福祉の道65年の杉良太郎さんが、劇場版アニメで声優に挑戦。
原作『人生の目的』『歎異抄をひらく』を語る
プロフィール 杉良太郎さん 歌手・俳優。昭和19年、神戸市生まれ。 |
🎬劇場版アニメ映画で、80代の親鸞聖人役を
「遠山の金さん」などの名演で親しまれる、歌手で俳優の杉良太郎さん(80)が劇場版アニメ映画の声優に初挑戦した。映画は、全国で上映中の『親鸞 人生の目的』――。
65年間にわたり福祉活動に取り組んできた杉さんがいま、この壮大な歴史人物ドラマにあえてチャレンジしたのは、なぜだったのか。2冊の原作書『人生の目的』『歎異抄をひらく』の魅力とともに語ってもらった。
「生きる目的が分からないと、人は迷ってしまうのです」
東京・紀尾井町のホテルニューオータニには、菅義偉元首相はじめ政界、官界の要人、著名な芸能人ら約500人が顔をそろえていた。
昨年9月30日――。ヒット曲『すきま風』のメロディーとともに杉良太郎さんが舞台に現れると、芸能活動60年&福祉活動65年の記念パーティーが始まった。
お祝いの言葉が続く中、ひときわ出席者の目を引きつけたのは、杉さんの福祉活動の歩みを記録したビデオメッセージ。
15歳で始めた刑務所や高齢者施設の慰問に始まり、支援は、各地の被災現場、病院や福祉施設、紛争や貧困にあえぐ国々にも及び、涙と笑顔の交流が映し出された。
そして、そんな映像の締めくくりとして、スクリーンに鮮やかに浮き上がったのが、この文字だった。
「人はなぜ生きる」
「生きる目的は……」――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――最後の問いかけには、会場の人たちも意表を突かれた様子でした。
今は、自分さえよければいいという世の中。のどが渇いた人がいても、自分は平気でごくごく水を飲んでいる。そんな時代に、皆さんにも問いかけてみたかったのです。人が生きるということの意味を。
人生、お金持ちになれば、それで幸せなのか、というと全然、違いますね。容易には答えられない問題でしょう。
私自身、「なぜ生きる」ということはずっと自分に問いかけ、自分の中で悩み苦しんできたテーマなのです。
――65年間の福祉活動を振り返って、心に残ることは。
日本だけでなく、世界中に苦しんでいる人はたくさんいます。でも支援するにも限界があって、助けきることは難しいのです。それが一番つらいことですね。
自分にもっと力があればいいのですが。
40年近く前、ベトナムの孤児院を訪ねた時、
「一番欲しいものは?」と聞くと、
「お父さん、お母さんがほしい」という声が返ってきました。涙が流れましたね。
それで里親になったのです。
ただ、子どもが20~30人の時はよかったのですが、その後200人を超えてくると、一人一人の顔を見て愛情を注ぐことが難しくなってきます。
また、貧しい国々では、栄養失調で瞬きすらできない子、両手両足がなく、お尻の筋肉で移動している子らにも会いました。
食べ物などを持って行くと、その時は、笑顔は見せてくれますが、ずっと助け続けることはできません。どうしても限界があるのです。
爆弾が降って来る空の下で苦しんでいる子どもたちに対して、いま何ができるでしょうか。
明日は我が身でもあります。
苦しくとも人はなぜ生きるのか、という問いが常に突き付けられてくるのです。
――映画『親鸞 人生の目的』で親鸞聖人の声を演じてみて、いかがでしたか。
「人生の目的」「なぜ生きる」というテーマに、命懸けでぶつかっていった人物の声を演じることには魅力を感じました。
800年前の方ですが、できればお会いしてみたかった。
ずっと福祉をやっていて難しいのは、自分の心、つまり煩悩との闘いということです。自分がこれだけやっている、などと思ったら、もうおしまいです。
映画でも、修行中の親鸞聖人が煩悩と格闘する場面がありますが、そんなところにも、自分の人生と重なる部分を感じました。
「迷いに答えを教えてくれる、人生の道しるべ」
――映画にはどんなメッセージが込められているのでしょうか。
親鸞聖人の波乱に富んだ半生を通して、なぜ生きる、人間とは何か、命とは何か、心を平穏にして毎日を暮らすにはどうすればいいのか、といったことが伝えられていると思います。
深い内容ですから、納得できるまで見てほしいですね。
――映画の原作は、『人生の目的』と『歎異抄をひらく』の2冊です。『人生の目的』には、人間の姿を描いた「ブッダの寓話」が解説され、「死」を目の前にしてもなお、目先の欲望の虜となっている人間の姿が描かれています。
どんなに物をかき集めたところで、最後は身一つで散ってゆかねばなりません。思えば、私の人生もいつ落ちるか分からない断崖絶壁の上を歩いてきたようなものです。
まず、そんな自分自身の姿をよく見つめてゆくことが大事なのではないでしょうか。
――『歎異抄』には、親鸞聖人の直の言葉がそのまま書き記されています。その『歎異抄』が分かりやすく解説されているのが『歎異抄をひらく』です。
ずっと手元においておきたい本ですね。折りに触れて読み返してみたい本ですね。生きる上での不安や、日々の様々な迷い事に対する答えが示されているので、それを心で読みとることが大事です。
とても見識のある人がそばにいて、何かやさしく教えてくれている、そんな安心感を与えてくれる書だと思います。
どう生きたらいいのかを示す本はあっても、生きる意味を考えさせる本は、なかなかありません。まさに人生の「道しるべ」となる一冊でしょう。
道しるべがないと、人間、本当に迷ってしまうのです。そんな時は、歎異抄の世界に触れてみるといいのではないでしょうか。
なぜ戦争や犯罪、自殺などがなくならないのか。こうした問題もまずは、「なぜ生きるのか」ということを、それぞれが立ち止まって見つめ直すところから、始まるのではないでしょうか。(了)
📖杉良太郎さんから、原作本へのメッセージ!
『人生の目的』
振り返れば、
断崖絶壁を歩いてきた人生
今、この物語が心にしみる(杉良太郎さん)
『歎異抄をひらく』
単なる読み物じゃない。
ずっと手元においておきたい
人生の道しるべ(杉良太郎さん)
書籍詳細はこちらから