悪口や陰口を言われたときほど、落ち込むことはありませんよね?
学校でも、職場でも、たとえ親しい間柄でも、あることないこと、悪口を言う人は必ずいます。
そんなときの心の守り方と、どんなに腹が立ってもしてはならないことをアドバイスします。
架空の「カフェいろは」を舞台に、来店するさまざまな人たちの悩みに答えるシリーズ。
真理子
|
2人の子どもを育てながら、広告代理店に勤務している。お気に入りのカフェで行われている「仏教塾いろは」に関心を持ち始めたばかり。 |
---|---|
智美
|
真理子の友達で、在宅でデザインの仕事をしている。仕事のトラブルで職場の人からひどいことを言われ…。 |
塾長
|
仏教塾いろはの塾長。アメリカの大学で講義をしていた。「カフェいろは」の店長とは旧知の仲。 |
「カフェいろは」とは?登場キャラクターのご紹介
カフェにて。深いため息をつく、智美。コーヒーを持って真理子が近づき声をかける。
-
智美さん、どうしたの? なにかつらいことがあったの?
-
えぇ…。聞いてもらってもいいですか。この前、会社の人と仕事の進め方でモメて、言い争いになっちゃって。その人とは以前から反りが合わなかったんだけど、今回はいつにもましてひどいことを言われてしまって…。
-
なんて言われたの?
-
「あなたなんて本当は会社から必要とされてないのよ!」って。自分のことが全否定されて、とても悲しい気持ちになったし、本当は、「あなたこそ、できてないところばかりじゃない!」って言い返したかったけれど、ショックのほうが大きくて、言えなかったんです…。
-
そんなことがあったの……? ひどいことを言われて本当につらかったわね。でも、言い返していたら、もっと大変なことになっていたかもしれないわ。このあいだ、塾長に同じようなことを相談したことがあったの。
悪口は相手を精神的に傷つける、大変な悪
-
悪口や陰口について仏教ではどう教えられているか、お話ししますね。
人から思いがけずに悪口を言われたり、陰で悪く言われているのを聞いたりして、悲しくつらい思いをされたことがある方がほとんどでしょう。
悪口を言えば、言われた相手は当然傷つき、苦しい思いをされます。そんな行為は当然悪い行為です。
仏教で悪口は語殺(ごさつ)といわれることもあります。人を精神的に殺してしまう、大変恐ろしい罪なのです。
語殺について、このような話があります。
丹波の国(京都府)に、百二十歳をこえた老婆がいた。
ある人が、老婆を訪ねてきいた。
「長い一生にはどんなにか、珍しいことや、おもしろいことがあったでしょう。その思い出の一つをきかせてくださらんか」
老婆は、首を横にふりふり答えた。
「それは種々あったが、年寄ると頭がぼけて、みんな忘れてしもうた」
百二十歳にもなれば無理からぬこと、とは思いながらも、
「それでもなにか一つぐらい、思い出がおありにならんか」
再度、たずねた。
「そんなにまで言われれば、話そうか。二十四度殺された、つらい思い出だけは、あるわいな」
しわくちゃの顔をしかめて、老婆はつぶやくように言う。
現に生きている人が、二十四度殺されたとは、いったい、どんなことか、とたずねると、ポツリポツリと老婆は語り始めた。
「この年になるまで私は、たくさんの子供を産み、多くの孫ができ、ひ孫もできた。ところが老少不定のならいで、子供が先立ち、孫が死に、ひ孫が死んで、内より二十四人の葬式を出した。
そのたびに、悔やみにくる人たちは、私の前では言わんが、隣の部屋で“ここの婆さんとかわっておればよかったのに”と言っているのが聞こえてくる。
他人さまは、まだ遠慮して陰で言っとるが、孫やひ孫は面前で言いよる。そのたびに、私は殺されたんじゃ」
しみじみと、老婆は物語るのであった。
『口は禍の門』といわれるが、自覚のないところで我々は、どれだけの人を傷つけ殺していることか。三思三省させられることである。
(高森顕徹著『新版 光に向かって100の花束』より)
悪口を言ったほうはすぐに忘れてしまいますが、言われたほうは死ぬまで忘れません。
言われたほうは悪口を思い出すたびに苦しむことになります。さらには非難・中傷を苦にして自殺される方もいます。
まさに語殺であり、恐ろしいことと知らされますね。言動を常に慎まねばならないと反省させられます。
悪口を言われたときに、してはならないこと
では悪口を言われたときには、どうすればいいのでしょうか?
まず仏教の観点で、一番してはいけないことがあります。
それは 悪口を悪口で返すこと、罵られたなら罵り返すことです。
悪口を言ってきた相手に悪口で返せば、相手の怒りはさらに増し、もっとひどいこを言ってくるでしょう。へたをすれば、殴りかかってくるかもしれません。
そこをさらに応戦すれば、事態は取り返しのつかないことになるでしょう。
相手のレベルに合わせてはいけません。
こんな話があります。
二ューヨーク州地方検事のフランク・S・ホーガンは、こんなことを話している。
「私たちが法廷で扱う事件の半分以上は、とても些細なことに端を発する事件ばかりだ。
バーでのいさかい、家庭での口論、言葉や行動による侮辱……。
そうした些細なことが、傷害事件や殺人事件へと繁がっているのだ。
むごたらしい、ひどい仕打ちを受けるなどということは、我々にはほとんどない。
世界にはびこる苦しみや悲しみの半分以上は、自尊心に対する些細な攻撃や侮辱を受けたり、虚栄心を傷つけられたりすることがきっかけで生まれているのだ」
(D・カーネギー著『道は開ける』より引用)
口論や侮辱、いさかいをきっかけとして罵り合いに発展し、果ては傷害事件や殺人事件などにもつながってしまうのですね。
もちろん悪口を言われたなら自尊心は傷つけられ、苦しい思いをします。平気な人など誰もいません。
周りから見れば些細と思われることでも、悪口を言われた本人には大きな問題です。
しかし 悪口を言い返せば、もっと取り返しのつかないことになり得ます。
また陰口を言ったり、相手を恨み続けたりすることも決して良い方向には進みません。
陰口や恨みもまた悪い行為である理由は?
陰口を言えばスッキリするかもしれませんが、聞かされた方はどうでしょうか。
「この人は、ほかの人には私の悪口を陰で言っているかもしれない」と思い、疑惑を抱き、信用は失われるでしょう。
また相手を恨み続ければ、それは表情や態度に現れてきます。そんな人と接する人は気持ちよくありませんよね。
次第に距離を置いて、離れていってしまうかもしれません。それに精神衛生上もよくないでしょう。
どんな人にも、他人を恨んだり、憎んだりする心(愚痴)があるとも仏教で教えられていますので、陰口を言ったり、恨んだりすることはやめられません。
しかし「 愚痴は悪いこと」だと知っていれば、ブレーキをかけたり、反省したりすることができるということです。
悪口を言われても、あなたの価値は変わらない
では悪口や陰口に適切に対処するにはどうすればいいのでしょうか。
まず悪口を言われたとしても、「私はダメな人間なんだ」と自分を責め過ぎないことです。
ブッダは法句経に
過去にも、今にも、未来にも、皆にて謗(そし)る人もなく、皆にて褒むる人もなし
と説かれています。
いつの時代にも、みんなから悪く言われる人もいなければ、みんなから称賛される人もいません。
どんなに優れているといわれる人でも、必ず悪く言う人はいますし、反対にどんなに評判の悪い人であっても、その人をほめる人もいます。
あなたが悪口を言われたとしても、すべての人から悪く言われたのではありません。
悪意を持つ人は必ずいるのであり、そんな人に悪く言われたからといって、あなたの人間としての価値はまったく変わりません。
あなたを認めてくれる人は、ほかにもっといるのです。
また、悪口を言う人はそれだけ人を傷つける悪い行為をしているのであり、やがては自業自得で苦しむことになります。
あたたが悪口を言われたときの対処法は、受け流すことです。
私に「悪口がどんなに人を傷つけるかを教えてくれたのだ。そしてかわいそうなことに、この人は自分の悪い行為で苦しむことになるんだ」と思えば、あなたは故意に悪口を言わなくなり、相手を傷つけずにすみます。
その報いを受けることもないのですね。
-
悪口に悪口で返すことは恐いですね。たとえ悪口を言われたとしても、言わないように心がけないと。それと、一人の人から悪口を言われたからといって、私の価値は変わらないって言葉に救われました。
まとめ
- 仏教で悪口は「語殺」といわれ、相手を精神的に苦しめる恐ろしい行為です
- たとえ悪口を言われても、悪口で返すのはやめよう。さらなる怒りを買い、取り返しのつかないことになります
- そして悪口を言われたからといって、あなたの価値はまったく変わりません
話題沸騰! 今読むべきベストセラー
今話題の『人生の目的』には、悪口や陰口を言わずにはいられない人間の心と、その悩み解決の道が、ブッダのたとえ話を通してお読みいただけます。
『人生の目的』への感想ご紹介
◎82歳・女性(神奈川県)
80年以上の人生を生きながら、真実を知らないまま自分がボーッと生きてきたことを、心より恥ずかしく思いました。
残りの人生は、人への愛情を持ち(自分のことだけを考えず)、人を傷つけてしまう言葉は絶対に口にしないことを心がけたい。
◎35歳・男性・会社員(北海道)
人が人であるがゆえのしがらみに対して、個々人がどう向き合うべきなのか、今の社会に必要な考え方を教えてくれました。墨絵、かっこいいです。
◎75歳・女性(岐阜県)
子供の頃、学生の頃、まだ若い頃、いろいろなことに悩んでいました。
でも大人になれば(歳をとれば)理屈がわかり、悩みもすっきり解決でき、なんであんなに悩んでいたんだろうと思える日が来ると信じていました。
ところが、いくつになっても次から次へと悩みがわき上がり……。
悩みの根本を知らなかったのですネ。この本を読んで、少しずつわかってきたように思います。
話題のベストセラー『人生の目的』には、このようにたくさん方々が感想をお寄せくださり、小社に届いたアンケートはがきは、ついに9,000通を突破いたしました!
ただ今、全国の書店で好評発売中です。
書店にない場合、また、ご自宅へのお届けを希望される方は、下記の1万年堂出版注文センターへお電話ください。全国へ発送いたします。
0120-975-732(通話無料)
平日・午前9時~午後6時
土曜・午前9時~12時
※くれぐれも電話番号をお間違えにならないよう、お願い申し上げます。