでも抑えようと、軽い病気の場合は、病院に行くのではなくて、自分で医薬品などを購入して対処してください、というのが厚生労働省の狙いです。

一方、国の税収が減ると困る財務省としては、確定申告を要件とするなど適用の範囲が広がり過ぎないようにしたい、という思惑も働いているように思います。
行政組織の縦割りの弊害がこのようなところにも出ているなと、筆者は感じてしまいます。

ともあれ、利用できる制度は、上手に活用したいものです。領収書をきちんと保管しておくなど、来年の確定申告に向けて、今から準備をしておきましょう。

まとめ

  • 「セルフメディケーション税制」の導入により、特定の医療品の購入額が年間1万2千円を超えれば、その超過分を所得から控除できるようになりました。従来の医療費控除と比べて有利な方を選択できます
  • ただ、適用するには健康診断を定期的に受けていることや確定申告などの条件があります。上手に活用できるよう、購入した医薬品の領収書はきちんと保管して準備をしておきましょう

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