5人に1人は、人一倍敏感な子(HSC)だと言われています。
敏感さは、育ち方によって素晴らしい力を発揮できる反面、「自分は大切な人間だ」という気持ち(自己肯定感)が低くなってしまう要因の一つにもなります。
気づかないうちに、子どもの敏感さをマイナスに受け取ってしまっていないか、自身もHSCだったというmibukiさんから、HSCのための場面別の言葉かけを教えていただきました。
ちょっとした理解とスキルによって、子どもの成長は大きく変わるに違いありません。
(1万年堂ライフ編集部より)
敏感さを育むカギは自己肯定感
「うちの子はほかの子とちょっと違う」と感じていたり、「叱った後、しばらく固まってしまうんだけど、何を考えているんだろう…」と思っていたりしたら、もしかするとその子は、HSC(ひといちばい敏感な子)かもしれません。
しかし人より敏感だったとしても、「自己肯定感」が高ければ、生きづらさを抱えず、むしろ敏感さを活かして生きていくことができます。
私の知り合いにも、HSPですが、敏感さを存分に活かして、すごく輝いて生きている人もたくさんいます。
だから、お子さんがこれから敏感なままでも楽しく生きていく鍵は、「自己肯定感を育むことにある」と思います。
HSPの私の、HSCだったころの経験をとおして、敏感な子どもが自己肯定感を育むためにどんな言葉をかけてほしいのかを、少しでも知っていただきたいと思います。
※HSCは、敏感であることは共通していますが、何に敏感かは人それぞれで、感じる程度や内容も多岐にわたっています。これから書くことが、「そのとおり」と思う人もいれば、「どれも当てはまらない」と感じる人もいると思います。あくまでも私の場合の話です。
「自己肯定感」ってどんなこと?
まず、鍵になってくる「自己肯定感」とは、どんなことでしょうか。
心療内科医の明橋大二先生は、このように説明されています。
人間が生きていくときに、いちばん大切なのは、自己肯定感(自己評価)です。
自己肯定感とは、
「自分は大切な人間だ」
「自分は生きている価値がある」
「自分は必要な人間だ」という気持ちをいいます。
どんなに勉強ができても、お金を持っていても、いい会社に勤めていても、自己肯定感が低いと、苦しい人生になります。
たとえお金持ちでなくても、学歴がなくても、自己肯定感の高い人は、幸せを感じることができます。
子どもが求めているのも、大人が求めているのも、お年寄りが求めているのも、これ1つです。
(『子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わる ほめ方・叱り方』明橋大二著 より引用)
HSCの自己肯定感が低くなりがちな理由
自己肯定感とは、平たくいうと、「私は私でいいんだ」という気持ちのことですが、HSCは、この自己肯定感が低くなりがちです。
日本では、まだHSPやHSCという概念がそれほど浸透していないこともありますが、それ以外にもいろいろあると思います。
まず、HSCは、10のことを50、100と大きく受け取ってしまうことが多いので、親や周りが思いもよらないことで、知らず知らずの間に傷つけてしまうことがあるのです。
また学校のような集団生活では、みんなと同じことができる子、その中でより優れている子がいい子と見られます。
対してHSCの子どもたちは、集団生活がまず苦手なので、それだけで自分の力を発揮するどころか、萎縮してしまいます。
そして引っ込み事案だとか、神経質な子というレッテルを貼られてしまうことが多いんじゃないかなと思います。
そんなレッテルを貼られるのは「自分が悪いんだ、私は周りの人と同じようにできる能力がないんだ」などと、自信をなくしてしまいます。
もしお子さんがHSCかもしれないと思われる方には、ぜひこんな世界で生きているということを少しでも知っていただきたい思います。
自己肯定感を育む具体的な言葉かけ
①風邪をひいたときや、けがをしたとき
「大丈夫だよ、すぐに良くなるからね」など、前向きな言葉をかける。
みなさんは小学生のころ、風邪をひいて学校を休むとき、どんなことを考えていたでしょうか。
夫や、周りのHSPでない人に話を聞いてみると、
「いつもと違って、ちょっとわくわくした」
「いつもより親が優しくて嬉しかった」
などと言っていました。
私にもそういう心はありましたが、根底にあったのは真逆の気持ちでした。ネガティブすぎると思われる方もあるかもしれません(笑)。
私は、風邪をひいて学校を休まないといけないとき、「申し訳なさ」でいっぱいでした。
「仕事を休ませてごめんなさい、手間を増やしてしまってごめんなさい」
心の中はこんな感じでいっぱいでした。
親は心配してくれていたのだと思いますし、口で「なんで風邪なんかひくの」と言われたわけでもありません。
しかし、たとえ口で責められなかったとしても、急に休まなければならなくなったことで、忙しそうにしている姿からそのように思ってしまいました。
親からすれば、「大事な子なんだから早く良くなってほしい」と思っていても、敏感な子どもは異常なほど空気を読みます。
ですから、普通の子どもよりも大げさに言葉に出して、「大丈夫だよ」と声をかけほしいなと思います。
②失敗したとき
「大丈夫、そういうこともあるよね」
こう声をかけてほしかったなと思うのは、大人が想像する以上に「やってしまった事実を後悔している」からです。
例えば、私が幼児だったとき、近所にお茶の教室をしている家がありました。
母について行くと、お茶を飲む前に「『お手前頂戴いたします』と言うんだよ」と、何度も教えられました。
行く前から「言わなきゃ言わなきゃ」と緊張しており、最中も「言わなきゃ言わなきゃ」と焦っていました。
しかしタイミングが分からず、また恥ずかしさもあり、どうしても口にすることができませんでした。
「言えなかった」後悔で泣き出しそうなほど落ち込んでしまいました。
帰ってきてから「どうして言わなかったの」と聞かれ、タイミングが分からなかったとか、恥ずかしくてという理由を口にすることもできませんでした。
そんな理由でできなかったと言ったら、失望されるんじゃないかと不安だったからです。
それから数日は、そのことが気がかりで、親に嫌われたんじゃないかと不安で仕方なかったことを今でも覚えているほどです。
親からすれば、何気なく聞いた「どうして言えなかったの」だと思います。「恥ずかしかったから」と答えればそれで終わっていたことだと思います。
しかし、「できなかった、どうして言えなかったんだろう」と自分を責めていたのは私自身でした。追い打ちをかけられたようで、自分はダメな子なんだと確信してしまいました。
ですので、何かできなかったときや、失敗してしまったときは、なんで?どうして?と言わずに、そっとしておくか、そういうこともあるよねと「私は気にしてないよ」ということを、はっきり伝えてあげてほしいなと思います。
③嫌がったとき
「これは嫌なんだね」
HSPは感覚が敏感です。
人によりますが、匂いや肌触り、音の大きい場所、特定の味や食感など。HSPではない人からすると、どうして?と思うこともあるかもしれません。
私が幼稚園のころ、お遊戯会用に母が可愛いセーターを買って来てくれました。
それ自体は嬉しかったのですが、着るとチクチクして心がそわそわして落ち着かなくなりました。
そのとき「これは嫌だ」と言ったら、デザインが気に入らないと思われて「わがままだ」と言われてしまいました。
そして、そのままお遊戯会に出ましたが、お遊戯会どころではありませんでした…。
私がそんなふうに感じているなんて、親は想像もできなかったと思います。
ですが、特に子どもは「なぜ嫌なのか」、その理由を説明することができません。
そして、体が拒絶反応を示して嫌だと言ったことでも、「わがまま」と言われると、受け入れてもらえないのは自分に価値がないからなんだ、と思ってしまうのです。
だから、一見わがままに見えるかもしれませんが、嫌がったときは「嫌だったんだね」と、それを受け入れてあげてほしいなと思います。
まとめ-繰り返しかけてほしい言葉
HSPの私がHSCだったころのことを思い出しながら書いてみましたが、改めて「親の一言」に敏感だったなと思います。
自身が母になった今、HSCの子どもを傷つけずに育てることは無理だなと感じています(笑)。
ですが、傷ついていることに気づいて、自己肯定感を育てていくことはできると思うのです。
それには何度も何度も繰り返し、
「あなたはママの宝物」
「大事な子なんだよ」
と声をかけていくしかないんだなとも感じます。
HSCはすぐに不安になります。同じことをうざいくらい聞いてくるかもしれません。
ですが、それは不安だからなので、「同じことを何度も何度も」言ってあげてほしいなと思います。
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