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夢のがん治療薬?「オプジーボ」の効果とは。医師が考察するがん治療の未来

「オプジーボ」

最近、夢のがん治療薬として有名になっている薬です。

「オプジーボ」のいったい何がそんなにすごいのでしょうか?

また「オプジーボ」による免疫治療はどれくらい効果があり、実現もしているのでしょうか?

がん免疫治療のいまについて、自己免疫疾患などを専門とする内科医の刀塚俊起先生に聞きました。

ウイルスや細菌と違い、癌はなぜ免疫力で排除できないのか

免疫とは、病から免れるということです。
免疫力が高まれば、病気にかからないし、免疫力が低下すれば病気になってしまいます。

「癌はなぜ発生するのか」。
長らく医学の大きなテーマでした。

元々、自分の細胞である癌が、なぜ発生し、増大し、最後には死に至らしめるのか。これ自体が大きな謎でした。

といいますのは、身体には、外界からやってきた細菌やウイルスを排除するのみならず、自分の身体にできた異常な細胞をも除去する働きがあります。

癌細胞は、身体にとって異物であるにもかかわらず、この免疫システムをすり抜けて増殖してくるのです。

「癌になるのは、免疫力が低下しているから」という説が提唱されました。その後、医学の進歩によって、この仮説が有力である事実が分かってきました。

つまり免疫力を高めてやれば、癌は自然に小さくなって排除されるはずです。それが、がん免疫療法の発想の原点です

最強の免疫「キラーT細胞」が癌の攻撃を始めるとき

がん免疫療法は、これまで様々な研究がなされてきました。

免疫力を上げる食物やサプリメントがあれば、それを摂取することによって免疫力がぐんぐん高まり、癌も小さくなって治ってしまうことが期待できます。ところが残念ながら現在まで、その効果のある食べ物は発見されていません。

免疫力の本質とは何でしょうか。どのような細胞が免疫力の中心を担っているのでしょうか。

大きな役割を占めるのが、リンパ球という細胞です。リンパ球は私たちの血液を通して、身体中のいたる所に存在します。

リンパ球の中でも細胞障害性Tリンパ球という細胞は、直接接触した細胞を殺してしまう強力な免疫細胞です。この細胞はキラーT細胞と呼ばれます。

癌細胞はなぜ免疫をすりぬけて増殖するのかといいますと、この強力なキラーT細胞を手なずけて働かなくしてしまうからです。
長年、癌はどのようにしてキラーT細胞を手なずけるのか、分かりませんでした。もう一度、キラーT細胞に癌細胞を殺させる働きを取り戻させれば、癌を治せる可能性があるのです。

キラーT細胞は癌細胞を異物と判断して、癌細胞の周りに集まってきます。癌細胞の周りに集まったキラーT細胞を濃縮したり、リンパ球を活性化するサイトカインという蛋白を投与してみたりもされましたが、いずれもわずかな効果しかありませんでした。

しかしPD-1という蛋白をキラーT細胞が持っていることの発見と、PD-1のリガンド(くっつく蛋白)を癌細胞が持っていることの発見が、その突破口を開きました。

癌細胞のPD-1リガンドとキラーT細胞のPD-1が結合すると、シグナル(信号)がキラーT細胞に入り、キラーT細胞が攻撃をやめるのです

それなら、PD-1かそのリガンドを抗体で塞いでしまえば、再びキラーT細胞が癌細胞の攻撃を再開するようになるのではないかと推定されました。

このPD-1をふさいでしまう抗体が、オプジーボなのです。

オプジーボの驚く効果!治る見込みのなかった末期肺癌の腫瘍が縮小

非常に悪性度が高く、死に至る癌である悪性黒色種(メラノーマ)や、治る見込みのない末期肺癌で臨床試験が行われました。驚くべきことに、4分の1の患者で、かつてないほどに腫瘍の縮小がみられたのです。

これによって、がん免疫療法のブレイクスルーが生まれました。

メラノーマ、腎癌は、免疫療法が比較的効きやすい癌といわれますが、どんな抗がん剤でも全く効果のなかった肺癌にまで効果があったのは、多くの医者を驚かせました

現在、多くの癌について臨床研究が行われています。すでに肺癌、ホジキンリンパ腫は免疫療法が使用可能となりました。
さらに他の分子標的薬(癌の成長に関係している遺伝子の働きを抑制する薬剤)や、別の免疫チェックポイント阻害剤、がんワクチンとの併用が行われています。

がん免疫療法が、これまでの抗がん剤に取って代わり癌治療の主役になっていく日も近いでしょう。

まとめ

  • がん免疫療法の発想の原点は、すでに体の中にある免疫力をいかに高めるか、ということです
  • 自分を攻撃できないように癌細胞が免疫を手なずけていた道具(蛋白)を使えなくさせたのが、「オプジーボ」です
  • 「オプジーボ」による免疫療法は、これまでの抗がん剤に取って代わるほどのブレイクスルーをもたらしました。臨床はまだ始まったばかりですが、特定の癌に対してはすでに使用可能になっています

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