今や、コンビニやスーパーでも手軽に購入でき、身近な存在になったサプリメント。
「◯◯に効果がある」「手軽に摂取でき、健康に良い」など宣伝されていますが、実際に効果はあるのか?リスクもあるのではないか?と疑問を抱えている方も多いでしょう。
そんなサプリメントの実状を、免疫学を得意分野とされている内科医の刀塚俊起先生に語っていただきました。
爆発的なサプリメントの普及
サプリメントが大流行しています。
サプリメントとは、wikipedia(ウィキペディア)によると
ダイエタリー・サプリメント(dietary supplement)の訳語で、不足しがちなビタミンやミネラル、アミノ酸などの栄養補給を補助することや、ハーブなどの成分による薬効の発揮が目的である食品である。ほかにも生薬、酵素、ダイエット食品など様々な種類のサプリメントがある
とあります。
サプリメントは、医療費の高いアメリカで広く普及していましたが、医療を受けやすい日本では薬局で販売されているもの以外は、あまり普及していませんでした。
アメリカの圧力により1996年に規制緩和されて、この20年でサプリメントは「健康食品」という名前で薬局だけでなく、通信販売やインターネットを通じて爆発的に普及してきました。
今や、中高年のほとんどの人が、何らかのサプリメントを服用されていると言っても過言ではありません。
「おおむね健康だけども、もっと元気になりたい、ダイエット効果があるから」という理由で服用することも多いでしょう。
もしくは、いま受けている医療に満足しない場合もあるでしょう。
サプリメントに効き目はあるの?疾患リスクを高める可能性も
診療をしていて、ときどき受ける質問があります。「知人から勧められたけど、このサプリメントは効きますかね」というものです。
内容をみますと、 ほとんどのものは当たりさわりのない内容です。数種類のビタミンやミネラル、アミノ酸などを含むものです。
効果をうたっているものは、
「最近、調子はどうですか?」
「仕事は忙しいけど頑張りどき…」
「楽しい趣味に足が向かない…」
「不規則な生活が続いている…そんなとき、身体のコンディションを整える…」
などであり、そう言われると、ほとんどの人は当てはまりますよね。
そんな中、アメリカ発の2013年の論文では、
「栄養不足のない人には、ビタミンやミネラルのサプリメントをとっても、慢性心疾患の予防や死亡リスクの低減効果はなく、一部の疾患リスクを高める可能性がある」
という研究結果を発表しました。
多くの人には、健康食品は有害な場合はあっても、効能・効果は得られないという結果でした。
時折、経験しますのは、サプリメントによると思われる肝機能障害です。
肝機能障害は、症状に現れにくく、多くは、血液検査で発見されます。
サプリメント(健康食品)の中止によって改善され、原因と推定されるケースもしばしばあります。
因果関係が明確でないことが多いですが、かなりの件数に上ります。
効果あり、と判定されるサプリメントはほとんどなし
サプリメントをただ服用するだけで健康になれるとすれば、それほどよいことはありませんが、現実はそうではないということです。
体調がよくなったという効果の多くは、偽薬(プラシーボ)効果による可能性もあるからです。
偽薬とは、何も成分が入っていない薬を与えても、薬を飲んでいるというだけで、症状がよくなったような効果があることが知られています。
ある薬が医学的に効果があるかないかは、「患者も医師も、どちらが薬でどちらが偽薬か分からないようにして、患者に薬と偽薬を服用させ、症状や検査結果が改善したか」で効果を判定します。
この実験で効果があると判定されれば、医療機関で使用できるように認定されます。
この方法を二重盲検法といいます。
二重盲検法で効果ありと判定されるサプリメントは、残念ながらほとんどありません。
それなら、絶対に効果がないかというと、それも断言できません。
食品は、長期間(場合によっては10年以上)、観察研究しなければ判定できないことも多いです。
「○○に効果がある」と宣伝してあるのは、 動物実験で効果を確認されているが、人間では分からないというものも多くあります。
インターネッ トでの宣伝を規制することは困難です。
効果がなくても、過大広告として罰することもできません。
まとめ
二重盲検法で効果ありと判定されるサプリメントはほとんどないことを考慮すると、サプリメントを購入するお金を、新鮮な食材や食事にかけるほうが、健康によいともいえるでしょう。
私達の多くは、栄養の不足はありませんが、運動不足になっています。
サプリメントよりも、運動を行うためのスポーツクラブや運動グッズに使うという考えもできます。
マスコミの健康番組で、ある食材がよいと強調されれば、食べてみたくなります。
それはよいことですが、極端な偏りは避けたほうがよいでしょう。