「最近なんだか元気が出ないな」
「何をするにも、どうにもやる気が…」
と、ちょっと落ち込む時ってありますよね。
そんな時に、ヤル気が湧いてくる秘訣を知っていたら、いいですよね。
今回の幸せのタネまきのキーワードは、仏教で教えられる「施し」です。
気持ちが前向きに、元気になれるもとを、学んでいきましょう。
「情けは人のためならず」の本当の意味も分かりますよ!
真理子
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中2の娘と小4の息子を持つワーキングマザー。お気に入りのカフェで行われている「仏教塾いろは」に参加しはじめる。 |
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智美
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真理子さんのママ友達で、在宅でデザインの仕事をしている主婦。 |
塾長
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仏教塾いろはの塾長。アメリカの大学で仏教の講義をしていた。店長とは旧知の仲。 |
午後3時、ちょっと小腹の空く時刻。仕事でも家庭でもちょっと失敗が続いて落ち込んでいた智美がカフェに行くと、2人掛けの席に真理子の後ろ姿があった。
真理子に話を聞いてもらおうと思い、声をかけて、真理子の向かいの席に腰を下ろすと、いつも元気な真理子がさらにハツラツとした様子だった。
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真理子さん、何だか嬉しそう。何かあったんですか?
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それがね、聞いて聞いて。この前、うちの子が落ちてた財布を見つけて警察に届けたんだけど…
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まあ、えらい!
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わが子ながら立派だと思ったわ。それでね、しばらくして持ち主が見つかったんだけど、とっても喜ばれて。何でも、お孫さんにランドセルをプレゼントするために、銀行でおろしたお金が入っていたみたいだったの。
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それは、無事に財布が見つかって安心されたでしょうね。
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そうなの。本当に喜ばれて。「お礼に」って、高級店のケーキを頂いちゃって、びっくりしちゃった。
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本当に嬉しかったんでしょうね。いいことをするといいことが起きるって本当ですね。
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そうね。ケーキもだけど、相手の方に喜んでもらえたことが何より嬉しかったみたい。それ以来、友達におもちゃを貸してあげたり、電車で席を譲ったりして、がんばってるのよ。
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まだ小さいのに、すごいわ。
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そういえば、塾長が前に「『施しは生きる力のもと』なんですよ」と言われていたわよね。
温かい心遣いは、人と人の絆を生む
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仏教で勧められる「施し」についてお話ししますね。
電車でお年寄りに席をゆずる、
道に迷っている人に道案内をする、
落し物を届けるなど、
親や学校の先生から「困っている人がいたら助けてあげましょう」と教わり、日々心がけている人もあるのではないでしょうか。
そのように困っている人に手をさしのべると、巡り巡って、やがて自分によい結果が返ってきます。
ある男性の心遣いから生まれたエピソードをご紹介します。
福井県が豪雨に襲われてから一週間後、町内で河川の清掃をしました。私はごみの中から、ランドセルを見つけたのです。
小学校の校章、記名がある。教科書や文房具はないが、持ち主には、大切な宝物に違いない。私は電話帳から地番を調べ、近くの人に聞くことにしました。持ち主の家族は、家が流され、町営住宅に仮住まいされているとの話。悪い予感が的中です。
翌朝、私は仮住まいを訪ねて、持ち主の男の子に、泥のついたランドセルを渡しました。濁流に流されたランドセルが、一週間ぶりに持ち主の手に戻ったのです。ランドセルを渡した時の彼の顔が、目に焼きついています。
私は「文房具でも買いなさい」と少々のお金を渡したのですが、彼はランドセルを抱きしめてお金には目もくれませんでした。
あの日から月日が流れ、私は仮住まいを何回も訪ねています。すっかり顔を覚えてくれて、「こんにちは」と迎えてくれます。私はうれしさで胸がいっぱいになります。
ランドセルを見つけた時、私はただ「かわいそうに……」との思いから、仮住まいを探し当てて届けたのですが、今はかえって、私がいい贈り物をもらったような気がしています。
困っている時に受けた温かい心遣いは、ずっと心に残り続けます。そして、人と人の絆を生んだのですね。
情けは人のためならず…巡り巡って自分に返る
心遣いや親切は、善い行いの1つです。
善い行いを心がけると、自分にも善い結果が返ってきます。これを仏教では「因果応報」といいます。
因果応報と聞くと、何か悪い結果が返ってきたときにだけ「悪い行いによる当然の報いだよ」という意味で使っている人が多いですが、実は、善い結果のときも善い行いによる「因果応報」なのです。
心遣いや親切という善い行いをすれば、相手が喜ぶだけでなく、親切をした人自身も善い結果に恵まれます。
だから困っている人がいたら、その人は私にとって、ちょうど田んぼのようなものです。
なぜかというと、田んぼに苗を植えれば、やがて実った作物が元の苗の何倍にもなって返ってくるように、親切という種をまけば、種をまいた人の元に善い結果が返ってくるからです。
なので、昔から「情けは人のためならず」といわれます。
「情けはその人のためにはならない」は誤用で、「情けを人にかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来る」ということです。
施しは“生きる力の元”
「施しは生きる力の元と知れ」という言葉もあります。
親切にして相手の喜ぶ顔を見たら、自分も嬉しくなります。温かい心遣いや親切は受けた側はもちろんのこと、施した側も幸せになるのですね。だから「施しは生きる力の元」なのです。
実際にこのような調査があります。
24歳以上のアメリカ人2800人を対象にしたある調査において、ボランティア活動をすると1年後、幸福度、人生への満足度、自尊心が高まり、うつ病が軽減したのである。
奉仕を受けた方が喜ぶだけでなく、奉仕した側もまさに生きる力をもらったのですね。
落ち込んだときは、気持ちの切り替えはなかなか難しいものです。
しかし悩んでばかりでは、ますます暗い気持ちになって立ち直れなくなってしまいます。
そんなときは、人のために何か行動をしてみるといいかもしれません。
笑顔で話しかける、感謝を伝える、相手の努力を認めるなど、できることからで大丈夫です。
人のことを思いやれば、自分のことで悩むヒマもなくなります。相手の喜ぶ顔を見れば、きっと元気が湧いてきますよ。
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確かに、うちの子も、人に親切にするたびに、どんどん元気に、明るくなっていってるわ。
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実はちょっと気持ちが落ち込んでいたんですけど、元気の秘訣がわかりました。まずは家族に、おいしい料理を振舞おうかな。
まとめ
- ちょっとマイナスな気持ちになったとき、みるみるやる気が湧いてくる、元気の元とは何でしょう。
- よいタネまきを心がけると、自分によい結果が返ってきます。困っている人がいたら、その人は私にとって、ちょうど田んぼのようなもの。
- 施しは生きる力の元です。気持ちが落ち込んだときは、人のために行動をしてみると、元気が湧いてきます。