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耳が遠くなるのは年齢とは無関係!? 医師が教える「五感トレーニング」とは

「アンチエイジング(老化防止)」という言葉を耳にしない日はないといってもいいほどです。老化防止と密接な関係にある“五感”に注目し、病院に「五感ドッグ」を取り入れている、耳鼻咽喉科の真鍋恭弘先生に話を伺いました。
(1万年堂ライフ編集部)

「若いっていいなぁ。若返るのは難しいとしても、若さを保つ何か良い方法ないかしら」とは、誰もが思うことではないでしょうか。

若さを保つというと、肌や体型など見た目ばかりを考えがちですが、若さの本質は人としての感性です。その感性を支えるのが五感です。

この五感を衰えさせない工夫は、若いうちからスタートしておく必要があります。

そうすれば、感性を老化させないだけではなく、難聴や認知症の予防にも効果があります。

認知症などというと60歳を過ぎてからという認識の方が多いかもしれませんが、40歳から始めるのが医学上でも正しいです。

五感を衰えさせない工夫がアンチエイジングに効果がある理由と、その仕組みについて説明しましょう。

老化防止に不可欠なもの。五感の果たす役割とは

五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚(見る、聴く、かぐ、味わう、さわる)をいい、私たちが毎日の生活を楽しむ上で、とても大切なものです。

普段の何気ない食事でも、五感の活躍で楽しく食べることができます。まず、きれいに盛り付けられた食材を見て楽しみ、漂ってくる香りを嗅いで「早く食べたいな」とワクワクします。いざ口に入れ、歯で噛んだときの音や食感を楽しみ、次いで口に広がる味で美味しい!と感じ、とても幸せな気分になれます。

これがたとえばどうでしょう。「胃の中に入れたら栄養は同じだよ」と言って、無味無臭無色の物体を食べようと思うでしょうか。一口食べても、もう一口食べようとは思いませんね。

食事だけではありません。あなたにとって大切な趣味でも、五感がなければできないものはたくさんあるでしょう。

私たちの生活を豊かにする上で、五感はとても大切なものだとわかります。

健康寿命を延ばそうと盛んにいわれていますが、体が元気でさえあればいいのではありません。五感を瑞々しく保てば、とても素敵で青春のような生活を送ることができるでしょう。

耳が遠くなるのは年のせいではなかった!今からできる予防法

「五感を若く保つことができたらいいに決まっているけど、年を取れば誰でも耳は遠くなるし、目も見えにくくなる。そんなの避けられないよ」と思っている人が多いでしょうが、必ずしもそうではありません。

例えば、聴力が年齢とともに衰えるのは避けて通れないと思われがちですが、聴力の悪化は、動脈硬化と大きな音をどれだけ聞いたかに関係し、難聴と年齢とは直接の関係はないという研究結果が、2007年に国立長寿医療センターから出されました。

高齢者の聴力に個人差 が大きいのは何故か(国立長寿医療センター)

動脈硬化とは、血管が硬くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなる状態です。

耳は血液からの栄養補給に敏感なため、動脈硬化で血液の流れが悪くなり栄養が不足すると、耳の神経がだんだん働かなくなり難聴になってしまいます。

また、耳にとってうるさいと感じるような大きな音を聞き続けることも、耳の神経を少しずつ壊し、難聴になってしまうのです。

高齢者に難聴が多いのは、年を取ると動脈硬化が進行する人が多いからという間接的な関連があるためで、高齢だから誰しも難聴になるとは限らないのです。

ですから老人性難聴の予防は、大きな音をむやみに聞かないのはもちろん、動脈硬化にできるだけならないようにするのが一番重要なのです。

五感からの情報シャワーが、認知症を防ぐ

五感と認知症とに関連があることはご存知でしょうか。

嗅覚の衰えが、アルツハイマー病の初期症状の一つであるという研究が数多く発表されているのはその一例です。理由として、アルツハイマー病では、匂いを判断する脳細胞が認知機能に関連する細胞より早く壊れてゆくからではないかといわれています。

このような五感の低下が認知症の結果として現れるという関連も重要ですが、五感が認知症予防に活躍しているという関連の方が重要です。

私たちが何かをしようとするとき、五感を意識して働かせています。しかし、意識していないときにも、五感を司る体の器官と脳は盛んに情報をやり取りし、私達が安全な日常生活を送れるように一生懸命働いているのです。

例えば、喫茶店でコーヒーを飲んでいるとき、コーヒーを味覚、嗅覚で楽しんでいるだけでなく、自分の身に危険が迫っていないことを、五感が休みなく働き、安全情報をずっと脳に送り続けてくれているからくつろげるのです。

24時間、365日、常に脳は五感から情報のシャワーを受け取って生活していますので、五感が途絶えると、一気に脳の活動が低下してしまいます。難聴の人や、嗅覚の衰えで認知症になる確率が高くなるのは、その一例です。

さて、予防が大事なのはわかるけど、弱くなってしまったものはもうダメだとあきらめてはいけません。五感は訓練によって、若返らせることも不可能ではないのです。次回は、そのことについてお話しします。

まとめ

  • 耳が遠くなるのは年のせいではなく、主に動脈硬化と、大きな音をどれだけ聞いたかによる
  • 健康寿命を延ばすとき、忘れてはならないのが「五感」のトレーニング
  • 今から五感を訓練すれば、認知症も予防できる

 

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