先日発売し、ネット書店でもランキング1位になった新刊をご紹介します。
その名も『こころ彩る 徒然草~兼好さんと、お茶をいっぷく』です。
『徒然草』といえば、古典の中でも特に有名です。
おそらく、皆さんも知っている本ではないでしょうか。
その有名な『徒然草』やその解説書は、今までも多くの出版社から、色々な形で世に出てきました。
その中で、今回の新刊はこれまでのものと大きく変わっている点があります。
まず、『徒然草』には全部で244のトピック(段)がありますが、その中で66のトピックだけを選んで掲載しています。
著者の木村 耕一 先生いわく、
鎌倉・室町時代でなければ必要のない話題を大胆に取り除き、
現代に通じるメッセージを、66選びました。
(「はじめに」より)
ということです。
まるで兼好法師から語りかけられているよう
さらに本文は話し言葉のような、語りかけられているような雰囲気になっています。
意訳といってもやや固い表現で書かれることが多いですが、この新刊は私たちが日ごろ使う言葉遣いに近く、大変読みやすく書かれています。
原文もごく少なめに、それぞれのトピックの最後に特に印象的な一文を抜き出されています。
全体をとおして、非常に「読みやすい」仕上がりです。
そして最後には、なんと筆者がタイムスリップして、兼好法師と対談するという一幕が!
直接、どのような気持ちで書いたのか、何を伝えたかったのか、インタビューする形式です。
こんな風に直接聞ければなぁー、と思いますよね。
まるでブログのように。今なお届く兼好法師のメッセージ
「もくじ」を見ると、そこに並んでいるトピックは現代でも関心をひくものばかりです。
(2)心を磨いて、すてきな人を目指しましょう
(8)みんなと一緒にいるのに、なぜ、「独りぼっちだな」と感じるのか
(16)客が帰る後ろ姿を、そっと見送る人はすてきですね
(27)会話のエチケットを身につけましょう
(54)訪問のマナーに、気をつかっていますか
(55)「酒は百薬の長」といわれますが、本当でしょうか
(64)わざとらしい作り話は、いやみに聞こえますよ
(65)これを守れば、あらゆる失敗がなくなります
帯に「ブログのような、気ままなエッセー」とあるように、徒然草は、日々心に浮かぶことを書きつけた、ということなのでしょう。
1トピックあたりの文章は短くまとまっていて、見開き2ページで完結しているところも多くあります。
まるでスマホでお気に入りのブログを開いているような感じさえ持つことのように思えます。
そこに、コミカルなイラストと、色鮮やかな自然の写真が添えられています。
「お茶をいっぷく」というタイトルからか、和菓子の写真も多くあるのも読んでいて、楽しくさせます。
仕事の難しい文書に疲れたとき、日常生活に追われて疲れきった目と心を休ませたいときにこの書籍を開けば心が洗われ、温かくもなるでしょう。
何気ない気分転換にぴったりの本だと思います。
印象に残るメッセージのご紹介
その中から特に心に残った箇所を紹介いたします。
上達する人は、未熟なうちからその道の先達に交じって一心に稽古に励む
生まれつきの才能は無くても、黙々と努力を重ねる
これは芸能に限らず、いずれの道においても大切な心がけである
(本書 P141「そんな考えだから、何一つ身につかないのです」 より引用)
あらゆる失敗をなくすには、常に誠意をもって事に当たり、相手によって態度を変えず、礼儀正しく接すること
それが出来ないとき、自分がそのことに慣れているように振る舞い、得意げな態度をして、人を侮り、軽んずることから失敗は起きる
(本書 P194「これを守れば、あらゆる失敗がなくなります」より引用)
いかがでしょうか。
今、書店で「デキる人の仕事のコツ」のような仕事本を開いてみても書いてありそうですね。
今から約700年も前に書かれていたのですね。
歌人の与謝野晶子も、新訳で徒然草を発刊するほど、徒然草を愛好していました。
時代を超えて、現代人を批評されていることに驚嘆したと言われています。
与謝野晶子も70年以上前に亡くなっている人ですが、その時も、今も世の中は(というより、人間と言うものは)あまり変わっていないようです。
その人間の姿に微笑ましく感ずることもあれば、つい苦笑してしまうところもあるかと思います。
ぜひ、ご一読下さい。