朝夕冷え込む季節になると、子どもの病気で心配なのが、インフルエンザです。
「予防接種はいつ受けたらいい?」「ワクチンの有効率は?」「抗インフルエンザ薬は大丈夫?」など、聞きたい疑問を救急医のめめママ先生に教えていただきました。
2018年度もインフルエンザの流行する時期となりました。
2016年度は10月にインフルエンザの大流行、2017年度はインフルエンザワクチンの製造が追いつかず、予防接種ができなくて困っている…など、なにかと話題となるインフルエンザです。
インフルエンザといえば気になるのは、
- インフルエンザと風邪は違うの?
- インフルエンザの予防接種はしたほうがいいの?
- 熱が出たらすぐに病院に行けばいいの?
- 子どもがインフルエンザになったら気をつけることは?
ということをよく聞かれます。
最近の話題と合わせて、お答えしていきます。
インフルエンザと風邪は違うの?
風邪とは、鼻やのどなどの上気道と呼ばれる部分に、さまざまな病原体が感染して起こる病気の総称です。
感染する病原体が違っても、症状は似ていて、くしゃみ・咳・鼻水などの上気道症状と、発熱や倦怠感などをともないます。
インフルエンザも風邪と同じくウイルスによる上気道感染症なのですが、いくつかの特徴があります。
1.とても強い感染力
インフルエンザはものすごい勢いで広まり、学校では学級閉鎖になることもありますが、風邪で学級閉鎖というのは聞いたことがないですよね。
2.急激な発症で全身症状も強い
突然の悪寒とともに発熱し、熱も高く全身の筋肉や関節痛を生じるなど、風邪よりも強い全身症状が出ます。
3.重症化することがある
インフルエンザからインフルエンザ肺炎を起こしたり、インフルエンザ脳症などの合併症を引き起こしたり、全身状態を悪くすることがあり、死に至ることがあります。
このような特徴を持ち合わせることから、高齢者や乳幼児など免疫力の低い人は、特にインフルエンザと一般的な「風邪」を分けて、予防や治療をする必要があります。
インフルエンザの予防接種は受けたほうがいいの?
予防接種ということを題材に【予防】という観点からお話ししたいと思います。
予防手段の基本は、やはりインフルエンザワクチン接種になります。
日本で使用されているワクチンは“不活化ワクチン”というもので、感染性と病原性がないものを使っています。
そのためワクチンそのもので感染を防ぐのではなく、ワクチン接種することで自分の体の中であらかじめ抗体をつくり、次にウイルスが侵入してきたときに感染を予防します。
インフルエンザワクチンに関しては、さまざまな情報が飛び交っていて、接種を迷われる方も多いのではないかと思います。
いろいろな考えをされる方があるのも分かりますが、科学的にワクチン自体に発症予防と症状を軽症化する効果があることは事実です。
先ほどお話ししたように、ワクチン接種後に自分の体の中で抗体を作ることで予防するため、個人差もありますし、すぐに効果を発揮するわけでもありません。
有効期間としては、一般的にワクチン接種後2週間後から、約半年効果があるといわれています。
ワクチンの有効率は約60%といわれています。これはワクチンを接種した人の6割はインフルエンザにかからないということではなく、ワクチン未接種の人たちに比べて発症率が60%低かったという意味です。
ですから、ワクチンを接種したからといってインフルエンザに絶対にかからないわけではありません。しかし、発症の可能性を下げてくれる効果や、発症しても症状が軽く済むケースが多いと考えられます。
また、多くの人がインフルエンザワクチンを接種することで、未接種の人の感染率を下げるという報告もあります。
たとえご自身が元気な年代であっても、周りにお年寄りやお子さん、大きな病気をお持ちの方など「ハイリスク」といわれる方がいらっしゃる場合は、予防接種を受けることが大事です。
ワクチン接種に不安を抱く方の中には、ワクチン添加物の影響を気にされている方も多いように思います。
代表的な添加物である有機水銀や、ホルムアルデヒドが含まれていないワクチンも採用されていますので、心配な方はクリニックに問い合わせてみるのもよいと思います。
インフルエンザワクチンは6カ月の赤ちゃんから接種可能で、免疫の観点から13歳未満は2回接種が推奨されています。
手洗い、うがい、咳エチケットで防ぐ
インフルエンザワクチンの予防接種以外にも、インフルエンザを予防する方法はあります。
インフルエンザの感染経路は飛沫感染が主であるといわれていて、感染している人の咳やくしゃみによってウイルスがまき散らされて感染します。
その他の感染経路もあるのですが、咳症状がある人は周りの人にうつさないようにするため、マスクをするなど咳エチケットをすることが大切です。
元気な人がマスクをして予防することも大切ですが、感染している人がマスクをして広げないということが大切なポイントです。
また接触感染もするため、手洗いや、うがいも有用であるといわれています。
インフルエンザ感染者の人が使ったティッシュなどには触らない、触った場合には自分の顔には触れないようにしてしっかりと手を洗いましょう。
熱が出たらすぐに病院に行けばいいの?
夜間に高熱が出た!と救急外来を受診される方は、年齢を問わず多くいらっしゃいます。
特にインフルエンザの季節になると、「さっきから40度近い熱が出始めました。昨日一緒にいた人がインフルエンザだったらしいのですが、私もインフルエンザですか?」とか、「保育園に提出する証明書が必要だからインフルエンザかどうか知りたい」などなど、夜間の救急外来に人が押し寄せてきます。
結論から言いますと、発熱してすぐに病院に来られても「インフルエンザかどうか断定することはできません」という答えが正しいです。
感染者との接触や症状からインフルエンザと診断することもできるのですが、検査をしてほしいとなりますと話は別です。
インフルエンザを診断する検査はいくつかありますが、一般的に行われているのは迅速検査といわれる方法で、10分程度で診断できます。
しかしこの方法では、発症直後はインフルエンザウイルスの量がまだ少ないために陰性となってしまうことがあります。
発症から12時間以上経過していると、ウイルスの数も多くなっていて偽陰性になる可能性が減るため、発熱してから半日後くらいに受診するのがベストなタイミングといえます。
また、インフルエンザは症状も感染力も強いのですが、重症化しない場合には特に薬を服用しなくても自然に治ることが多い病気です。元々元気な人にとっては、インフルエンザという種類のちょっと重い風邪なわけです。
タミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬は、細胞内で増殖したウイルスが細胞から出るのを妨げる作用で症状を軽くする効果があります。
そのため、基本的には発症から48時間以上経過してから抗インフルエンザウイルス薬を内服しても、症状が出る期間を縮めることができず内服する意味があまりなくなってしまいます。
上記をふまえますと、発熱から12時間以上、48時間以内での医療機関の受診が確実な診断にいたるタイミングといえます。
発熱はウイルスと身体が闘っているサインであり、熱により身体はウイルスを殺そうとしているため、治るのには必要なものです。
とはいえ高熱はつらいもの。必要なときには解熱剤を使用しましょう。
夜間など、受診前であれば手持ちの解熱剤などを使用することをお勧めしますが、インフルエンザのときには禁止されている解熱剤もありますので、事前にかかりつけの医師に確認しておくことや、内服前に地域ごとの救急の問い合わせ先に確認するほうがよいでしょう。
アセトアミノフェン(商品名:カロナール・アンヒバなど)はインフルエンザのときにも安心して使える薬剤です。
インフルエンザの予防接種を受けている場合、あまり発熱せず症状も少ないことが多くあります。特にお年寄りなど倦怠感を理由に受診したところ、インフルエンザだったということはよくあることです。
子どもがインフルエンザになったら気をつけることは?
インフルエンザは子どもに限らず急激な発症が特徴的で、さっきまで遊んでいた子どもが急に静かになった、ぐったりした、高熱が出たということが多いです。
水分を摂れていれば必ずしも急いで受診する必要はありません。
小児や未成年者に注意喚起されているのは異常行動で、突然部屋を飛び出すなどして転落死してしまった事例もあります。
厚生労働省は、抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無にかかわらず、異常行動がみられることがあると報告されています。
そのため、インフルエンザになって治療を開始してから少なくとも2日間は、小児や未成年者を原則一人にしないようにと注意喚起がなされました。
また反応が鈍いなどの意識が悪い状態や、けいれんなどを起こすと、インフルエンザ脳症の可能性が否定できませんので、早急に医療機関を受診しましょう。
インフルエンザ脳症はワクチンや抗ウイルス薬では予防できないといわれています。
しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザにかかった場合に発症するわけですから、予防接種を行うなど予防することが最も大切です。
まとめ
- ワクチンの有効率は60%(受けていない人よりも6割かかる率が少ない)で、発症しても症状が軽く済むケースが多いと考えられます。ワクチンの有効期間は、接種後約2週間~半年です。
- 受診の目安は、発熱から12時間以上48時間以内。インフルエンザかどうかの迅速検査ができます。
- 子どもがインフルエンザにかかった場合、抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無にかかわらず、突然部屋を飛び出すなどの異常行動が心配されます。治療を開始してから少なくとも2日間は、一人にしないようにしましょう。
いかかでしたか?
今年の冬もインフルエンザに負けずに乗り切りましょう!
参考資料:厚生労働省ホームページ