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スギ花粉の飛ばない時期こそ花粉症治療を!「舌下免疫療法」とは?

暖かい春が過ぎて、梅雨の季節になると、スギ花粉症の人にとっては、よろこばしい季節かもしれません。
花粉も飛び終わり、鼻にとっては都合の良い湿気の多い季節が梅雨の時期です。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざがありますが、症状がなくなると花粉症のことは忘れてしまって、もう来年まで考えたくもないかもしれません。

しかし、花粉が飛んでいない時期だからこそできる花粉症の治療があるのです

今、話題になっているスギ花粉症に対する「舌下免疫療法」についてご紹介しましょう。

「見知らぬ敵」を「顔見知りの友達」にする治療

スギ花粉症に対する舌下免疫療法は、2014年の秋から保険適応となり行われるようになりました。

舌下免疫療法とは、スギのアレルギー原因物質(抗原)の含まれた液体を舌の下(舌下)に垂らして体の中にしみこませるというものです。
薄いものから、だんだん濃くすることで免疫をつけていく治療で、アレルギー体質を改善させることができます

スギの抗原を口の中に入れると聞くと、「えっ!そんなことするの!」と思われるかもしれませんが、平たく言うとスギを身体に慣らさせる治療と思ってください。

身体の中で働く免疫細胞は、スギ花粉が外からやってくると「見知らぬ敵」が来たと思い攻撃してしまいます。これが花粉症の症状になるのです。

そこで、ちょっとずつスギ花粉の抗原を投与することで「顔見知りの友達」にするのです。そうすると、免疫細胞達はおとなしくなります。

舌下免疫療法、本当に効くの?

「花粉のエキスをなめるだけで、本当に効くの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。

医師が適切に診断し、舌下免疫療法に効果がありそうな患者さんを適切に見極めて、しっかり治療を行えば、アレルギー症状をかなりの割合で改善することができます

海外のみならず、日本でも大規模な臨床試験が行われております。
また保険適応となってから3年経ち、様々なデータが出てきています。

それらをまとめると、舌下免疫療法によって、2割の人で症状がほとんどなくなり、6割の人で症状が軽くなるといわれています
私の患者さんでも「先生、今年のシーズンは薬がいりませんでした」という声をよく聞きます。

舌下免疫療法が、アレルギー反応を起こりにくくさせ、時にはまったく起こらなくさせる治療であることには、誰も異論はないと思います。

治療の際の注意点は?副作用はあるの?

治療を受けられる医院

舌下免疫の薬を処方できるのは、講習を受けたアレルギー専門の医師だけです。
受診する前に病院に問い合わせるとよいでしょう。

治療の対象年齢

今までは12歳以上の人を対象に治療を行うことができましたが、最近その範囲が広がって5から11歳の小児にも行えるようになりました。

治療の開始時期、治療期間

治療を開始するのは、スギ花粉が飛んでいないシーズンでないといけません。つまり、今からの時期なのです。6月から12月が治療の初め時です。

治療は少なくとも2〜3年は継続しないと効果が出てきません。また治療をしても効果が出ない人も中にはあります

治療の際にみられる症状

舌下免疫療法をすると、ある一定の割合で口の中がはれぼったくなったり、かゆくなったり、いがいがしたりします。

しかしそれは、うまく免疫反応が起きている証拠でもあります。

たいていは1時間以内に治まり、毎回投与するたびに症状が出ますが、1カ月程度で出なくなります。口の中がはれたために投与を中止する人は滅多にありません。

ごくまれですが、全身にじんましんが出たり、アナフィラキシーショックといって、血圧が下がって危険な状態になることもあります。
しかし、免疫療法を行っているアレルギーの専門医であれば、そのような副作用に対応できますから安心してください。

舌下免疫療法の詳細は、『あんしん健康ナビ 花粉症・アレルギー性鼻炎』に書かれていますのでぜひお読みください。

あんしん健康ナビ 花粉症・アレルギー性鼻炎

あんしん健康ナビ 花粉症・アレルギー性鼻炎

徳永貴広(著) 藤枝重治(監修)

また、ダニアレルギーに対しても舌下免疫療法を行うことができます。

花粉症患者さんの多くは、「これは体質だから治らない」と思っている方が多いようです。
しかし、症状が無くなったり、症状が軽くなることが期待できる舌下免疫療法があることをぜひ知っていただきたいと思います。