「アトピーになるなんて、かわいそう」
「アトピーになるのは、親の愛情不足じゃないか」
そんな考え方に、「それは誤解です」とキッパリ答える、二児のパパ・滝下靖さん。
生後4カ月でアトピーを発症し、ぐっすり眠れない息子さんと夫婦で向き合った日々…。疲れと緊張で押しつぶされそうになった経験から、子育てで大切なメッセージをつづります。
(1万年堂ライフ編集部より)
平成28年の6月。わが家に2番目の命がやって来ました。
息子の誕生です。
彼は順調に大きくなり、僕ら夫婦も2人目ということで、いい意味で手を抜いて、楽しく過ごすことができていました。
そんな、生後4カ月目のことです。
息子の顔にアトピーができ、またたく間に全身に広がりました。
「またか…」
5年前に娘が同じようにアトピーになったのを思い出し、僕らは思わずため息をついたのでした。
しかし、アトピーをはじめとするいろいろな表に出てくる症状は、体の中の悪いものを外に排出しようとする自然治癒力のはたらき、と娘のときに学ばせてもらっていた僕らは、
「これは息子の身体が、がんばっているのだから」
と理解し、じっくり長い目で見守ることにしました。
眠れない日々、一晩中車に乗せて過ごした日も
それから1カ月、2カ月と経ち、彼の症状は悪化していきました。
頭皮は半分が、かさぶたに覆われて髪の毛が生えず、顔はパンパンに腫れて赤くなり、手の届く範囲は爪でかきむしるために深くえぐれて血が流れ、服も布団も真っ赤でした。
夜は30分から1時間おきに泣いて起きるため、そのつど僕らも目が覚めて、あやしながら傷口と手を拭いて、抱っこして、ようやく寝たと思って布団に置いたら、また泣いて…のくり返しでした。
チャイルドシートに座らせて、車を走らせたら比較的寝ていることが多かったので、冬の寒い中、一晩中車の中で過ごした日も何日もありました。
仕事にも行かねばならないので、朝が来たら妻に息子を託し、疲れた体を引きずって通勤していました。
ステロイドが怖くて使えなかった理由
「このままでは倒れてしまう」と思った僕らは、自宅から車で5分ほどの所にある、小児科の先生に相談しました。
「ステロイドを塗ればすぐ治りますよ」と言われたのですが、妻が子どもの頃ステロイドを塗っていて、塗っている間は治まっていても、塗らなくなったらすぐにまた出てきていたということと、塗り続けた結果、大人になった今も耳の中などに湿疹がずっと残っているということもあり、なんとかステロイドは塗らずに見守りたい、というのが僕ら夫婦の考えでした。
とはいってもやはり、毎日が半分徹夜のようなものでしたので、まずは僕らの体調を整えないことには共倒れになってしまうということで、数日間、ステロイドを塗りました。
塗ったらすぐに効果が現われ、皮膚がラップを貼ったようになり、かゆみも治まったようで、夜は3時間くらいまとめて寝るようになりました。
「良かった…」と、ほっと一息はついたものの、やはりステロイドはなるべく塗らずにいきたいと思った僕らは、同じアトピーの子どもがいる友人に相談しました。
その友人から衣食住についてのアドバイスをもらい、さっそくその日から一つずつ実践していきました。
すると徐々に症状が落ち着き、数カ月は横ばいだった体重も増えて、笑顔が見られるようになりました。
保育所に通い始めると、予想もしなかった変化が
それでもやはり、一日中、「いつ、かゆがって泣くか」とハラハラしながら家にいて、連れて出ても、すれ違う人たちの「かわいそう」という言葉や視線が気になって、特に妻は、疲れがたまっていました。
そこで、まもなく1歳の誕生日を迎えるというころから、息子を保育所に預けることにしました。
保育士さんたちにはこれまでの経過を説明し、なるべくステロイドを使わずに長い目で見守ってほしいという夫婦の希望を伝え、受け入れてもらいました。
すると、保育所に行き始めてから、これまで以上に息子の症状が改善しだしたのです。
これには僕らも、小児科の先生もびっくりです。
「ちょっと、お母さんと距離を置いたのがよかったのかもしれませんね」
ベテランの保育士さんが、そう言って笑ってくれました。
妻も少し肩の力が抜けたようで、「そうかもしれませんね」と、僕らはうなずきました。
子どものアトピーが改善して、初めて気づいたこと
子どもは、大人よりもずっとずっと敏感だと思います。
子どものことを心配するあまり、ずっと監視するように注目しすぎていないか。
自分たちのやり方にこだわりすぎて、力が入ってしまっていたのではないか。
息子の変化に、これまでの態度を大きく反省させられたのでした。
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